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好きなら、言ってよ。  作者: ともり。


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# 第五話 他の人

# 第五話 他の人


「かずまくんって、ほんと話しやすいですよね」


昼休み。


隣の部署の女性社員が笑いながら言った。


「え、そう?」


「なんか距離感ちょうどいいっていうか」


「あ〜、それは嬉しいかも」


かずまも楽しそうに笑う。


にちかは、その会話を少し離れた席で聞いていた。


聞くつもりなんてなかった。


でも、耳に入ってしまう。


今日は部署の人数が多く、昼食は大人数になっていた。


こういう時、にちかはほとんど話せない。


自然と端の席へ座り、会話を聞くだけになる。


すると、向かいの先輩が言った。


「かずま、人懐っこいもんな〜」


「たしかに。営業向いてそう」


「え〜、俺そんな器用じゃないっすよ」


笑い声が広がる。


その輪の中心に、かずまがいる。


にちかは視線を落とした。


……当たり前だ。


かずまは誰とでも話せる。


優しいし、明るいし、人が集まる。


自分とは違う。


「にちかくん、静かだね?」


突然話を振られ、肩が揺れる。


「え、あ……」


「緊張してる?」


「……まあ」


「かわいい〜」


女性社員が笑う。


にちかは曖昧に笑うことしかできなかった。


すると。


「にちか、そういうの苦手なんで」


かずまが自然に口を挟んだ。


「え?」


「人多いと固まるタイプ」


かずまは当然みたいに言う。


その言い方が、少しだけ嬉しかった。


自分のことを、ちゃんと見てくれているみたいで。


でも。


そのあとだった。


「でも二人だとめっちゃ喋るよな」


その一言で、心臓が止まりそうになる。


「え〜!そうなんですか?」


「意外!」


周囲が面白そうに反応する。


やめてほしい。


そんなふうに言われたら、意識してるのがバレそうで怖い。


「……別に」


反射的に、少し冷たい声が出た。


空気が一瞬止まる。


かずまの笑顔も、少しだけ固まった。


「……そっか」


その声が、妙に遠く感じた。


 


昼休みが終わったあと。


にちかは自販機の前で缶コーヒーを買っていた。


完全にやってしまった。


まただ。


嬉しくなるほど、怖くなって距離を取ってしまう。


嫌な言い方だった。


傷つけたかもしれない。


「にちか」


後ろから声がする。


振り返ると、かずまが立っていた。


「……すみません」


顔を見る前に謝ってしまう。


かずまは少し驚いたあと、小さく笑った。


「なんで謝んの」


「さっき……」


言葉が続かない。


かずまは缶コーヒーを取り出しながら、ぽつりと言った。


「俺、にちかに避けられると普通にへこむ」


胸が痛い。


そんな顔で言わないでほしい。


「避けてないです」


「でも壁作るじゃん」


図星だった。


かずまは少しだけ困ったように笑う。


「俺、なんかした?」


その言葉に、にちかは何も返せなかった。


違う。


かずまは悪くない。


悪いのは、自分だ。


好きになりすぎてる、自分。


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