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第29話:ランド王国侵攻8

2日行軍し、ヨーク城に到着した。

ここも王都と他の都市との交易路にあたり、カーディフ城とよく似た城だった。

城域は広いが、守りはそれほど固くないようだった。


今までと同様に、城の四面を包囲し、通常通りの降伏勧告を行った。

そして、結果は予想通り、拒否だった。


「よし、あれを出せ」

俺の命令により、それが動き出した。


それは、車輪の付いた台車の上に四本の柱が立っていた、その上に巨大なラグビーボールのような楕円形の本体が載っているという代物だった。綱がついており、大勢の人々がそれを引っ張って移動させていた。


それは、三体あった。


一番右の物は、全体が黒く塗られていて、楕円形の本体には赤い塗料で呪術文様のような不気味な模様が一面に描かれていた。上面には煙突がありそこから黒い煙を吐きだしていた。さらに、何に使われるのか良く分からない突起や棘があちこちに突き出していて見るからに禍々しい代物だった。


中央のものは、形はだいたい同じだが呪術文様が青で描かれていた。そして、下面にある管から、時々水が吐き出されていた。これも恐ろしく不気味だった。


一番左側のものは、呪術文様が黄色で描かれ、上部には煙突があった。そこから黄色の煙があがっていて、気味の悪さではこれが一番かもしれなかった。


白旗を持った使者が一騎進み出て、城門前で止まった。


「城内の人々に申し上げる。これらの武器は新しく開発された王国の特殊攻撃兵器である。ドーバー城を一撃で屠ったのは、この炎のサラマンダーである。また、プリマス城の城壁を崩壊させたのは水のミズチである。さらに黄色く塗られているものは新しく考案された毒のコブラである」


「降伏を勧告する。降伏しなければ、この超攻撃的兵器で殲滅されるであろう。我々も、ドーバー城、プリマス城の被害の大きさには戦慄している。そのため、これによる攻撃はためらってはいる」


「しかし、降伏せぬとあれば使用せざるをえない。炎のサラマンダーで全身を焼かれて死ぬか、水のミズチで溺れて窒息して死ぬか、毒のコブラでもだえ苦しんで死ぬか。とくと考えるが良い」


ここで使者が、赤く塗られた兵器をさし示した。


「言葉では信じられないかもしれない。ならば、ここでサラマンダーを発動させる。その威力、特とみて目に焼き付けるが良い」


使者が後退したあとに、赤のサラマンダーが粛々と前進した。そしてある位置で止まった。


サラマンダーの中では中央に大きな炉があり、そこでは大量の石炭が赤々と燃えていた。その内部では周りの壁に油樽が山と積まれていた。


そして合図が告げられると、中に水が満たされた口の狭い壺が炉に投じられた。そして兵士たちが、その投じられ壺の上に大量の燃え盛っている石炭をシャベルですくって載せて覆いつくした。その壺の口は燃えにくい木で栓がされ、針金で雁字搦めに固定されていた。


その作業を終えたサラマンダーに乗っていた兵士が、梯子を伝って地上に降り、一目散にこちらに走ってきた。


十数分後、熱せられた水蒸気の圧力が、壺の強度を上回ると、とてつもなく激しい水蒸気爆発が起こり、石炭と油樽とサラマンダー本体を吹き飛ばした。


サラマンダーは、突如爆散し、周囲に炎と油をまきちらした。


実はサラマンダーが今いる位置の半径20メートルには、昨夜あらかじめたっぷり油のしみ込ませた毛布が敷き詰められていたのだった。その毛布に爆散した火が引火した。


そのうえ、短く切った竹と、石炭が、あちこちに配置されていた。それが燃え盛る炎によって竹が爆ぜ、石炭は灼熱した。


これは敵から見ると、いきなりサラマンダーが爆発し、炎が周囲に飛び散ったように見えた。その後瞬く間に炎が燃え広がり、周囲40メートルがあっという間に火の海になり、天を焦がす紅蓮の炎が燃えあがった。さらにはあちこちで小爆発が起こり、何かが赤々と光りだした。そして、真っ黒な煙が全天を覆うという地獄もかくやという光景が現出したのだ。


「何と恐ろしい」

「これが、わが軍の秘密兵器か」

「この兵器が向けられる敵には哀れみさえおぼえる」

「この兵器が味方で良かった」

兵が怯えて囁きあっているのが聞こえた。


おいおい、あんたら、昨日一緒に毛布敷いてたよね。作戦も聞いてたよね。ネタ知ってるよね。それでなんでそんなに怯えているの。おかしいだろう。


「なんと、すさまじい兵器なのか。こんなものが神に許されるのか」

エーデルが真っ青な顔でつぶやき、神の加護を求める仕草をした。


あのーエーデルさんまでそこまで怯えますか。あなたも俺たちが毛布を敷きこむのを見てましたよね。こけ脅し作戦と知ってましたよね。作戦計画も聞いたましたよね。実はたいしたことないんですよ。わかってますよね。


まあ、いいか。良く分かっているはずの味方でさえここまで怯えるのなら、良く分かっていない敵は相当ビビっているだろう。もしかしてうまくいくかもな。


再度使者が進み出てサラマンダーを指さし口上を述べた。


「サラマンダーの威力思い知ったか。一日の猶予を与える。明日の昼までに返答ない場合は、超攻撃的兵器のどれか、あるいは全てを発動する」


燃えているサラマンダーの横に、同じ形をした別のサラマンダーが引っ張っりだされてきた。


新しいサラマンダーを見た敵味方全員が戦慄した。


まあ、今回は本当にガワだけなんだけどね。


その光景を見ていた城壁の上の敵兵がざわめいた。

「何という威力の兵器だ」

「あっという間に広範囲が火の海だ」

「あちこち爆発しているぞ」

「赤赤と燃えている、まるで地獄だ」

「なんと恐ろしい」

「これがドーバー城を一撃で破壊したという超攻撃的兵器か」

「あれがこの城に向けられるのかもしれないのか」

「絶対に無理だ」

「もうだめだ」


城将ウオーレンとその幕僚たちも、うめき声を発した。

「あれがドーバー城を一撃で破壊したという兵器か」

「なんと恐ろしい」

「ミズチというのは、プリマス城の城壁を破壊した兵器かもしれない」

「あんなものとどう戦えばいいのだ」

幕僚がみな動揺していた。

「降伏しましょう」

「カーディフ城では、城将が引退し、家督をご子息に譲っただけで、降伏が認められたと言います」

「ここはご決断を」

「ジョン王にそこまでの恩はないでしょう。ここはビクトリア候にお味方すべきです」


翌朝、城門の上に白旗が上がった。


「やったぞ、敵は降伏するきだ」

「こけ脅し作戦が見事に図に当たりましたね」

俺とハンスは手を取り合って喜んだ。


その後、使者がきて、カーディフ城と同じ条件なら降伏すると伝えられた。もちろんそれは承諾され、城将は引退し、長男のアーサーが後を継ぎ、ビクトリア軍に加わるとのことで合意された。

二日でヨーク城も落ちた。

「後は終点の、王都ロンディウムだ」


この夜、食糧輸送の第3陣が着いた。今回は何の問題もなく、損害も無く10日分が到着した。ジョン王派もだいぶ弱っているようで、妨害もほぼなかったようだ。食料は3日分のこっているので。これで13日分あることになる。兵に3日分持たせ、10日分を馬車で運ぶことができる。今のところ兵站はうまく運んでいるようだ。


あと少しだ、何とかなりますように。





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