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好きなら、言ってよ。  作者: ともり。


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第二十一話 戻りたい

# 第二十一話 戻りたい


会社近くの定食屋。


昼時なのに、今日は妙に静かに感じた。


向かい側で、かずまが水を飲んでいる。


久しぶりの二人きり。


前なら、それだけで嬉しくて落ち着いたのに。


今日は緊張して仕方ない。


 


「……びっくりした」


かずまがぽつりと呟く。


「何がですか」


「名前呼ばれたの」


にちかは思わず視線を逸らした。


「……すみません」


「だから、それ」


かずまが苦笑する。


「嬉しかったのに、謝られると反応困る」


胸が痛い。


まただ。


自分はいつも、嬉しいをちゃんと返せない。


 


店員が定食を運んでくる。


しばらく無言で食べる。


でも、その沈黙が苦しい。


前は、もっと自然に話せていた気がする。


すると。


「にちか」


かずまが箸を止めた。


「最近、俺ら変じゃない?」


その言葉に、心臓が強く跳ねる。


「……変、ですか」


「うん」


かずまは苦笑した。


「前の方が楽だった」


胸が締め付けられる。


前。


まだ気持ちを誤魔化せていた頃。


まだ、失う怖さを知らなかった頃。


「最近、気ぃ遣わせてる気がするし」


「距離近づけたいのに、逆に遠くなってる感じする」


その言葉が痛い。


全部、自分のせいだ。


「……ごめんなさい」


また謝る。


すると、かずまが少しだけ眉を下げた。


「にちか」


優しく名前を呼ばれる。


その声だけで、泣きそうになる。


「俺、謝ってほしいわけじゃない」


まっすぐな声だった。


「ちゃんと、思ってること知りたい」


胸が熱くなる。


今なら言えるかもしれない。


好きですって。


離れてほしくないって。


でも。


怖い。


もし拒絶されたら。


もし今度こそ終わったら。


その恐怖が、喉を塞ぐ。


にちかは視線を落としたまま、小さく呟いた。


「……戻りたいです」


「え?」


「前みたいに」


言った瞬間。


かずまが、少し苦しそうに笑った。


「俺は、戻りたくない」


心臓が止まりそうになる。


かずまは静かに続けた。


「だって俺、前よりもっと好きになってるから」


その一言で。


にちかの思考は、また真っ白になった。


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