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第28話:ランド王国侵攻7

プリマス城で一日休んでから、次のカーディフ城に向かった。

ビクトリア軍はワイト卿の軍を加え、そのうえ、あちこちから参集してきた軍勢を加えると今は3千人を越えていた。さらに各所に、味方するようにと使者を出していたためさらに膨れ上がりそうであった。


こういっちゃなんだが、味方の損害がない上に、味方がどんどん増えるのは本当は良いことなんだろうけど、兵站担当としては悪夢だぜ。今は、予想より早く作戦が進んでいるから良いものの、こじれれば兵站が枯渇しかねない。あるところで余剰戦力は本国に帰還する計画も立てねばならないだろうな。

順調すぎるのもいい事ばかりじゃないな。


2日行軍して、3日目の夜にカーディフ城に着いた。


カーディフ城は普通の城だった。

ランド王国のかなり内陸にある城のため、あまり攻撃されるとは考えていないのか、城壁もあまり高くなく、城門も頑丈とは言い難かった。しかし、王国内の交通の要衝にあたっているため、住民も多く城の内部は広いようだった。


軍勢は、いつものように四軍にわかれ、城の四方に陣を敷いた。


その夜、軍議が開かれた。

「フィリップ殿、カーディフ城について、情報をお教え願えないか」

「カーディフ城は、この国の流通の要にあります。主要な街道でも4本、主要でない街道を合わせればさらに4本の街道がこの町に繋がっています。商業の街をといえましょう」

「その為、街を含めた城域自体は大きいのですが、内部はほとんど民間の施設となっており、軍事施設としての城とはなっておりません」

「城壁も低く、兵士も少なく、防御力は余り高くありません」


「なら、力攻めすればすぐ落ちるな」

「その通りですが、力攻めすれば、必ず民間にも被害が出ます。また商業の中心地に損害を与えるのは、戦後のことを考えるとよしとしません」

「では、どうすればよいか」

「この城も内部も一枚岩ではありません、ビクトリア卿派と思われるものを含め内部工作で何とかしたいと思っております。しばし時間を頂けないでしょうか」


「ふむ、それなら、ハンよ、食料は大丈夫か」

俺に振ってきたか。まあいいだろう。


「はい、ここまで作戦はほぼ損害無く非常に順調に経緯しています。食料ももうすぐ輸送部隊の第二陣が到着する予定ですし、余裕があります。内部工作する時間はあると思います」

「ハンもこう言っている、民に損害を与えるのは本意ではない。内部工作を進めるように」

「とりあえず、包囲のみしか策がないのであれば、提案があるのですが」俺はおずおずと発言した。

「何か、どうせすることがないんだ。言ってみろ」

「あのーハンスが」俺がそう言った途端、周囲がざわついた。まあ、そうなるよな。ドリルカーのハンス、津波のハンスだからなー。


「ハンス作の巨大な石弓があります。それで城門を破壊すれば、内部工作の援助になると思うのですが」

シュバルツがニヤっと笑った。

「城門どころか、城壁自体も破壊するんじゃないか。それは良くないぞ」

「そ、そこまでの威力はないと思います。城門破壊の許可をお願いします」

「まあいい、どうせやる事がないんだからやってみろ」

「有難うございます」


「おい、なんだあれは」

「石弓みたいだが、見たこともない大きさだぞ」

それは通常の石弓の数倍はあるような巨大なものだった。ハンスは、分解して部品ごとに輸送して、ここで組み立てたのだった。

「あのハンスが作ったものだそうだ」

「大丈夫なのか」

「大丈夫なわけない」

「近づかない方が良いな」

「その通りだぜ」



「あたらないなー」

「あたりませんねー」

俺とハンスは、巨大な石弓の所で嘆いた。石弓はすごく巨大で、飛ばす矢も、丸太くらいあった、というか本当にただの丸太だった。丸太は周辺の森から、いくらでも切って運んでこれたから、矢玉には不自由しなかった。

