不器用
気を失った水鵺を背に、ふたりは荒れ果てた大地を踏み締める。
『神族には戦など、無理があるな。元々血なまぐさい類は駄目らしい。』
『崇、そうは言えど神族が人々の為に力を行使してくれている。血が苦手な一族なのに。』
『特に純血だと余計にそうらしいじゃないか。その強大な力も宝の持ち腐れのような物だな。』
『つまり君は水鵺がこの先、足手まといになると言いたいのかい?』
何も答えない崇。黙って壱を見据えるのみ。
『それでも君達に着いて行く……』
ふたりは驚いて水鵺を見た。
『足手まといだろうけれど、連れて行ってほしい。』
『そんな状態では、貴様など直ぐに神力を使い果たすだけだ。餌食になるぞ。』
背負っていた水鵺の襟元を掴み、容赦なく地面へと叩きつける。
『崇……』
『お前など、如何に純血種族だろうととるに足らん小童だ。水鵺……お前をこの先の戦いには連れては行かせない。それでも行くと言うならば……』
『どうするつもりです……?』
『俺の手でその命に終焉を与える。』
紅の瞳がより一層、赤黒く光を放つ。
『どうして欲しい?その尊き神族の純血種殿……?』
地面に組み敷かれる体勢で、目線がぶつかる。
魔力で創られた剣の刃を、水鵺の胸元へと軽く当て、冷笑を浮かべた。
『俺の属性である闇の剣で、その身を貫けば、致命傷だろう?』
『崇……そうしたいのですか?私はひつよ……』
水鵺が言いかけた瞬間、無数の魔力の矢が上空より襲い掛かった。
『水鵺!崇!魔法で防ぐんだ!!』
壱が叫ぶ。
『………崇…』
『貴様何を……』
ギリギリの所で、崇の手をほどき立ち上がった水鵺は崇を神通力で地面へと吹き飛ばした。
『水鵺!』
壱と崇の目の前で、無数の矢が全身に突き刺さる。
矢を全身で受け止めた水鵺は、地へ倒れ込む。
虫の息の状態で、目が虚ろになっていた。
『誰が助けろと言った!?』
強声で崇が睨むように水鵺に言う。
『あれ~?殺して欲しかったのではないのですか~?』
小生意気な声の主。
振り向くとまだ5歳位の人族の男の子であった。
『可笑しいですね~殺してあげるのに、協力してあげたのですよ~』
クスクス笑う。
『あぁ、そうか……小僧、お前がー…?』
『あっれ~?何で殺気立ってるの?僕、良い事をしたのに?』
『壱、水鵺を安全な所へ。まだ息は辛うじてあるようだ。頼む。』
崇の意志を汲み取ったのか、無言のまま崇の元を去った。
『ふぅ~ん、あの神族を殺そうとしてたのに殺さないんだぁ?不思議~』
『小僧、お前はこの俺様が丁重にあの世へ送ってやろう。』
『フェアじゃないね~大人って勝手だよ~理不尽ってやつ?せっかくお手伝いしたのにぃ~』
ムッとした表情の男の子は、崇を睨む。
『死ぬが良い。』
そう言って魔力で創った剣で、男の子の心臓を一瞬にして貫く。
『俊敏だね~流石にびっくり!僕の本体じゃないから良いや。今回は蓮王に逆らうお馬鹿さん達の様子見にきただけなんだよね~次はないよ?』
そう言うと、身体が見る見る灰になり跡形もなく消えた。
辺りは静寂に包まれる。
『ふん、あれを殺すも生かすも無二の友である俺だけだ。』
吐き捨てるような台詞を囁く。
その表情は彼には珍しい慈愛に満ちた表情であった。




