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第21話:ランド王国侵攻1

「これよりランド王国侵攻の軍議を始める」フリードリヒ王が厳かに宣言した。

「グロッサー、作戦を述べよ」


その軍議の席には、王と、その後ろにグロッサー男爵が控え、北部軍からシュバルツ公爵、アンゲル侯爵、エーデル男爵、クロイツ子爵、そして俺が参加していた。その他、中央軍からオイゲン侯爵が参加していた。

そして王の横にビクトリアが座っていた。


「承りました。ランド王国侵攻作戦の概要を述べます」


「作戦目的は、ジョン王の排除と、ビクトリア卿によるランド国王即位。それによりわが王国とランド王国との友好的な関係を構築することです」


「軍勢は、北部軍一万五千と、王都軍五千の合わせて二万とします。作戦期間は、冬が終わった3月4月の60日間と想定します」


「ランド王国軍の野戦軍は元々二万五千と想定されています。ランド王国軍は先の冬の戦を含め最低でも一万数千人は死亡しております、怪我を負ったものを加えればもっと多数となりましょう。また士気は落ち込んでおり、逃亡兵も多いと報告されています。そのため現在では野戦軍は多くても一万には届かないと思われます」


「また我々が流したビクトリア卿の悲劇の話は王国中に蔓延しており、人々はジョン王に疑惑の目を向けております。さらに人々はジョン王の重税を含む悪政により、ほぼその心は離れていると推定されます」

グロッサーは壁に貼られた地図を指さした。


「まずドーバー城に軍を集結、その後コーンウオール城、プリマス城、カーディフ城、ヨーク城を落とし、最終目的の敵王都ロンディウムを目指します」


「コーンウオール城元代将であるフィリップ候からは、ビクトリア様に忠誠を誓うとの書簡が届いています。コーンウオール城では戦う必要はないかと思います」

オイゲン侯爵が手を挙げて発言した。


「フィリップ殿がどういう人物か知らないのだが、罠の可能性はないのだろうか」

「コーンウオール城はわが亡き父スチュアートの城でした。そしてフィリップは、父の忠臣です。今は王都からの代官が城を支配していますが、私がたてば、代官を殺し、城を掌握する手はずが既に出来ています。昔からの臣も多く、私はうたがっておりません。必ずや城を奪えると確信しております」


「臣グロッサーも罠の確率は低いと考えております。もちろん罠で会った時の対処も考えておりますの、ご安心を」

「ならばよいが、くれぐれも足元を掬われぬように」


「この遠征軍を率いることになったシュバルツです。もちろん罠だった場合の対処も考えております。しかしあの清廉なスチュアート候のお人柄を考えれば、その部下が卑怯な手段をとるとは考え難いと思っております」

「この戦は、王位継承権のあるスチュアート候の弔い合戦であり、ジョン王の悪政により苦しむ国民を助ける戦いでもある。既に人心は離れ、諸侯の忠誠心も乱れている。さらに大義名分はこちらにある。負ける要素がどこにもない戦いだが、油断は禁物である。気を引き締めて戦に臨むように」フリードリヒ王が宣言した。


「フリードリヒ王の助けに感謝まいたします。私は両親をジョン王により殺害されました。この仇をうち、王国を取り戻し、国民を幸せにするために、私は戦います」

ビクトリアの宣言に、全員が歓声を上げた。


「意見具申よろしいでしょうか」その歓声の中、俺は冷静に発言した。

「ハン子爵、何か意見があるのか」


「はい、兵站についてお話ししたいと思います。これほどの大作戦は、王国史上初と思われます。食料の輸送が困難になると予想されます。兵士2万人、軍馬千頭の食料がどれだけ厖大か、みなさんご存じでしょうか」

皆が不安そうに顔を見合わせたのを俺は確認した。誰も考えていなかったな。


「兵一人当たり、一日で穀物1kg、肉、野菜、チーズなどが500g必要になります。また馬は人間より多く食料が必要です、一日で干し草5kg、穀類や大豆5kgを消費します」

穀物も肉類も、一グラム当たり2,5カロリーと考えてよいと思う。つまり一日あたり3750カロリーとなる。戦争という多大な肉体労働をするのだ。このくらいは必要だろう

「つまり60日間の作戦期間中、穀物その他1800トン、飼い葉その他500トン、合計して2300トンの物資が必要になります」

膨大な量に皆がざわざわしだした。


「敵地から徴収すればよいのではないか」とオイゲン侯爵。

「それは悪手です。作戦目的の一つがランド当国との友好なのですから、略奪は絶対すべきではありません。全て本国から輸送すべきです」

「それほどの物資がどこにある」

「ここにあります」俺はニヤッと笑って、地図の一点を示した。


「騎士の城です、ここには500人の城兵を最低5年間養えるだけの備蓄食料があります。ざっと計算すると1500トンの食糧があることになります。その食料は長く保存できることを最重要に考え王国南方でとれる米から作られる干飯ほしいいが主になっています。干飯は保存に気をつければ半永久的に保存できる大変な優れものです。これはそのままでも食べられるし、お湯にふやかすとお粥にもなります。その他は干し肉、塩漬け肉、チーズのみとなりますが、一応物資はあります。これを利用します。残りの300トンを国内から調達するか、また一部はランド王国内で適正価格で買い取ります」


「今回の戦いは、ぜいたくはできません、食事は干飯と、干し肉、チーズがメインとなるでしょう。野菜くらいはランド王国で購入しましょう」

「攻城戦の時など時間のある時は、何らかの料理はでき、温かい食べ物が出せると思いますが、その他の食事は、干飯と干し肉となります」


「しかし、それほどの量、どうやって運ぶ」

「それを今から説明します」


「なにも60日分全てを持ってゆく必要はありません。とりあえず10日分を持ち出陣すればよいと思います。あとは追い追い輸送すればよいと考えます」

「とりあえず、10日分であれば、最低でも兵隊の食料300トン、帰りの食料も考えて馬の食料が135トン、総計435トンが必要です」


「そこから先は、帰りが長くなるので、帰りの馬の食料がどんどん増えていきます。余裕をもって、450トンが必要になると思います。馬車一台に積める量が1トンとすると、これに必要な馬車は450台、馬は900頭必要になると考えます」


「コーンウオール城に物資を集積すればロンディウムまでは、約10日です。往復で20日かかることを考えると450台の輸送隊が最低3隊必要になります。今回は城攻めが主体となるとすると、騎馬隊はあまり必要ではないと思います、騎馬隊の馬を輸送隊にすれば、わが領地から一隊は出せます、後の2隊を他から出していただきたいのですが」


「これは、水、薪は含んでおりません。今から水を補給できる水場を調べ、途中補給できるところを予め調べておくことが肝心と思われます」

「そして、兵站の指揮を私が取りたいのですが、よろしいでしょうか。もちろん資金は出してもらいますが」


「よくぞそこまで考えたものだ、確かに略奪は行わない。正当な対価で買うのは良いだろうが、敵地でどこまで食料があるかはわからない。その計画で行こうと思う。これから春までに王都に必要な食料を集める、騎士の城の食料を含め、その輸送をハンに任せたいと思うが、どうか」フリードリヒ王が宣言した。


「おおせのままに」全員が首肯した。

どーせ面倒な兵站なんか皆したくないんだろうから、俺がするよ、本職だしね。



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