決意
彼方此方で悲鳴が響き、大地には大量の血が赤い絨毯の如く、広がる。
辺り一面、息絶えた者の躯の山になっていた。
その光景を目の当たりにした崇と壱は言葉を失った。
『何て酷い有り様だ。』
『止めなくてはならないな。』
『ほぉ、誰を止めると……?』
ふたりは油断をしていたせいか、反応に遅れた。
いや、まさか直々(じか)に対面するのは、先だと推測していたからである。
『しまった!』
振り返る暇も無かった。
『汝……我に力を貸せ、彼の者達を煉獄という炎で包み込めー…炎暴風!!』
容赦なく炎が二人に迫る。
『彼の者達を守護る事を願わん……聖守護神よ、我に力を貸したまえー…聖結界陣!!』
ふたりの目の前に宙より舞い降りた一人の影。
白金色の光が二人を包み込む。
『その力は……!お前は戦いが嫌いではなかったか?』
二人を襲った炎は相殺された。
『えぇ、蓮王……』
『先に貴様を殺めておくべきであったな?水鵺ー……』
忌々しげに見据える蓮。
『だが、今日は文が悪いな。仕方がない……今日の所は引き上げるとしよう。』
そう言うと蓮は詠唱し、その場から姿を消す。
『待て!』
『崇、深追いは止めて下さい。』
水鵺が崇の腕を掴む。
『水鵺のお陰で助かったよ。有り難う。』
『いいえ、二人に怪我がなくて何よりです。それにしても、蓮王は何て酷い行いを……』
周囲の惨状を見て青ざめる。
『とりあえず一旦、この場を離れよう。君の身体に障る。』
『あ、あぁ……』
『高等魔法をこんな場所で詠唱するからー…って、水鵺!』
崩れ落ちるように、水鵺が倒れ込むのと同時に崇が身体を支えた。
蒼白な表情で気を失っていた。
そんな光景を遠くから黙って見つめていた影が一つ。口角を吊り上げ、不適な笑みを浮かべる。
『玖皇水鵺……君には耐え難い環境だろう。大天使なんて召喚するからだ。』
その影は何かの気配を感じとったのか、不適な笑みを浮かべた。
『あぁ、人間共か。黙っていないで、出てきては如何ですか?さぁー…』
その声で木の陰に隠れていた4つの影は強い追い風に押され姿を現した。
『えっ…!?』
『気をつけろ、海紗。あいつに油断してはならない。かなりの強者だ。』
『そのようですね。』
『庵、俺から離れるな。』
『えぇ。』
四人は警戒し、体勢を整える。
『ふふ、……』
『何が可笑しい!?』
『月城駿……口の聞き方には気をつけろ。』
ギロリと睨むと駿に向かって手を翳す。
『えっ!?』
一瞬の内に駿は暴風に飛ばされ、地面に叩きつけられた。緊迫した空気が張り詰める。
『誤解をされては困る。貴様等如きが足掻いたとしても、痛くも痒くもない。』
『人族を甘く見ないで!』
『久遠海紗、貴様も鬱陶しいな。しかし今日の所は多目に見てやろう。』
『私達は貴方方を倒します。絶対にー…!』
凛とした庵の仕草と瞳を見る謎の影。
『それは楽しみだ。その瞳が絶望に染められた時に同じ台詞を言えるかな?』
高笑いをして、影は姿を消した。
四人は唖然とする。
『早くあの方達と合流しなくてはなりませんわね。勝利への道を歩む為に。』
『だね!行こう。』
四人は互いに頷き大地を踏み締める。
『幾ら君達でも、人数が少な過ぎないかい?』
『私達も仲間に加えてくれない?』
四人の前に現れ声をかけたのは、同じ位の年齢の男の子と女の子だった。
『今、仲間と言ったか?』
『うん。言ったよ?だってこの有り様は良くないもの!私だって微力ながらも、戦えるわ。』
駿の問いかけに答えた女の子の名前は暁莉咲
人族と神族の半分である。
『僕だって戦うよ。その意志もある!例え誰だろうとね!?』
莉咲に続いて物申した男の子の名前は虹彩悠
人族と魔族の半分である。
二人は十字架学園のBクラスに属する生徒であった。
『そっか!私達以外にも立ち上がってくれる仲間が居たんだね。何か嬉しい。』
『海紗の言う通りですね。私もです…』
『よし、先を急ごう!』
駿が先頭に立ち、面々は壱達と合流すべく赤く染まった大地を突き進む。




