表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔力の均衡  作者: 酒酔
12/34

幻王の廃都

「魔晶石一つで夢が叶うはずだった——しかし、世界はいつも代償を求める。」

王族の保養都市ロイヤル・セレナでは、王族たちが日々、優雅な生活を送っていた。高価な魔晶石で動く噴水や、自動で音楽を奏でる庭園が当たり前だった。

ある日、王太子は古い王家専用の魔導書から「ニセモノの王権」を生み出す儀式を見つけた。それは特別な魔晶石を使い、王族の血を少しだけ混ぜることで、周囲の者に「この人物こそ真の王である」と信じ込ませる力を持つものだった。

王太子は満足した。これで臣下の忠誠がより強固になる。

王妃は微笑んだ。宮廷の争いが減るだろう。

貴族たちは競って儀式に参加し、「王太子こそ真の王だ」と口々に言った。

街の商人たちは、王太子の姿を見るだけで税を喜んで納めた。

使用人たちは、以前より深く頭を下げた。

王太子は毎日、広場に立ち、優しく語りかけた。「私はここにいる。この国を永遠に繁栄させる。」

ニセモノの王権の輝きが広がるたび、街は忠誠と喜びに包まれた。保養都市はかつてない平穏と繁栄を見せ、人々は「この街は真の王のいる楽園になった」と信じた。

しかし、数ヶ月が過ぎた。

王妃は気づき始めた。王太子の言葉が、昨日と同じものばかりだと。

貴族の一人は、儀式の後で自分の忠誠心が本物か疑い始めた。

商人たちは、王太子の命令が現実の経済と合わなくなっていることに気づいた。

使用人は、頭を下げ続けながらも、足が震えるようになった。

やがてニセモノの王権の力が干渉し合い、王太子の周囲だけが常に「忠誠の幻」に包まれるようになった。臣下たちは現実の危機を無視し、王太子の言葉だけを信じ続けた。税は上がり続け、食料は不足し、防衛は怠られた。

王太子は最後に、古い魔導書の端に書かれた小さな注意書きを読んだ。

「ニセモノの王権を与えることはできる。しかし、王族が自らそれを使えば、世界は本物の不信を三重に求める。偽りの忠誠は、王の血と重なると均衡を保てない。」

保養都市ロイヤル・セレナは、偽りの王権に導かれながら、静かに崩壊した。

今ではその街は「幻王の廃都」と呼ばれ、誰も王族の血を誇ろうとしなくなった。

「魔力の均衡は、決して保たれなかった。人間がそれを試すたび、世界は静かに、しかし確実に代償を回収した。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