陰謀
闇の霧が立ち込める暗黒の森の中心部に聳え立つ大きな城の一廓。
大きな鏡に映る光景をぼんやりと見つめている人影がひとつ。
『ソナタは,この者を殺すのだ。お前の力を奪って,死に追い詰めたのだ。我が助けなければ……』
『解りました。我が主の為に,あの者を必ずや……』
頭を垂らすは白銀の長き髪の女性。彼女は立ち上がると姿を消した。その後,不適な笑みを浮かべて鏡を見つめるのは蓮王。
『さぁ,愉快な宴を始めるとしようか……崇よ。』
鏡に映えるは先程の彼女。既に目的地に到達していた。
目の前には蓮王が邪魔に思う面々。そして愛する息子。
『……崇。』
彼女の声で,彼女の姿をした者はそう呟いた。
『水鵺,来ると分かっていた。』
真摯な眼差しを向けるも,現実は残酷である。
『そう。』
一歩ずつ近付く互いの距離。
『危ない!今,彼女に近付いては……!』
壱が叫ぶ。叫びも虚しく響く。
『俺の命だろう?それで良いのならやろう。』
そう云って水鵺を抱き締めた。
『……で,私に何を求めますか?』
そう云った彼女の腕にある大釜はギラりと光る。
澄んだ刃は崇を映し出した。
『お前だ。』
力を更に込めて腕に抱く。骨がギシリと音を立てる程に強い抱擁である。生きている人肌ではない冷たい皮膚を感じた彼。
『お前が欲しい。……返してもらうぞ,蓮王。』
ピシリ,と音を立てる鏡の表面に亀裂が入る。鏡の中の彼は蓮王を睨み着けていた。まるで見ている事を理解しているかのように。
『これは愉快,傑作ではないか。』
王は嗤う。
『水鵺を殺したのは彼ですが,そう仕向けた王様も相当の悪ですね。』
王の傍らに佇むは漆黒のマントを被る男。彼はほくそ笑む。
『我らの計画には邪魔だ。神の一族は。』
『そうですね。何処までも御供を致します。蓮王……。』
『崇よ,そして我が息子よ。お前達にこれを倒せるか?ふふ……』
そして再び,鏡に目をやる蓮王と黒マントの男。




