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第23話:二つの芋

何でここにデイジーがいるんだ。

コーンウオール城で、夕食を作る準備であわただしくしていたところに、なんか子供がいるなと思ったらデイジーだった、びっくりしたよ。


「えーと」

「ここは戦場なんだぞ、子供がいていい場所ではない。危ないんだぞ、誰の許しを得てここにいるんだ」俺はデイジーのためを思って怒った。

「ハンス様より許しを得ました」


「ここは危ないんだぞ」

「でもここの領主様は、ビクトリア様に忠誠を誓っているので、ここでは戦いにならないと聞いています」

「それでも戦場では何がおこるかわからないんだ、全く戦にならないという訳じゃないんだ」

「ハンスどうして許したんだ」


俺はそばにいたハンスに聞いた。

「私ももちろん止めました。でもこうと思ったらデイジーは止められません。それに来たい理由をきくと断れませんでした」

「理由とはなんだ」


「あたしは、ランド王国が、ブルク王国北部と気候が似ていると聞いています。ならば、寒さに強い作物があるのではないかと思い、それを探しに来ました」

「ご両親はこのことを知っているのか」


「もちろんですわ。お父様もお母様も、もうあたしのことは、とうの昔にすっかり諦めておりますので全く問題ありません。それにあたしは三女ですので何があっても実家では全く問題ないんです」

デイジーはにっこり笑ってそういった。


俺は頭痛がしてきた。

今までいろいろやらかしているんだろうなあ。デイジーの御両親の気持ちが痛いほど思いやられるよ。


「ハン様はここが戦場とおっしゃいましたが、あたしだって戦っているんです。それは飢饉との戦いです。飢饉に対する戦いの良い武器となる作物があるのなら、多少の危険はいといません」

俺はデイジーの強い意志にたじたじとなった。


「まあ、実際もうここにいるんだから、仕方がないことなんだろう。それで収穫はあったのか」

デイジーの顔が少し曇った。


「それが、ランド王国の作物は、ブルク王国北部とほぼ同じだと分かりました。いくつか違う麦がありましたので、それは購入しました」

「そうか、役に立つといいんだが」


「でも、もう一つ役に立つかどうか良く分からないんですが、収穫があるんです。最近東方大陸から渡ってきた二つの芋があるんです。しかし、いまひとつここランド王国では根付いていないようなのです」

といって、デイジーは二つの芋をさし出した。


「この細長い方は、甘芋というようです。食べればおいしいそうなのですが、ランド王国ではうまく育てられないようで、あまり出回っていません。そして、この丸くごつごつした芋は、二度芋といって、ランド王国でもよく育つようですが、食べるとおなかを壊したり、めまいがすることがあるようで、やはり根付いていないようです」


俺は二つの芋をまじまじとみた。俺はこの芋を知っている。サツマイモとジャガイモじゃないか。

「俺はなんでか、この芋を知っているぞ。どこかで、なんかの本で見たような気がするんだ」

「この甘芋は、毒もなく、皮も葉も食べられる優れものだ。さらにやせた土地でもよく育つ」

「では」

デイジーが期待を込めて俺をみた。


「だが、寒さに弱い。だからこの地では育たなかったんだろう。ブルク王国北部でも育てるのは難しいかな」

それを聞きデイジーが、目に見えてうなだれた。


「それから、この二度芋は皮と芽に毒がある。まあ弱い毒だが、芽の部分を食べると下痢したり、めまいが起こったりする。だが、皮を厚めに剥き、この凹んでる部分から芽が出るので、凹んでいるところをえぐってとれば、問題なく食べられる。そしてこの芋も、やせた土地でもよく育つ」

「そういう事だったんですか」

俺は頷いて言った。

「そしてこの芋は、寒さに非常に強い」


それを聞いてデイジーの目がギラリと光った。

「それでは、この二度芋は、王国北部で栽培可能ですね」

「そうだ」

デイジーが躍り上がって喜んだ。


「あたしはこの二つの芋を買えるだけ買って、王国に帰ります。すぐに研究しなくちゃ」

「甘芋も買うのか」

「もちろんです。暖かいところならやせた土地でも育つのですよね。ならばハンス様のご実家に送り、育てていただきます。南部だって食べ物が豊富というわけではないでしょう。この芋が救いになるかもしれません。もちろん北部でも育てられないか研究します」


デイジーが両手に芋をもって地団駄をふんだ。


「こうしてはいられません。あたしは故郷に帰ります。飢饉に対するこんな素晴らしい武器を二つも見つけたんですよ。飢饉なんて、このあたしが叩きのめしてみせます」


「馬車と護衛をつけるから、ちゃんと準備が整ってから帰るんだぞー」

両手の芋を振り回しながら、どこかに突っ走っていくデイジーの背に俺はそういうのがやっとだった。


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