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二大魔王~魔王の護衛をしていたらいつの間にか俺も魔王として生きていくことになったので二人で世界を救うことにしました~  作者: Mini
第2章 魔王俊介視点 ガウルド国編

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魔王様達はダンジョンを攻略するようです 前編

 俊介とルーナが不在の中、魔王の城ではイリアが待機をしている。


「いいなぁ……リーサ。私も一緒に行きたかったなぁ」


 俊介からは魔王の城で待機するように言われたイリアなのだが、戦闘能力面においてリーサより優れていないから……という理由でついていけなかったのではない。

 明確な理由があったのだ。


「万に一つもないけど、もし仮にこの城が襲われたとき私の方が室内の戦闘は向いている……わかってる。わかってるけど、はぁ……な~んでこんな退屈なことをしなきゃいけないの」


 いつもの怖い表情で溜息を吐いているイリア……そんな所を目撃してしまえば他のメイド達も当然驚いてしまうわけだが……。


「イリア様……かなりショックを受けてるね」

「だねだね!なんかちょっと面白いかも」

「あ?」

「「!?」」


 二人の幼いメイドがひそひそとイリアの方を見ながら話しているのを彼女は聞き逃さなかった。

 一人の見た目はピンク色の髪をしており少し内気な性格をしている。名前はエマ。

 もう一人の見た目は水色の髪をしており少し元気のある女の子。ジュリ。

 年齢は10歳くらいの女の子……と思うかもしれないがこの城でメイドをしている列記とした人物。見た目が幼いだけで千歳以上はいっているのだとか。

 イリアは現界でルーナに作られたメイドのはずなのにこの二人はおろか、他のメイドも近づきがたいと思われている。

 ゆっくりと、イリアは二人の元に近づいて……ものすごい形相……イリアにとっては普通の表情で言った。


「あなた達二人は……シュン様の事について、どう思っていますか?」

「ど……どうって?」

「私私、あんまりその人の事知らないんだよね!」

「言っておきますが、私のご主人様ですよ」

「私達にとってのご主人様はルーナ様なので……」

「?」

「「……ッ」」


 エマとジュリがそう言うと、目元は影でよく見えなかったが口はにっこりとしており……とても不気味な表情を見て困惑。

 イリアはそのまま口を開く。


「もしかして、シュン様の事がお嫌いなのですか?」

「嫌いとか……そういうわけじゃないですよ?」

「そうだよそうだよ!だって……あの人皆に優しいでしょ?私達にも優しくしてくれたことあるもん!」


 エマはジュリの言葉に何度も頷く。

 優しい人というのは知っている。ただそれだけでどう思っているかと聞かれたら難しい所だった。

 俊介が二歳の時からルーナと一緒にいる所も知っている。

 なんなら小さい頃はエマとジュリの見た目が幼いというだけで俊介のお世話をしたことがあるくらいだ。

 だが、それだけの関係値という事だ。俊介が物心つく頃にはルーナの直属メイドのナーシャに代わってしまったというのもありすれ違ったら挨拶をするだけの関係になってしまったのだ。


「けど……小さい頃の俊介様はものすごく可愛かった……ですよ」

「そうなのそうなの!今は見る影もないけど小さい時は超~!可愛かったんだよ!」

「!」

「「!?」」


 突如……イリアの頭に電撃が襲う。

 俊介の幼少期……ジュリとエマは知っていてイリアは知らない。

 主の事に対して絶対に負けないという自信があったイリアだったのだが、その場で膝から崩れ落ち……地面を手に付けながら……


「負けた……」

「「?」」


 その光景を、ジュリとエマは首を傾げて見てイリアから何か言われると察した二人は逃げるようにその場から離れた。

 イリアはその場から離れていく二人に手を伸ばす。


「ま……待って!」


(シュン様がどんな幼少期を過ごしていたのかものすごく気になるのに……!)


