表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔力の均衡  作者: 酒酔
7/34

偽晶の幻都

「魔晶石一つで夢が叶うはずだった——しかし、世界はいつも代償を求める。」

宝石交易の街ルミナスでは、本物の魔晶石が高騰し、庶民が手を出せない状況が続いていた。

そんな中、巧みな職人Gが「ニセモノの魔石」を市場に持ち込んだ。

見た目は本物と全く同じ輝きを持ち、魔力を少しだけ放出するが、実際は安価なガラスと微量の魔力染料で作られた偽物だった。

「本物の半額で、同じように小さな魔法が使える。誰も気づかない」

ニセモノは瞬く間に広がった。

街の職人たちはこれで安く魔導具を作り、商人は「高品質の魔晶石」と偽って高く売り、貴族たちは見栄を張って大量に購入した。

ルミナスはかつてない活気を取り戻した。街全体が魔法の光で輝き、誰もが手軽に便利な魔導生活を送れるようになった。人々は「これで魔晶石の時代は終わった」と喜んだ。

Gはさらに改良を重ね、「超高性能ニセモノ魔石」を作った。

本物より強く魔力を放出し、しかも長持ちするように見せかけたものだ。価格は本物並みだが、利益率は極めて高かった。

「これでルミナスは、魔法の楽園になる」

街はさらに繁栄した。家々の照明は明るく、道具は効率的に動き、魔法の祭りが毎夜のように開かれた。

しかし、数ヶ月後、異変が起きた。

ニセモノ魔石の魔力は「本物のように見えるだけ」で、実際は不安定だった。

最初は小さな誤作動——照明がチラつく、道具が勝手に止まる。

やがて蓄積された偽りの魔力が干渉し合い、街中のニセモノ魔石が一斉に共鳴を始めた。

偽りの魔力が暴走し、本物の魔晶石さえ巻き込んで、街全体が歪んだ光に包まれた。

建物が浮かび上がり、道具が暴れ、貴族の豪邸は偽りの輝きの中で崩れ落ちた。

Gは最後に、自分の工房に残っていたニセモノ魔石の小さな注意書き(彼自身が冗談で刻んだもの)を読んだ。

そこにはこう記されていた。

「本物そっくりに作ることはできる。しかし、ニセモノは本物の『均衡』を模倣できない。偽りが多すぎれば、世界は本物の代償をニセモノに求める」

ルミナスは偽りの光に飲み込まれた廃墟となった。

今ではその街は「偽晶の幻都」と呼ばれ、本物の魔晶石さえも忌み嫌われるようになった。

「魔力の均衡は、決して保たれなかった。人間がそれを試すたび、世界は静かに、しかし確実に代償を回収した。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