自焼の残骸都
「魔晶石一つで夢が叶うはずだった——しかし、世界はいつも代償を求める。」
炎の荒野に浮かぶ灼熱の都「ブレイズフォージ」では、四天王の一人、灼熱公爵イグニスが軍を統べていた。
イグニスは人間界の魔晶石依存を見て、ある日、自分の炎の魔力を凝縮して「無限燃焼の炉心」を作った。それは一度起動すれば、魔王軍の兵器や魔物を永遠に燃やし続け、決して尽きることのないエネルギーを生み出す装置だった。補給の心配がなくなり、侵攻が飛躍的に加速するはずだった。
イグニスは満足した。これで私の軍団は最強になる。
炎魔族の将校たちは喜んだ。もう燃料運びの苦労はない。
下級の火蜥蜴たちは炉心の熱を浴びて元気よく動き回った。
捕らえた人間の技術者たちは、恐る恐る装置を眺めた。
炉心はすぐに都の中心に設置された。魔王軍の戦車は炎を動力に走り、飛空艇は燃え尽きることなく飛び続け、兵士たちは疲れを知らずに訓練した。ブレイズフォージは炎の活気に満ち、西方戦線で次々と勝利を重ねた。人々は「灼熱公爵の都は永遠の炎の都になった」と信じた。
しかし、数ヶ月が過ぎた。
炎魔族の将校の一人は、炉心の熱が自分の体を内側から焼き始めていることに気づいた。
火蜥蜴たちは、熱に慣れすぎて冷たい風に触れるだけで体が崩れ始めた。
イグニス自身は、玉座に座るたび、炎が制御できなくなり、自分のマントを焦がすようになった。
やがて炉心の燃焼は暴走した。都の建物が次々と自然発火し、兵士たちは自らの炎に飲み込まれ、逃げ場のない熱の渦に包まれた。勝利を重ねていた軍団は、炎の中で自滅していった。
イグニスは最後に、炉心の核に浮かんだ小さな文字を読んだ。
それは彼自身が刻んだものだった。
「無限燃焼の炉心はできる。しかし、四天王が自らそれを使えば、世界は本物の冷たさを十重に求める。偽りの炎は、頂点に近い者ほど均衡を失う。」
今ではその都は「自焼の残骸都」と呼ばれ、魔王軍ですら灰だけを残して去った。
「魔力の均衡は、決して保たれなかった。人間がそれを試すたび、世界は静かに、しかし確実に代償を回収した。」