 ぐぎぎと歯ぎしりをしながら敗北感に襲われるイリアであった。


————————————————————


 馬車でラビリス帝国に向かう俊介たち。

 ガウルド国から結構な距離が出来、風景ががらりと変わった。

 右を見ても左を見ても草原が広がっており……森林が生い茂っていた。

 リーサはあたりを見渡しながら言う。


「この辺に村はないのですか?」

「ありませんね。ラビリス帝国に向かう道中は一つもなかったはずです」

「昔はあったのですか?」

「そうですね。昔は今走ってるこの道付近にも小さな村が何個もあったのですが……」


 視線を落として肩を竦めながら言うエスタを見て俊介はすぐに察する。


「ラビリス帝国ですか……」

「はい。ラビリス帝国が村を買収し、国に移住するように命じたんです。これは噂なので本当かどうかは分からないんですけど……その村の人たちは今、奴隷のように働いているとか……」

「うっわ……最悪」


 眉をひくつかせながら言うリーサに俊介は風景を眺めながら口にする。


「色々と話を聞くに……ラビリス帝国はかなり大きい都市国家なようですね」

「そうですね……帝国というだけの事ですからね。」


 俊介とリーサはそう言い、エスタは頷く。

 そして眉を竦め視線を落としたままエスタは言った。


「この魔界ではラビリス帝国のような大国は結構な数があるんです。国の数も多い魔界で、広いですから私達が今こうしているうちにも他の国では戦争をしているでしょう。私達の国はその大きな国に目を点けられた小さな国。」


 エスタのいう事に俊介は何も言わなかった。

 この魔界が広いという事は知っている。

 そして今も尚様々な場所で様々なことが起きている。この護衛もそのうちの一つにしか過ぎない。

 結局はどの世界も弱肉強食。小さい国や村は大国にのまれる運命なのかもしれない。

 けれど、俊介はこう思ったのだ。


(その小さな国が抗ってるのなら、俺はそっちについちゃうかもな……この先も)


 外を眺めながら心の中で呟く俊介。

 弱い方に肩を持つ……という風な捉え方もできるが叶うならどちらの肩も持ちたくない。

 今回はイレギュラーが重なり結果的にこうなってしまっているが……


(つっても……じゃあみんな仲良くしようね……なんてことも叶わないんだろうな)


 俊介は知っている。昔にルーナの付き添いで一つの国に出向いたことがあったから。

 名前は忘れてしまった。だけど両国が話し合っても意味がない……戦争しかないってなった時、ルーナは「めんどくさいから俺と戦って負けたら争うな。欲しい資源があれば俺に言いに来い」といってその場を収めていた。

 


 俺にそれぐらいの力があれば可能だったのだろうが、新参者の魔王じゃ舐められるのがおち。

 それもそれでいいのかもしれない。舐められて戦闘に発展して魔力質量でごり押せばいいのかもしれない。しかしそれでは認められるといううちに入ってこない。


(七龍賢人や他の国王たちに今の段階で勝てるとは到底思えないしな)


 俊介はジト目になりながら自己分析をして非力さに絶望しながら溜息を吐く。

 リーサは不思議そうに小首をかしげて俊介の方を見ているだけだったが、俊介は視線を外からエスタの方へと変えて口を開いた。


「それを止めるために、俺達は今出向いていますからね」

「その通りでございます」

「……はい!」


 そう。俊介はそのために今こうしてラビリス帝国に向かっている。

 大国だろうが小国だろうが関係ない。今こうして関わっている。理由はそれだけで十分なんだ。

 求められたから手を貸した。そして俊介もその国を救いたいと思った。

 たとえそれが大国だろうが同じことをしていただろう。


(シュン様は小国に手を貸す……とか思っているのでしょうが、あなたは誰にでも手を差し伸べる優しい魔王様ですよ)


