わぁ、お久しぶりです。えっ??は、初めまして。
それは突然の申し込みだった。
「と、友達になってください!!」
私の目の前には、ぷるぷるとふるえた手を差し出す少女の姿。
なんか、交際でも申し込む勢いだな、これ。
やってるのは友達申請なんだけどね。
金茶のショートカットの髪がさらりと流れ、直角に腰を折り曲げ、両手を差し出す彼女は長身のためちょっと圧迫感がある。
しかしその手をよく見ると、彼女がこの世界に来てから努力をしている跡がくっきりと出ていた。
そう、第二の還り人で、神殿でも公式発表された魔障を晴らす為に現れた二人のうち【戦士】と断定された人だった。
何故、このような状態に陥っているのかと言うと、私達が東方の領地へ帰ってから一ヶ月後にキーファとカイルアが訪ねて来たことから始まった。
中央から東方へ、五日間ののんびりした日程で戻った後、さっそく私の魔法訓練が始まった。
ガルレイ様の好意でなんと!奥様であるカルティア夫人に指導を受けることとなった。
海達のお祖母様であるカルティア様は私と同じ小柄な鳥でハクセキレイと呼ばれる鳥種だそう。彼女も若い頃、獣化から人型の変化が苦手だったらしく、教師として最適ではないかとガルレイ様から提案が。
カルティア様は快く引き受けてくださり、午後の二時間ほど教えて貰っている。
銀灰色に前髪が黒のメッシュとなっているオシャレな色で、少し垂れ目の青色の瞳だ。
小柄な人で、少しふくよかだが、ニコニコと人当たりの良い笑みを常に浮かべている。可愛らしいお祖母様だ。
そんなお祖母様に導かれ、なんとか半日は人間に戻れる位の魔力操作が出来るようになった。
体の隅々まで魔力を流す、と言うのは私には思ったより難しく、想像力が乏しいのかなかなか上手く出来なくて何度も失敗を繰り返していた。ラノベのとかではスイスイッと簡単に出来てたのに、実際自分でやろうと思うとこれがまたまた難儀だった。
始めは笑えることに、人間になったら翼が引っ込まず、中途半端な天使の状態。
それも手のひらサイズの翼。
そこから失敗を繰返し、徐々に体格に合った翼を出せるようになった。
が、最終目標はスムーズな獣化から人型、その逆も然り。
獣化は三形体あり、第一は完全な獣体。第二は巨大化、これは戦闘態勢等で取る形体だそう。第三は部分化、いわゆる一部のみを獣化させること。例えば犬の耳、しっぽだけ、とか。私の場合は翼のみ、とか。これは意識して自分で具現化させる必要がある。
第一はすんなり出来たけど、そこから人型に戻るのがスゴく時間がかかり、諦めかけるほど。
巨大化……。これは、カッコいい鳥に憧れていた私にはちょっと屈辱的だったので、二度とやらない!
