第34話;ランド王国侵攻13
全軍が粛々と入城した。
ロンディウムの外城壁を通過すると、市街域に入った。
「王都なので、流石に建物が立派ですねえ」
「だけど人がいないな」
「みんな逃げちゃったんですかね」
立派な石作りの街並みを見ながら、軍勢は内城壁に向かって進んだ。
「反撃が全くないんですが」
「それより、人がいない」
「どうしちゃったんでしょうね」
「みんな逃げたのかもな」
「ひどいもんです」
軍勢は、なんの問題もなく内城壁についた。そこも誰も守っていいない、簡単に内部に入れた。
内城壁内も人影がなく、みな淡々と王城に着いた。
「本当に誰もいない」
「むしろ不気味ですな」
ロンディウムの王城に着いた。
そこにも誰もいなかった。
王城内にも人がいず、大理石でできた床と壁に、周囲は荘厳なブロンズ像が立ち並んでいた。
巨大な扉を開くとそこは王の間だった。
そこにジョン王一人が座っていた。周囲には誰一人といなかった。
「最後まで忠誠をつくした人が一人もいないのか」
「ひどいもんですね」
「自業自得なんだろう」
王の間に首脳部と、その護衛が入った。
ビクトリアがゆっくりと進み出て、ジョン王の前にでた。
「ジョン王、父の仇、正式に勝負を挑む」
「ふん、どうせ儂はここまでだ、小娘の分際で大きなことを、お前を道ずれにしてやろう」
ジョン王はゆっくりと王座からおり、ビクトリアに相対し、剣を抜いた。
ビクトリアは槍を掲げ、ジョン王に向き合った。
父と母を失ってから、幾度この日を夢見たことか。必ず仇を取ると誓ったことか。
「大丈夫なんですか、まだローティーンですよね」
「大丈夫だ、私が突きと受けは徹底的に鍛えた。それに、なにかあれば後方にナイフ投げの達人を配してある。そして、その前に私が守る」エーデルが剣を叩いた。
その心配はあまりなかったかもしれなかった。ジョン王は自分は成人だからと自信を持っていたようだが、長年の不摂生により、ブクブクに太っていた。武技を鍛錬していたようにも見えなかった。
剣を振り回し、何度もビクトリアに切りかかったが、すべて危なげなくいなされていた。
そのうちにジョン王の息が上がってきた。ゼーゼー言いながら剣を振っていた。顔中が汗で濡れていた。
ビクトリアは涼しい顔で槍を使っていた。
「この小娘が」ジョン王が、怒りに任せて、思い切り剣を振り下ろした。
ビクトリアは、軽快にとびさり、剣を避けた。
剣は床に突き刺さり、抜けなくなった。ジョン王は焦って抜こうとしたが、どう力をいれても剣は抜けなかった。
ビクトリアは、その剣を右足でがっしりと踏みつけ、槍を繰り出した。
その槍は、喘ぐジョン王の口に突き刺さり、切っ先がうなじに突き抜けた。
ジョン王はゆっくりと倒れていった。即死だった。
大歓声が挙がった。
エーデルがビクトリアの後ろから抱き着いた。
全員武器を振り回し歓声を上げていた。
ビクトリアが、跪いていのった。
歓声が少しずつ静まり、最後は誰も言葉を発しなかった。
静寂の中、ビクトリアはつぶやいた。
「お父様、仇はとりました。安らかに眠ってください」
それから立ち上がり、大声で宣言した。
「悪王ジョンは、このビクトリアが成敗した。みな勝ち鬨をあげよ」
前とは比較にならない大歓声があがった。全員が走り回り、手を合わせて喜んだ。
エーデルが、人目もなく大泣きしていた。
シュタインがうれしくてバク転していた。
オットーがそれをみて爆笑していた。
カールセンとアーサーが抱き合って大泣きしていた。
アンゲルがひげをしごいて笑顔を見せていた。
フィリップとワイトが静かに涙を流していた。
シュバルツは頷きながら周囲を見ていた。
この瞬間、この戦は終わった。
これで戦は終わった。食料はまだ6日分残っている。そしてもうすぐ第四陣が到着する。16日分の食料があることになる。これで全軍が帰還するまでの食料はあることになる。
問題なく帰還できる。おれはほっとしたよ。
さらに今回の戦は帰還分を含めても40日弱で終了したことになる。予定していた60日より大分短縮された。その分食料も余っている。
1800トン必要と思われた食料が、1200トンで済んでいる。
元々騎士の城には1500トンの食料が備蓄してあった。今回はその備蓄だけで済んだのだ。そのうえ300トン余っている。ランド王国との戦争は今後しばらくは考えなくていいだろうから、城の備蓄はおいおい考えていけばいいだろう。
ということは今回の戦争では、ほとんど金が掛ってないことになる。これは良いことだ。