 リーサは俊介の方に視線を向けて、敬愛の眼差しを送る。


「な、なんだよ?」

「いえなんでも!今日のお顔が美しいなって思っていただけですよ?」

「「……ッ!?」」


 俊介とエスタはリーサの言葉に驚く。俊介は溜息を吐きながらジト目を向けるのだが、エスタは膝の上にのせている手をもじもじとさせ軽く頬を赤らめながらリーサに問う。


「その、リーサさんは……俊介様のメイドなんですよね?」

「はい!そうですよ?直属のメイドとしてやらせていただいています!」

「お前マジ余計なこと言うなよ?」


 「ふふん」と鼻を鳴らし上機嫌に言うリーサを見てエスタは視線を軽く逸らしながら言う。


「そう……ですか。その、てっきり……恋人関係なのかと……」

「はい!その通りでござ————」

「やめい」

「アダッ……シュン様がわたくしのことをお叩きに!なんというご褒美!」

「お前もうマジで黙れ」

「……ハハハ」


 二人のやり取りにエスタは苦笑する。

 何故か、そのやり取りを直視できなかった。

 というより多分……直視したくなかったんだと思う。

 理由は分からない。

 でもなんか、胸の奥がざわついた。


「エスタさん!こいつほんと頭のねじが飛んでるだけなので!ほんと気にしないでください!まじで!」

「ハハハ……気を遣わなくても大丈夫ですよ」

「信じてねぇなこりゃ」


 せまりくるリーサの顔面を押さえつけながらもう片方の手で額に手を当てる。

 リーサはそんなのお構いなしにかまってちゃんを発動。


「もっと叩いてくれてもいいんですよ?」

「黙れ」

「罵ってくれるのも来ますねぇ!」

「はぁ……お前なぁ……エスタさんが見てるんだぞ?」

「わたくしは誰が見てても同じことしますよ?」

「お前マジでするなよ?ラビリス帝国についたら絶対にするなよ?」


 俊介は今までにないほどの威圧をリーサに見せ、さすがに驚いてしまったのか高速で頷くリーサ。


(あぁ……そんな顔もいい!いいですねシュン様!)


 俊介はリーサの感情を読み取っていたがあえて反応せず再度外の方へと視線を向けた。

 エスタは一連のやりとりを聞いて自分の臆病さに少しだけ、失望した。


(私もリーサさんみたいに自我を出せばいいのかな……いやさすがに無理!いくら自分をさらけ出すって決めてもここまでの事は絶対にできない!)


 エスタは首を振りながらあり得ないと心の中で思う。

 大丈夫、安心してほしい。誰もがリーサみたいに積極的なわけじゃない。

 エスタはエスタの好きなようにすればいいと思うよ。

 リーサをお手本にしたら絶対にダメ!



 山を一つ越えたところで兵士と馬の疲労が見え、俊介は提案した。


「いい時間ですし、そろそろお昼休憩にしましょうか」

「すみません俊介様……助かります」

「まさかこんなに疲れるとは思わなかったです」

「仕方ないですよ。いつもは立ち仕事ですが今は座っての仕事……いつもとは違う筋肉を使いますからね」


 兵士が腰を軽くたたきながら嘆き、俊介は微笑しながら返す。

 リーサとエスタも馬車から降り、見晴らしのいい場所に移動してご飯の準備をする。


「リーサさんは持ってきたご飯を並べてください。私はテーブルと机を用意しますから」

「わかりました……ですが、その肝心な机と椅子はどこに?」


 首を傾げながら聞いてくるリーサにエスタは笑顔で答えながら人差し指を出す。


「魔術で机と椅子を作ります!」

「なるほど!」


 人差し指で丸を描き椅子が顕現。そして四角を描き机を顕現させた。

 俊介はその魔術に興味を持ったのかエスタに聞いていた。


「その魔術……一体どうやってやったんですか!」

「えっと……これは操魔術の上級でできるものですけど……」

「すごいですね!確かにこれなら荷物も少なくてすむ!」


 馬車に詰め込んだ荷物は必要最低限……俊介はこれで足りるのかと内心不安だった。だが、こういう日常生活にも魔術を持ち込めば色々と削減できたりするのかと感心した。


「そういえば、エスタさんの得意魔術ってなんですか?」

「私の得意魔術は……そうですね。今の操魔術と聖魔術……いわゆる回復魔術が少々できるくらいですかね。その私、魔術はあまり得意な方ではないので……」

「いやいや十分すごいですよ!この操魔術もそんな発想があったんだって感心してしまったんですもん!」

「そ、そうですか?」


 俊介はいつもよりテンション高めでいうのでエスタは少し困惑しながらも頬を赤らめる。


(ち、近い!)


 そう思いながらも嬉しいという気持ちが込み上げてくる。

 そしてその後ろでは二人の兵士が体をほぐしている音が聞こえて少し萎えるエスタ。


(なるほどなぁ……確かにルーナも操魔術を極めたかったら日常でも使えって言ってた気がする……)


