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好きなら、言ってよ。  作者: ともり。


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# 第十一話 嫉妬

# 第十一話 嫉妬


午後。


外回りから戻ったかずまは、珍しく女性社員たちに囲まれていた。


「え、かずまくんそれ本当に一人で対応したの?」


「すごくない?」


「いや、めちゃくちゃ焦りましたって」


楽しそうな笑い声。


かずまもいつもの調子で笑っている。


にちかは、自分の席からその様子を見ていた。


見たくないのに、目が行く。


楽しそう。


距離が近い。


自然に笑ってる。


……自分には、あんなふうにできない。


胸の奥が、じわっと熱くなる。


嫌な感じだった。


 


「にちか、この資料確認お願い」


先輩に声をかけられ、慌てて視線を戻す。


「……はい」


でも集中できない。


笑い声が耳に入るたび、胸がざわつく。


かずまは誰とでも仲良くなれる。


優しいし、明るい。


きっと、自分じゃなくてもいい。


そう思うほど苦しくなった。


 


数十分後。


「お疲れ、にちか」


不意に隣から声が落ちる。


顔を上げると、かずまが缶コーヒーを机へ置いた。


「差し入れ」


「……ありがとうございます」


「疲れてる顔してる」


お前のせいだ、なんて言えるわけがない。


にちかは缶コーヒーへ視線を落としたまま、小さく息を吐く。


すると。


「……なんか機嫌悪い?」


かずまが少しだけ顔を覗き込んだ。


近い。


近いのに。


さっき他の人とも、こんなふうに笑ってた。


その事実が、胸に引っかかる。


「別に」


また冷たい言い方になってしまう。


かずまの表情が少し曇った。


「……俺、またなんかした?」


違う。


悪いのは自分だ。


勝手に嫉妬して。


勝手に苦しくなってるだけ。


でも。


その感情を隠そうとすると、余計に態度が硬くなる。


「してないです」


「いや、絶対嘘」


かずまは小さく眉を下げた。


「今日ずっと変」


その優しい声が、逆につらい。


にちかは数秒黙ったあと、小さく口を開く。


「……かずま、誰とでも仲いいので」


言った瞬間、後悔した。


何それ。


めちゃくちゃ面倒くさい言い方だ。


でも、もう止まらなかった。


「だから、その……」


うまく続かない。


すると、かずまが少し目を丸くした。


そして。


「……嫉妬?」


その一言で、心臓が止まりそうになる。


「ち、違います!」


反射的に否定する。


でも、声が裏返った。


かずまは数秒黙ったあと、急に顔を隠した。


「……やば」


「え?」


「ちょっと今、嬉しいかも」


顔を上げたかずまは、困ったみたいに笑っていた。


「俺ばっか気にしてんのかと思ってた」


その言葉に、にちかは完全に思考が止まる。


かずまは小さく息を吐いて、ぽつりと呟いた。


「好きなやつに嫉妬されるの、普通に嬉しいんだな」


その瞬間。


にちかの頭の中が、真っ白になった。


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