これもスムーズに巨大化出来たが、サイズは一メートルあるかないかで、スマートな形に変化したかったのに、丸い、太っている訳ではないのだけど、羽毛がモッフリし過ぎてまるっまるだった。なぜ……。
これを見た海達はマスコットみたいで可愛いと絶賛され、抱き枕にされたりとかなり玩ばれた……。くっ。
カルティア様に手を握って貰い、何度も魔力を循環させ、変化出来るように導いて貰った。
ゆったりとしたカルティア様の性格が現れたかのような魔力は急かすことなく、こつこつと導いてくれる。
失敗しても「大丈夫よ~。私も何度もぶつかった壁だから~」と何とも気の抜ける声掛けと共に、一月掛けてなんとか半日人型を保てる様になった。
そんなある日、海から話がある、と呼び出された。
気分転換に海達の家で集合した私達は、リビングのソファにそれぞれ腰かけていた。
ローテーブルには飲み物とお菓子が置かれて、人型になっている私は温かいチョコミルクを飲みつつ、呼び出した海を陸と共に待っていた。
三人掛けのソファで、陸が私の髪で遊んでいると玄関の扉が開く音が聞こえた。
「ごめん、待たせた?」
最近朝晩と寒くなり本格的な冬場がやってきた。
海は厚手のチェスター風コートを脱ぎながら、ポールハンガーに掛けると奥のリビングにやってきた。
「大丈夫。忙しかったの?」
昼過ぎに集合だったのは、午前中、海はガルレイ様に連れられて魔障討伐に出掛けていたからだった。
現在、各四方公爵家の領地では本格的に魔障討伐に追われつつあった。始めは靄のようなモノだったが、次第に生物を飲み込み、人家に被害が徐々に出始めたからだ。
これに合わせ、第二の還り人の出現は、昔からの言い伝えである巫女と戦士であると中央から公式発表。
二人は東西南北に現れている魔障を、完全一掃させるための訓練を本格的に開始したそうだ。
まだ生物型の魔障の数が少ないため、こちらでなんとか対処出来ているが、完全消去をさせるためには光の魔力を持つ巫女と、それをまとい武器に付与させることが出来る戦士がいないと難しいそうだ。
いくら神官が対処しても、魔力量の問題で全て出来ない。その点二人は魔力量が豊富なため普通より広範囲の使用が可能らしい。
四方を治める者達は実力者揃いだが、魔障ばかりに時間をかけられない。領地もあるため長期間空けられない。
現在の対処法としては、各領地の騎士団、中央の特殊部隊が出動することとなる。だが人には限りがあるのと、魔障に最も効果のある光の魔力を持つ者も少ないため、各領地で対応し消滅は出来ても殲滅までには至らないのだ。
光の魔力で消さない限り、際限なく魔障は現れ、また討伐に出るの繰り返しだ。
海も光の魔力を持っているため、その討伐には駆り出されている。
逆に陸は光の魔力は持っていないが大量討伐の際は同行しているようだった。聞くところによると、陸は魔障に対して魔法陣をしき力業で倒すらしい。その魔法陣は数十万の鎌鼬を出現させ一気に放出するそうだ。それもピンポイントに魔障に当てるという神業。ただ、大量の魔力を出力するため回数は限られるそうだ。
かなりの魔力を消費するので陸はその分を食事で補充しているみたい。毎回討伐後は、え、こんなに食べるの?と言うくらい食べる。
海はそんなことはないが、多少食事量が増える程度。
そんな海を羨ましげにし、燃費が悪すぎる、と陸は毎回愚痴る。
いたちごっこのような状態が現時点で、今日海は生物型が出たため早朝から討伐に行っていた。
「お腹空いてるんじゃない?何か軽く作ろうか?」
向かいのソファにドサッと乱暴に座った海に尋ねた。
「ホント?やった、茉白の手作り料理久しぶり~。食べたい」
「そんなに難しいもの作れないよ?簡単料理だからー」
「それでもいいよ」
「了解」
キッチンへ向かい、野菜を適当な大きさに切り、鶏肉を一口に切り鍋で炒める。野菜を放り込み、こちらの世界のコンソメを入れると水をひたひたにしてしばらく煮込む。その間に豚肉の塊を厚切りにして筋を切ると軽く包丁の背で叩く。胡椒とスパイスを揉み混むとフライパンに油を入れ二枚同時に焼く。
その間に大根とカブをニで割ったかの様な野菜をおろす。醤油に似た調味料と砂糖、塩、酒に漬け込む。
陸がこちらに来たのでスープを見てもらう。
案の定、陸も食べると言い出したので、肉をさらに切る。同じようにして何枚か焼くと、そのフライパンにおろした野菜を漬けダレごと入れて少し煮る。
肉が出来上がったのでタレをかけて陸に渡し、先にそれを食べていて貰う。
