第39話:カタツムリ
デイジーとその仲間があっという間に作り上げた泥田で、川船とソリを試してみた。
どちらもある程度の重量物を積むと引っ張るにはかなりの力がいることが分かった。
色々なソリも試したが、ソリが小さいと泥に沈み込み、大きいと重くなり川舟と同じになると分かった
「これじゃあ、とても駄目だな。別の何かを考えないと」
俺は期待をこめハンスをみた。
「やはり車輪を使えるようにしないと重量物は運べませんねえ。うーん何かないか」
「木の板をいっぱい敷いてその上を馬車を運べばいいんじゃないか。馬車が通った後の板をまた馬車の前に戻してってーのを繰り返せばよくないか」
シュタイン、俺はお前を見直したぞ。いい意見じゃないか。
「良い意見だが、それも少し手間だなあ」
リュウが反論した。
「でも、他に言い案がなければそれでいくしかないかも」
それを聞いてハンスは考え込んでいた。
「後ろの板を前に戻す、後ろの板を前に戻す」
俺たちのやりとりを聞いていたデイジーが言った。
「それならいっそ板を革ひもで結んで、グルっと一周して前後の車輪を覆ってはどうでしょうか」
「今なんといった」
ハンスが電撃に打たれたように飛び上がった。
「いやですから、ひもで結んだ板で車輪を覆ってはどうかと。これなら板を運ばなくてもすむでしょう」
「デイジーやっぱりお前は天才だ。それでやってみよう」ハンスが飛び上がって喜んだ。
ハンスはすぐに、馬車の車輪を、革ひもで連結した板で覆ったものを作った。
これって無限軌道だよな。よく思いついたもんだ。
「引っ張ってみよう」
みんなで無限軌道のついた馬車を引っ張ってみた。
「おっ、なんか結構軽く動くな」
「いいかもしんない」
しかし、その板はすぐ車輪から外れ、馬車は動かなくなった。
「連結した板がすぐ車輪から外れるなあ。これじゃ使い物にならないぞ」
「うーん、この方法自体は良いと思います。だけど板が車輪から外れない工夫がいりますね」
「そろそろ日も落ちてきた。今日はこれで終わりにしよう。明日まで考えることにしようか」
「そうですね。お腹もすいたことだし、終了としましょう」
「なんか、すっごく面白かったです」デイジー一人だけがはしゃいでいた。
「昨日一日考えました」ハンスは眠そうだった、目の下にくまができていた。寝てないのかもしれないな。そこまでしなくても良かったんだが。
「車輪を三軸六輪としました。その車輪も二重にし、二重の車輪の間に板がはまるようにして外れるのを防ぐようにしました」
「具体的には、車輪を覆う板の下に三角形の板を装着します。これは前から見るとT字型になり、横から見ると板を上縁とした三角形にみえます。この三角形の部分が二重の車輪の間に入り込み板が外れるのを防ぎます」
「板を三角形にしたのは、前後の車輪を回るときに板どうしが重ならないようにするためです」
「また、三角形の板の先がばらけないように、三角形の板の先端に金属の丸いわっかを取り付けそれに紐を通してずれないようにしました」
「なるほど、さっぱりわからん」
「実物を見てください」
みれば良く分かった。板の下につけられた三角形の板が、二重の車輪の間に挟まり、板をずれないようにしていた。
「よし、引っ張ってみよう」
無限軌道をつけた馬車は、泥田の上をすべるように動いていった。板が外れることもなかった。
「これは良いぞ。これで行こう。ところでこれは、なんという名前にするんだ。呼び名がいるなあ」
「カタツムリと考えています」
「カタツムリ?」
「ハン様は、ガラスの板を這っているカタツムリを見たことはないですか」
「あると思うけど、それがどうしたんだ」
「カタツムリがガラスを這っているのは裏からみると、前の部分から波のようなものが無限に出てきて、それが後ろに移っていくのがみえます。それで移動するんだと思うんですが、それがこの機械を彷彿とさせるので、そう命名したいのです」
俺の前世では、これはキャタピラーといわれた。まあキャタピラーも芋虫のことだから、むしろカタツムリの方が合ってるかもしれないな。
「いいだろう、これからこの機械はカタツムリだ」




