幼女王の花都(9)
「魔晶石一つで夢が叶うはずだった——しかし、世界はいつも代償を求める。」
幻惑の花都エンヴィリアの玉座の間では、侍女たちが毎日リリアーナの世話をしていた。
侍女長シルフィーナは、幼女となった女王を誰よりも近くで可愛がっていた。
頭を撫で、頰をすり寄せ、お風呂では一人で体を洗い、食事では「あーん」と口に運び、夜は抱っこして寝かしつけた。
他の侍女たちは、それを静かに見ていた。
若い侍女のミリアは、朝の着替えの準備をしながら心の中で思った。
「シルフィーナ様ばかり……。
私も女王様の小さな手を握りたい。あの銀色の髪を梳きたい。あの柔らかい頰に触れたいのに。」
中堅の侍女のエレナは、食事の準備をしながら唇を噛んだ。
「またシルフィーナ様がスプーンを運んでいる。
女王様がこぼしたスープを拭くのも、いつも彼女。
私だって、女王様の『おいしい』という幼い声を、もっと近くで聞きたいのに。」
一番新しく入った侍女のルナは、夜の入浴準備をしながら目を細めた。
「シルフィーナ様は毎日、女王様をおんぶして浴室まで運んでいる。
あの小さな体を抱きしめられるのは、シルフィーナ様だけ。
私も……一度だけでいいから、女王様の寝息をすぐそばで聞きたい。」
ある日、リリアーナが玉座の上で小さな声で言った。
「今日はシルフィーナ以外が私の髪を梳け。」
その瞬間、三人の侍女の目が一瞬輝いた。
しかしシルフィーナは優しく微笑みながら、リリアーナの頭を軽く抱き寄せた。
「女王様、今日は特別に私がやらせていただきますわ。
他の者では、女王様の髪を傷つけてしまうかもしれません。」
ミリアは拳を握りしめた。
エレナは視線を落とした。
ルナは唇を軽く噛んだ。
その夜、三人は控えの間でひそひそと話した。
ミリア「……シルフィーナ様は毎日、女王様を独り占めしている。」
エレナ「……私たちも、女王様の可愛らしい姿をもっと近くで見たいのに。」
ルナ「……あの小さな体を、抱きしめたい。」
三人は互いに顔を見合わせ、静かに頷いた。
しかし結局、誰もシルフィーナに逆らえなかった。
なぜなら、リリアーナが幼女の姿でいる限り、シルフィーナの偏愛は誰よりも強く、誰よりも自然に見えたからだ。
リリアーナは玉座の上で、小さなため息をついた。
彼女は知っていた。
自分の幼い姿が、侍女たちの間に静かな嫉妬を生んでいることを。
今ではその花都では、シルフィーナが幼い女王を可愛がる姿を、
他の侍女たちが遠くから、複雑な表情で眺め続ける日々が続いている。
「魔力の均衡は、決して保たれなかった。人間がそれを試すたび、世界は静かに、しかし確実に代償を回収した。」