バケットを何枚か切り、それも籠に入れて出しておく。
スープの野菜が柔らかくなったのを確認し、それを器に入れて二人分出した。
よほどお腹が空いていたのか、海は無言で食べ進めていた。陸はいつもの通り。
スープを二杯ほどおかわりをしてようやく満足したようだ。
「あー、幸せ。ごちそうさま、茉白」
「お粗末さまです」
ここにいる時はいつもは海が料理をしてくれるので、私が作ることはあまりない。陸も手伝ってくれるが、料理の腕は私とどっこいどっこいだ。海の方が上手い。
陸も食べ終わると食器等を洗ってくれた。
お菓子もけっこう食べていたのに、普通にお肉食べてたよ。相変わらずブラックホールな胃だ。
二人とも落ち着いたところで海がこちらに集合させた理由を話した。
「そろそろ本腰を入れて部隊編成するみたい」
何が、と聞かずとも、巫女達のメンバーだろう。
「中央の情報だと、巫女の子、逆ハーレム作るつもりか?っていうメンバーを指定してきたよ」
「逆ハーレム??」
「そう。この間中央から各領地の若手の実力者に召集が来て、一時的に中央へ行ったんだよ」
「へ?いつの間に??」
「茉白がばあ様にもちもちを直して貰っていた時」
あ、あの時か!巨大化からやっぱりなかなか戻れなくて、お祖母様が付きっきりになってた時か。
二日で何とか人型に戻れたけど。
「二人に会ったけど、巫女の方はカイルアさんと南方夫妻が言葉を濁したのも分からないでもない女性」
思い浮かべたのか、海は薄笑いをする。
「どんな人だったの?」
「はっきり言って嫌いなタイプだね。まあ、アレを好きな男はあまりいないと思うけど」
「それほどなの?え?でもアシュレイ様のツガイになった人だよね」
「ああ、そのアシュレイ様ね。なーんか見た感じ変なんだよね」
「変って。でもカイルアさんが感知しなかったんでしょ?」
「たぶん普通の人達は勘づかない、気配とでもいうのかな?」
「どうして海はわかったの?」
「俺がなんとなく感じたのは、腹黒神とのやり取りを続けている弊害かな」
「弊害って……。恩恵の間違いじゃないの?」
「いや、弊害だね。もともと俺の家系は光の魔力は発現しないんだよね。どちらかというと風や土、水との親和が強いから。珍しいから両親もびっくりでね」
はーやれやれという感じ肩を竦める海。
「力量としては上級神官クラスだと思うよ」
「うわぁ……」
私には光の魔力と言うより、治癒能力の方が高くて属性で言えば光らしいけど、戦闘向きの能力ではない。
どちらかと言えば後衛の能力だ。
「ホント、微細なものなんだけど、あの人ちょっと弄られている感じがした。でも日常生活には異常が見られないから余計に分かりづらいかもね」
「じゃあ、やっぱり私が?」
「うん、そうだろうね。南方夫妻が疑っていた通りアシュレイ様の直感は当たっていたんだろう」
「でも私にはもう何も感じることが出来ないし、お二人は婚姻届を出してるからどうしようもないね」
チラッと海がこちらを見るが、ソファに身を埋めて両手を組みそれを首後ろに持ってくる。
「茉白は、アシュレイ様に戻ってきてほしい?」
何か思うように目を閉じた海にそう問われる。
陸は特に話に口を挟むことなく、お菓子をら食べながらこちらを見ている。
「ううん。もう結婚したのだし、ツガイだと宣言しているんだから、そのまま貫き通してほしい。もとに戻したら誰もが不幸になりそう」
ゆっくり目を開けた海は、そう、とだけ返した。
「話を戻すけど、その巫女、カリンっていうんだけど、たぶん向こうでの世界とこちらの世界との年齢差はあまりない感じ。高校生から大学生位の精神年齢。あと、巫女と言われたからか、優越感に浸ってる」
「あー、特別扱いは当たり前精神?」
陸が呆れたように言う。
「そう。アシュレイ様のツガイと言いつつ、キーファ様やカイルア様、おまけに俺、それと陸の兄と俺達の従兄弟にも秋波を送っていたしなぁ」
それに陸が思いっきり眉を寄せた。
「はぁ?リュシーとアル兄さんにも??なにそれ。ツガイがいるクセに、他に目移りするのっておかしくない?」
陸に兄が二人いるのは知っているがお会いしたことはない。
リュシウォル、リュシーは海と仲が良く、たまに遊びに来て知っていた。私の(今の年齢は16歳と判明)三つ上だ。見た目優男なのに口が悪い。海とは悪友っぽい。
「だからおそらくカリンって女、この世界を現実としてあまり受け止めてないように思う。異世界転生トリップで、また戻れるとか思ってんじゃないかな」
カリンさんって人、神殿で説明受けたんだよね?
