人形の黒曜都
「魔晶石一つで夢が叶うはずだった——しかし、世界はいつも代償を求める。」
魔王の居城がある黒曜の都「ノクティス」では、魔王が玉座に座り、毎日人間界の状況を眺めていた。
ある日、魔王は人間たちが魔晶石に頼りすぎて均衡を崩しているのを見た。
彼は静かに言った。
「ならば、私も魔晶石を使ってみよう。」
魔王は自身の体内から純粋な魔力を取り出し、巨大な黒い魔晶石を一つ作った。
それは「絶対支配の晶石」と名付けられ、触れた者の忠誠心を完全に支配し、魔王の命令に逆らえなくする力を持っていた。
四天王は満足した。これで軍の統率が完璧になる。
上級魔族たちは喜んだ。裏切りなどなくなる。
下級魔物たちは恐れながらも頭を垂れた。魔王はより強くなった。
魔王は晶石を玉座の横に置き、毎日少しずつ魔力を注ぎ続けた。
都は静かに整然となり、誰も命令に逆らわず、侵攻計画は驚くほどスムーズに進んだ。
魔王は満足げに微笑んだ。「これで人間界など、いつでも落とせる。」
しかし、数ヶ月が過ぎた。
四天王の一人は、晶石の前で自分の考えが徐々に薄れていることに気づいた。
上級魔族たちは、魔王の言葉以外に興味を持てなくなった。
下級魔物たちは命令がなければ動かなくなり、ただ玉座の前に並ぶだけになった。
やがて晶石の支配力は魔王自身にも及び始めた。
魔王は自分の意志で晶石を壊そうとしたが、手が勝手に動き、逆に晶石に魔力を注ぎ続けた。
彼は玉座に座ったまま、ただ「支配せよ」という自分の過去の言葉を繰り返すだけになった。
黒曜の都ノクティスは、絶対支配の晶石に支配されながら、静かに機能不全に陥った。
軍は動かなくなり、侵攻は止まり、都全体が玉座の周りに固まった人形のような状態になった。
魔王は最後に、黒い晶石の表面に浮かんだ小さな文字を見た。
それは彼自身が刻んだものだった。
「絶対支配の晶石はできる。しかし、魔王が自らそれを使えば、世界は本物の自由を十重に求める。偽りの支配は、頂点に立つ者ほど均衡を失う。」
今ではその都は「人形の黒曜都」と呼ばれ、誰も近づかなくなった。
「魔力の均衡は、決して保たれなかった。人間がそれを試すたび、世界は静かに、しかし確実に代償を回収した。」




