第30話;ランド王国侵攻9
「シュバルツ様、大事なお話があります」
「ハン、なんだ」
俺は天幕に帰ろうとするシュバルツ様に話した。
「喜ばしい事なんですが、これまでの戦いで、わが軍の損害はほぼありません。その上ビクトリア卿の軍はドンドン増えつつあります。こままでは、ロンディウムに着くころには五千を超えると思われます」
「よいことではないか」
「はい、その通りです。しかし、兵站担当としては、2万の軍勢で計算していたものを、2万五千に増えては、兵站が破綻しかねます」
「なるほど、兵が増えるのもいい事ばかりではないか」
「そのとおりです。ここで提案なのですが、もともと手伝いである王都軍五千は王都に帰還させて、戦は気心の知れた北部軍と当事者であるビクトリア軍で行うというのはどうでしょうか」
「これは提案です。軍勢が多い方が良いのであれば、兵站を考え直し、二万五千で侵攻するとの考えもありとは思います。しかしもともと二万の軍勢で考えられた作戦なら、王都軍五千は帰還させるという考えもあると考えます」
「決断はもちろん、私ではできません。シュバルツ様の判断にお任せします」
「ここは重要だな。軍議にて決定する」
「という事だ、意見のあるものは述べるように」
「戦は数です、せっかく軍勢が増えているなら、減らす必要はないと思います」
「しかし、もともと2万で考えられていた戦略だ。増えた分は返してもいいんじゃないか」
「ロンディウムでは攻城戦になると思います。攻城3倍の法則から言えば、敵が六千を超えるようなら、兵数は多い方が良いと考えますが」
「敵の兵数はどのくらいなんだ」
「それが問題な気がするが」
第二陣の補給部隊一緒に参陣しとインテリジェンスを担当するラズベリー卿が報告した。
「敵王都軍は約五千と見積もられております。他に、檄に応じた諸侯軍や傭兵がどれほどかは、現在判明しておりません。しかし、数千くらいとと想定します」
「それでは、六千より多いか少ないか分からないではないか。では、兵数は減らすべきではないと思うが」
「現状ではこれ以上の情報は出てきておりません」
シュバルツがにやりと笑って言った。
「王都軍5千は帰還させよう」
「それでいいのですか」
「ああ、もし、諸侯軍が少なかったら籠城するだろうし、それならそれで想定どうりだ」
「もし、想定より敵が多くて野戦に出てくれば、それも作戦は考えてある」
「想定より敵が多くて籠城した場合は、時間はあるのだから帰した味方を呼び戻せばいい」
「王都軍5千は、いったん帰還させる。食料は大丈夫か」
俺は答えた。
「全軍の3日分の食料を持たせれば、王国まで帰還できます。こちらの食料は10日分あります。ロンディウムまで3日、到着後も7日分食料があります。数日後には第4隊が着くと思われますので。食料には問題ありません」
「では、王都軍5千に帰還を命じる。ただし、連絡を密にし、何かあれば即座に反転できるようにして帰還せよ」
「何の手柄もたてず帰還するのも癪だが、われらはしょせん応援部隊である、命令とあれば帰還しよう」オイゲンが残念そうにうなずいた。
「すまんな、また何かあったら頼むぞ」
「おう」
オイゲン隊5千が王都に向け帰還した。
3日行軍し、王都ロンディウムに到着した。
ビクトリア隊は、王都に着くころには5000人を突破した。
帰還する軍勢に全軍の3日分の食料を渡した。ロンディウムまでは3日間の行程なので、到着時には7日間の食料がある。あと数日で第4隊の食料が到着するはずだ。当面何とかなるだろう。