還り人はもともとこの世界の住人で元に戻っただけだってことに。
だから、日本には帰れない。
巫女=聖女、って図式かな。
でも、異世界転生のあるあるで、元の世界に戻れないのも通説だったと思うんだけど。
魔力が高いから万能感とでも考えてる節もありそう。
「その点、もう一人の戦士、サラっていうんだけど、彼女は現実を受け止めている。キーファ様に直接指導を受けてるだけあって見せて貰った剣術も様になってた。魔力に関してもコントロールが出来てる。物静かだけど、悪い雰囲気はない」
へぇ、海が女性を高評価してるの珍しいなぁ。
大概は上っ面しか褒めないのに。
きっといい人なんだろうな、サラさん。
「巫女であることを盾にメンバー選出したっぽい。それ以外は中央の精鋭部隊からの選出となるかな。人数的に三十名前後」
「大人数だね」
「まあね、この獣人が住む国は四分割にして治めているけど、意外と広域だし、あまり負担が掛からないように仕事を分担して回すからね。これでも最低限の人数だよ」
「それ軽く見積もってだと思うよ。二人とも女性だから、さらに同性も同行メンバーに加えられる」
陸がそう付け加える。
確かに女性二人に全員男性だったら、いざという時や、女性でしか配慮出来ないことも異性では気を配れないもんね。
「どれくらいかかりそうなの?」
ソファから身を起こした海は、テーブルのカップを取ると一口飲む。
それを戻して腕組みをすると、どうかな?と呟く。
「長くて半年、短くて三ヶ月ってところかな。まだ魔障が出始めの頃だから早く終わる筈なんだよね。真面目にやれば、だけど」
そう言った海は嘲笑してどこかを睨んだ。
「変に出し惜しみしそうな気配がするんだよね。その分もう一人に負担が掛かるのに、それを省みなさそう」
わあ、最悪……。
唖然として海の話を聞くと、表情をクルッと変えてニッコリ笑う。
「そこはアシュレイ様に頑張ってもらうよ」
眩しい微笑みなのに、どこか毒を含んだかに感じるのは気のせいかなぁー。
「それもそうだね、自分の嫁なんだから、そいつの尻拭いも率先してやって欲しいものだね」
陸も毒を吐いてるー。
「なんにしろ、腹黒神の言う通り巫女達と一緒に討伐に行くことは決定だね」
「たぶん私も行くことになるだろうから、茉白には寂しい思いさせるかも」
あっけらかんと陸が重大なことを言った。
「え!陸も!?」
こくりと陸は頷く。
「女性の戦闘員はそんなに多くなくて、非戦闘員は事務職みたいなもんだからある程度数がいるんだけどね。たぶん、女性の中で私って上級者だから、決定だろなって」
た、確かに数十万の鎌鼬を出す魔法陣を出す位だから、かなりの実力者だよね。
海曰く、大技が多いらしいけど、コントロールはピカイチらしい。
それは選抜されるかも。
「そうなんだね……。ちょっと寂しいけど、二人とも無事に帰ってきてね」
しんみりしてしまい、俯いてしまうと横からがばりっと陸に抱擁されてしまう。
「んー茉白可愛い!大丈夫、海も私もちゃんと帰ってくるから」
「そうそう、どこかの誰かがヘマしない限り帰ってこられるから」
あ、ディスってる。
そう言えば……。
「ねえ、海。これって結局何かのラノベの世界なの?」
お菓子を摘まみながら、私達二人を見ていた海がん?と傾げる。
何かを探るように空中を見ていた海は肩を竦める。
「あー、なんかもともとは、運命のツガイのストーリーらしかったんだけど、例の巫女さんのせいで、逆ハーぽくなっちゃってるって」
ん?誰と会話してた??
