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俺の親父、金髪美少女になる 〜俺の知らないところで姫扱いされてナンパまでされてるんだが〜  作者: 光


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7/9

【前編】なんとしてでも美少女親父をお持ち帰りしたい部下の人

 俺は最近、免許を取得した。教官にギリギリだと言われながらも実技試験に受かり、なんとか筆記も突破して交付を受けたのがほんの数日前のこと。


 そんな俺は、この深夜一時すぎに一人で軽自動車のハンドルを握っていた。『迎えに来て』と親父から連絡があったのだ。会社の飲み会で、終電を逃してしまったらしい。


 30分もかけて駅前の繁華街につくと、電話をかけるまえに親父は見つかった。金髪美少女が、こんな時間に閑散とした路上を歩いているものだから、目立って仕方なかった。


 千鳥足の親父は、オフィスカジュアルな格好をした若い女性に肩を支えられていた。まるで姉妹のような二人は和気あいあいとしていて、昭和っぽい歌謡曲を合唱していた。


「うえをみゅいてあるっこ――」


 近くまで行ってクラクションを鳴らした。


「親父、来たぞ」

「おぅおぅおうお前か、助かったぞぉ」


 顔を真っ赤にした親父は、ふらりふらりと車道に近づいてきた。今にも躓いて倒れてしまいそうで見ちゃいられない、と俺と同じことを思ったのかどうか、一緒にいた女性が親父の手を掴んだ。


「課長、まっすぐ歩かないと危ないですよ」

「んぅ……ぁきみかぁ、道が曲がって真っ直ぐに歩けなくてぇ」


 ヘラヘラする親父を、女性はじっと見つめていた。さっきまでの陽気さとは違って、ずいぶん真剣味があった。


 見つめ合うような時間があってから、女性は運転席にいる俺に視線を向けた。


「こんばんは。ええと、課長のご家族ですか?」

「あ、はい、息子です。迎えに来いって頼まれちゃって、そちらは、同僚さんでした、かね」

「はい、部下です。いつもお世話になってます」

「こちらこそ、お世話になってます。なんかすみません、親父が迷惑かけちゃって」


 いえいえと互いに会釈した。にこにことしていて、感じのいい人だった。


 親父ときたらさらに崩れちまって、部下の人に寄りかかるようになっていた。


「たく。そうだ、乗ってください、家送っていきますよ、終電もうないですよね」

「いえ、私は」


 笑顔のまま、部下の人は手を振った。


「課長を送っていきますので、息子さんはお帰りいただいて大丈夫ですよ」

「あ、そうで……ん」


 ぺこりと部下の人は頭を下げた。踵を返して、親父の手を引きながら歩き出した。


 ダボダボスーツ姿の美少女は、鳥の雛みたいに付き従っていた。


 ギアをRに入れて、俺は急いで車をバックさせた。


「ちょ、ちょちょ、ちょっと、待ってください。俺、迎えに来たんです、親父を。30分もかけて」


 部下の人は足を止めて、こちらに顔を向けた。


「ああ、そうなんですね。お疲れ様でした」


 言うと、また何事もなかったかのように歩き出した。


 クラクションを鳴らした。叫んだ。


「親父っ」

「んぁ」

「自分で寄越したんだろ、さっさと乗れって」

「あ、あー、あ、すまんすまん、じゃきみ、また来週」


 繋いだ手を離して、親父は車に近づいてきた。歩道から出て、今度こそ後部座席のドアを開いた。


 ふぅっと俺は息を吐いた。二人ともめんどくせえ、これだから酔っ払いは。


「ほらシートベルトして。そう、そうやって、よしよし、よくできました」


 とろんとした顔の親父は、シートベルトを締めてピースサインをした。薄暗い車内で、泥酔した少女が足を投げ出して座っていた。ワイシャツが崩れて、へその下が露出していた。


 後部座席に視線をやったまま、俺は咳払いをした。いかん、親父だ親父だ。


「ほら、ドア閉めて」

「あぅ」


 バタンッという音がした。ほとんど同時に前の方からも、もう一つ同じ音が聞こえた。


 左前タイヤのサスペンションが、微妙に沈んだ。


 視線を助手席側に向けた。


「それじゃあ、よろしくお願いしますね」


 部下の人が、隣に座っていた。室内灯に照らされたその顔は白いままで、ほんの少しも赤くなっていない。着衣に乱れはなく、酒の匂いもしない。


「送ってくれるって、言ってましたよね」


 その笑顔は、シラフに見えた。

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