ハンスは、石弓はあちこち強度を補強しており、絶対に壊れたりしないから大丈夫だと主張していたが、誰も信じなかった。


その為、他の軍勢は離れたところに陣取り、石弓の周囲には頑丈な柵を作らされていた。

それはまあ仕方がないが、何度打っても、城壁の色んな所には当るんだが、城門だけには絶対に当たらなかった。


「当たりませんねー」

「なんか、他には当たるんだが、城門だけかたくなに避けてないか」

「うーん、そこだけなぜかあたりませんねえ」


「ちょっと、狙いを変えてみよう。城門の上の右の櫓に標的を変えてみないか」

「まあやってみましょう」


ハンスは標的を変更し、石弓を動かした。何十人もの人間が石弓にとりついて、移動させた。

「方向よーし」

「仰角よーし」

「照準定まりました」

「よし、発射しろ」

石弓の矢は、まっすぐ飛び、右の櫓に突き刺さり、それをバラバラに破壊した。

「なんだ、当たるじゃないか」俺はハンスをみて頷いた。


「照準、敵城門」

また、石弓が動かされた。

「方向よーし」

「仰角よーし」

「照準定まりました」

「よし打て」


石弓は、明後日の方向に飛んでいき、今度は左の櫓に突きささった。左の櫓がふき飛んだ。

「ふざけてんのかこいつは」俺は怒って石弓を蹴り飛ばした。

「いててて」


「ハン様、何故かかたくなに城門にだけ当たりませんが、地味に効果あげてますよ、なんか城壁が歪んできてます。あと2,3日この攻撃を続ければ、城壁が壊れるかもしれませんよ」

「うーん、そうかもしれないなあ」

「まあ、日も落ちたし、今日はこのくらいにして、明日また考えよう」

「そうですね」


そのころ城内では。

「あの兵器はなんなのだ。あまり威力がないと思ったが、城壁が歪んできたぞ」

「はい、今までの兵器が強すぎ、犠牲が多すぎたので、このような比較的弱い兵器を使っているのではないかと思います」

「ドーバー城を一撃で屠った見たこともない兵器や、プリマス城の城壁を一撃で破壊した水を利用した兵器は、あまりにも相手の損害が多すぎるとみて、今は使っていないものと思います」


「では、今の兵器でこの城を落とせないとみたら」

「はい、ドーバー城を落とした謎の超強力な攻撃的兵器が、またプリマス城を落とした水を利用した悪魔の超攻撃的兵器が出てくるものと思います」

「何と恐ろしいことだ」


幕僚が城将に提言した。

「ジョン王には義理は果たしたと思います。この城はもう持ちません。ご決断を」

城将は決断した。

「条件によっては,開城する。明日の朝、使者をだせ」


翌朝、朝早く、城に白旗が上がった。


「ありゃ、白旗が上がったぞ」

「城門が開いた」

「使者が出てくるぞ」


白旗を持った使者が、本陣に向かった。

「こりゃ開城かな」

「また、損害無く城を落とせたのか、いい事だなあ」


本陣ではビクトリアとシュバルツが、使者に向き合っていた。

「今の君主が引退し、ご子息が後を継げば、誰も罪に問わない。ビクトリア候もそれを認めておられる。どうだ、それでいいのではないか」

「は、大変寛大な処置を有難うございます。この条件を持ち帰り、検討の上、返事を持ち帰りたく思います」

ビクトリアが頷き、シュバルツが使者に言った。

「いい返事を待っているぞ」


使者が、城に帰ったのち、しばらくして、城から何騎かの騎士が出てきた。

「私は、城将グスタフの長男で、跡継ぎのカールセンと申します。このたびグスタフは引退し、私がカーディフ城の城主となりました。今後ビクトリア候に忠誠を誓うために、ここに参りました」


「私は、もともとビクトリア候に味方すべきと思っていましたが、父がそう思わず,このような仕儀とあいなりました。このようになりました上は、私がビクトリア候に従い、従軍したいと思います。ジョン王の忠誠を誓う守旧派は全て排除しております。今は、ビクトリア候に忠誠を誓うもの達のみです。なにとぞ、参陣を許可されたいと存じます」


カーディフ城は落ちた。


食料はまだ8日分はあった。

次のヨーク城までは2日の行程だった。そしてここを抜けば、次は最終目的の王都ロンディウムだった。


俺は、ヨーク城に向かう途中でシュバルツ様にある提案をした。

「何か、いい考えがあるのか」

「はい、この策が功を奏すれば、ヨーク城でも兵の損害がなく城が落ちるかもしれません」

「それは良いな、聞かせよ」

「カーディフ城では、兵も将も、ドーバー城を一撃で葬った謎の秘密兵器を、またプリマス城の城壁を瞬時に破壊した謎の水を使った兵器を、恐るべき超攻撃兵器として尋常じゃなく恐れていました。この噂をさらに誇張して流します。そのうえで、こんな作戦はどうでしょうか」


俺はシュバルツ様に作戦を話した。

「わっはっは。それは面白い。それでいこう。案外その通りになるかもしれないぞ」

「はい、名付けて”こけ脅し作戦”です」




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