思わず周囲を見渡すが私達以外いない。
え?ま、まさか……。
「海、いま、神様と話してたの?」
あわあわしながら、何もない空間を指してしまったが、海は何てことないように頷いた。
「うん。この神、気まぐれだから応えてくれるか微妙だったけど。この世界を小説に書いてた人が、どうやら還り人だったらしくて、記憶が想像力と絡まって作り上げたものらしいよ」
「え?でも最近は還り人が私達三人以外に数十年?数百年はいなかったって聞いたけど?」
「あー、時系列はランダムみたい。ほら、本当ならあの二人は数十年か百年後に来る還り人だったでしょ?たぶん同じ時代の人でも、現れる年は選べないみたいだしね」
「じゃあ、もしかしてアシュレイ様をツガイと感じてるのは未来の南方公爵家の子供達と繋がってたりして?」
「お、茉白、それいい線かもよ?魔力は家系的に受け継ぐものだから、本来のツガイの祖先とも似ていても間違いじゃないし」
指をパチッと鳴らして陸はそう言う。
「まあ、それも一理あるかな。本能的に感じて、本当のツガイではなく、同じ気配を持っているアシュレイ様に惹かれたのかもね」
「ああ、それはあり得る。だからあのアバズレはツガイに留まらず、秋波を掛けまくってるのか」
わあ、陸の巫女さん批判がスゴい。
アバズレって……。小悪魔くらいじゃない?今のところ。
ちょっと宜しくない小悪魔なんだろうけどね。
「そもそも、獣人世界は一夫一妻が基本。鳥族には一妻多夫の種族もいるけど、稀だよ。それも同族でしか伴侶となり得ないしね」
は?いるの?逆ハーレムの家族。
ま、まあ、でも同族しかツガイにならないなら、カリンさんとは違うよね?あの人の場合多情そうだから……。
だったら、やっぱり本来のツガイって私だったのかも。
唸って腕組みしながら首を捻っていると、また海がこちらをじっと見ていた。
「?」
気づいて見つめ返すと、ニッコリ笑われる。
「取りあえず、魔障討伐のメンバー選出の通知がこの数日の間に届くと思うよ。パワーバランスが崩れたものにならないようにキーファ様とカイルア様には頼んどいたけどね」
いやあ、ちゃっかりしてるわ、海。
陸にぎゅうぎゅうと抱きしめられながら、その日は三人で仲良くまた一緒に寝ることになったのだった。
それから数日後、ビックリお客様が来襲した。
これが冒頭に戻るんだけどね。
キーファさんとカイルアさん、その他数名が昼過ぎに突然現れ、応対に出ていた執事さんはビックリ。
慌ててガルレイ様に連絡を取り、話があるのが海と私の二人にだったため、対応を任されてしまった。
なんとその中に戦士であるサラさんも同行していたので更にビックリ。
始めは近況報告でそのうち新たな還り人であるカリンさんとサラさんの話に。
近況はだいたい海が予想していたように、逆ハー状態の戦力だったため、何人かは間引いたそう。
顔面偏差値で選んでいるのもあり、案の定キーファさんとカイルアさんの二人で選出し直したそうだ。
バランスが悪すぎたのと、一切女性を入れていなかったこと、中央に残る戦力が弱くなりすぎるのは駄目だとやり直し、選出者は本日付で正式通知されるそうだ。
サラさんも色々と常識的なことを言っていたのに聞き入れてくれなかったそうだ。
その言い合いの中で、【ヒロイン】やら【攻略対象】やらを連発したため、サラさんからしてみれば知らない事だったらしく混乱したそうだ。
やはり彼女はラノベの世界という認識が強いみたい。
せっかく知らない異世界で同郷の友人が出来たと喜んでいた矢先に、訳の分からないことを言われたら、そりゃ困るわね。
あと、普通にいろんな男性に秋波を送る彼女に耐えられなくなって、もう一人の還り人にどうしても会いたいと懇願され、こちらに来たそうだ。
キーファさんとカイルアさんが海と話し合っている間中、サラさんからずーっとこちらに視線を向けられていた。
