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俺の親父、金髪美少女になる 〜俺の知らないところで姫扱いされてナンパまでされてるんだが〜  作者: 光


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6/9

親父とお袋は一緒に寝ている

 今朝の親父とお袋は、妙だった。


 休みとあらば同じソファーに並んで座って朝のニュースなんかを見てるのに、今日に限ってはバラバラだった。小じわのある方は無言でお茶をすすり、肌にハリがある方はダイニングテーブルに座って新聞を広げていた。


 俺がおはようと挨拶しても、二人の返事はワンテンポ遅れた。しかもその返事が微妙に被ってしまい、妙な沈黙が生まれたかと思えば、結局最後まで言い切ることはなかった。


 親父が言う。


「お前、今日は休みか」

「ん、ああ、土曜だし、シフトもねえや」


 お袋が言う。


「あなた、今日は土曜じゃない」

「そうか、そうだったな母さん、ずいぶん物知りじゃないか」

「みんな知ってますよ、いやねえ。それにしても今日は天気がいいこと」


 お袋は窓の外を見た。湯飲みを手にしたまま、その姿勢で動かなくなった。

 首筋に、吸われたような赤い痕があった。蚊に刺されたにしては大きく、引っぱたかれたにしては小さかった。ちょうど、唇の大きさくらい。


 親父の方を見た。さっ、と新聞に顔が隠れたかと思うと、急にぶつぶつ記事を読み上げだした。

 近づいて、その新聞を取り上げた。


「あっ、こ、こら、なにをする。父さんだぞ!」


 美少女の声と姿で言われても説得力がない、相変わらず。

 睨んでるのに顔を赤くしているせいで威厳なんてまるでない。この生き物はもう親父じゃないかもしれない。


「……親父ってさ、実年齢よりずっと若く見えるよな」

「仕方ないだろ、そうなってしまったんだから。今更なにを言うんだお前は」

「いや……法的にどうなんだろうって。結婚してたらノーカンとか?」


 親父は口を結んで、黙り込んだ。ちらちらお袋を窺って、たこみたいに顔を赤くしていた。

 どうやったか聞きたい。どうなったのか知りたい。しかし子供が聞くことじゃない。なにかあったとしても、ナンパ男に溺れるのとはわけがちがう。


 母さんはもちろん女で、妻で、けれど親父も女で、美少女で。ああ、自分がどうやって生まれたのかわからなくなる。アイデンティティ・クライシスだこの野郎。


 冷蔵庫を開けた。牛乳パックを取り出して、そのままがぶ飲みしかけて、慌てて手を止めて、コップに注いだ。朝の一杯で喉を潤した。

 お袋と親父を順繰りに見た。二人はまだ日常生活に帰ってきていなかった。


「なあ」


 しゃがんで親父の耳に口を寄せた。


「どうだった?」


 くっ、と親父の結んだ口が上を向いた。視線が女性的な胸と下半身に動いた。

 ぼそっとつぶやきが聞こえた。


「……男にはわからん」


 ついには足の指まで視線を下げて、親父は続けた。


「次からは詮索するな」


 俺の股間を引っぱたいて、肩をいからせながら親父はリビングから出ていった。


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