そして何故かキラキラとした目で見られて大変痛かった理由がようやく分かりました。
そんな理由からの友達申請。
ぷるぷる震えるサラさん、たぶん年齢的に前の世界では同年代だったのかも?という節もちらほら。
あと、キーファさん達からちょっと距離が離れていたのと、海を見て赤面していたのを見るに喪女だった可能性が……。
いや、こんなに必死になるほど友達に餓えてるなんて思わないよ。
それか、よほどカリンさんとは馬が合わないんだろうね。
ははは……。と苦笑してしまったが、もちろん私は拒否する理由もないので彼女の手を握り返した。
女性にしてはがっしりとした手はとても温かく、握り返す手は力を入れないように配慮してくれているようだった。
「よろしくお願いします。サラさん」
にっこりと笑って挨拶をすると、手は握ったままぷるぷる震え、もう片方の手で口元を覆った。
「と、尊い……!」
ん?なんかちょっと不穏な単語が。
「そんなに緊張しないでください。私はルティアと言います。こちらでの年は十六歳になりました。向こうでは三十歳越えてましたけどね」
うふふ、と笑って話すと、私の元年齢を聞いてキーファさんとカイルアさんが驚いている。
今の身体年齢は獣人あるあるだったようで、今日対面した時に特に驚いてる様子はなかった。
そしたら、握手していた手を両手でガシッと掴まれ、前のめりで顔を紅潮させて話し出した。
あまりの勢いに思わず体を後ろに引いてしまう。
「わ、私も前の世界では三十過ぎてました!今はこちらの世界では十九歳です。会社の帰りに木につまづいたらこちらの世界に来ていたんです!」
「わあ、私と同じですね」
「そ、そうなんですね!嬉しいです!理由が一緒で!」
「そうですか」
「一緒に来たカリンさんとは見た目はお互い若くても、中身が彼女よりオーバーしてたので、会話が落ちついて出来なくて、相槌しか打てなかったんです。途中からはアシュレイ様ばかりと話していたから、私どうしていいか分からなくて。周囲の皆さんは優しかったのですが、新しい情報が視界からも聴覚からも大量に入って落ち着かなかったんです。でも神殿で話を聞いたらお役目があるそうで、私なりに前の世界に帰れないなら出来る事を頑張ろうと思って。戦士、という者なら剣術を極めなきゃいけないのかなと、キーファ様にお願いしてご指導してもらっているんです」
よっぽど周囲と話せなかったのか、矢継ぎ早に話されてパチパチ瞬きしながら彼女の話を聞く。
連れてきたキーファさん達もこんな彼女は意外だったらしく驚いてはいるが、どこか安堵しているように思う。
海は隣でびっくりしていたみたいだけど、仕方なさそうに苦笑していた。
「でも、やっぱりカリンさんとは話が合わなくて、もう一人還り人が今いるって聞いたので、どうしても会って友達になって欲しかったんです」
「私がカリンさんみたいだとは思わなかったんですか?」
それになに言ってるの?という感じで傾げた彼女は否定するように首を横に振った。
「ちゃんとキーファ様とカイルア様から情報をお聞きしました。だから安心してこちらに来ることが出来ました。お会いして想像以上に美少女でびっくりしましたけど」
ははは、と照れくさそうに笑う彼女も十分可愛らしいと思うけど。
「だから友達になってくれて、本当に嬉しいです!ありがとうございます!」
「こちらこそ、同じ還り人同士、仲良くしましょう?だから敬語もなし、名前も呼び捨てでいいよ?」
それに感激したように目を潤ませると、首が取れるのではないかというくらい上下に振られて頷かれた。
どれだけ餓えてたの、ホント……。
あまりにサラさんが興奮しすぎて心配になり、今日は来た人達に一泊して貰うこととなり、明日もう一度これからの事やその他もろもろを話して貰うことになった。
もちろんその日は、陸と三人で女子会となり、夜は賑やかに更けていったのだった。