 言われたときはあまり理解が出来なかったが、エスタのこの使い方を見てようやく理解した俊介。慣れていけば自分の服や身の回りのものも魔術で生成することだってできる。

 関心しながら俊介たちは昼ご飯を食べ、少し休憩してから出発した。



 特にこれといって何もなく、その日は進める所まで進んで休んだ。

 そして次の日になり……俊介たちは再出発していた。

 しばらくすると、先で人が詰まっているのを確認する。


「なんだ?あれ」

「なんでしょう……少し行ってみましょうか」


 俊介とリーサ、エスタは馬車から降りて人盛りが出来ている場所へと向かった。


「おい!進めよ!こっちは急いでるんだ!」

「前が詰まっていけねぇんだよ!こっちだって急いでんだ!」


 馬車同士がぶつかり、馬が逃げていく始末。かなりやばそうな状況だった。

 道にいるのは全員商人や外交……この道は様々な国に向かうために使われる道なため使用する人も多い。

 そんな人たちが詰まっているという始末。

 エスタは一人の商人に話しかけた。


「これはいったい……どうなってるんですか?」

「さぁな……前で詰まってるから後ろの俺らじゃ何も確認できねぇ」

「シュン様……」

「ああ……前に行ってみるぞ」


 原因になっているであろう場所に向かい、俊介たちは驚く。


「……これは!?」

「ダンジョン……?」

「……のようですね」


 前方には禍々しいオーラを放っている門が聳え立っており、商人や外交の人たちは怒りをあらわにしながら声を上げていた。


「おい!どうなってるんだ!前までこんな所にダンジョンの入り口なんてなかったろ!」

「これって、クリアしないと前に進めない……とかなんですかね?」

「ああおそらくはな……」

「クソ!昨日までこんなものはなかったのに!」

「……ッ」


 商人たちの言葉に俊介は嫌な予感が当たったのではないかと悟った。


(こんなタイミングよくダンジョンが出現するって事は、ラビリス帝国の差し金か?でもなんのために?)


 どれだけ考えても分からないものは仕方ない。

 俊介はラビリス帝国に繋がるダンジョンで何かしらのアクションがあると思っていた。

 それはリーサも同じ考えを持っており、二人は顔を合わせて頷く。


「エスタさん……申し訳ないですけど、待ってる兵士さん達を連れてきてくれますか?」

「もしかして……このダンジョンに入るのですか!?」

「はい。おそらくこのダンジョンは俺達に向けたものかと……」

「わたくしたちがこのダンジョンに入ってさえしまえば門が消えるはずです」

「……!?確かに……そうですね。わかりました。すぐに連れてきます」


 俊介の指示に従いエスタはすぐに兵士たちを連れてくる。

 その隙に操魔術で簡易的なマスクを生成し着用して前に出る。


(ローブも来てるし顔も隠れた……これで一応身バレの可能性はなくなったな)


「おい、お前らはいったい誰だよ」

「このダンジョンに用があるものです」

「あぁ!?おめぇみたいなよく知らねぇ奴がこんな禍々しいオーラを放ってるダンジョンを攻略できるってのかぁ?」


 高圧的な態度を取りながら近づいてくる商人。リーサは睨みつけるようにするが俊介は普通に話す。


「あなた達はこの先に行きたい。誰かがこのダンジョンに入ればこの門は消えて通れる。誰がこの中に入ってもあなたに関係はありませんよね?」

「てめっ……言わせておけば!」


 拳を振りかざそうとする商人に俊介は重力魔術をかけ動きを封じこむ。

 そしてエスタが兵士を連れてくるのを見て門の前へと向かう。

 周りにいる商人たちはエスタの姿を見て驚愕する。


「なぁ……あれってガウルド国の姫なんじゃないのか?」

「エスタ様か!?どうしてこんなやつと……」


 エスタはその場で会釈しながら門に行き、とどまっていても仕方がないのでダンジョンの中へと入っていった。

 すると、道の真ん中に出ていたダンジョンは消え……商人たちはその後何事もなかったかのようにその先へと進んだ。



 ダンジョンの中に到着した俊介御一行。

 つけていたマスクを取り外し、あたりを見渡す。


「不気味なダンジョンだな……こんなのばっかりなのか?ダンジョンって……」

「様々なダンジョンがありますが……これは確かに不気味としか言いようがないですね」


 禍々しいオーラを放っていたのも納得ができるダンジョン。

 俊介はダンジョンが初めてなのだが、ダンジョンというのは突如として現れるタイプと決まった場所にあるタイプの二種類が存在する。前者は難易度がそう難しくないもので後者は難しいダンジョンも存在する。

 突発的なダンジョンは中に入れば消えるらしいのだが……今回ばかりはタイミングも相まってかなり怪しいものだと俊介たちは感じ取っていた。


「ラビリス帝国が関わっていない……とは言い切れないよな」

「はい。突発的なダンジョンでこんなのは聞いたことがありません」

「意図的にあの場所に出現させた……と考えるのが妥当でしょうね」

「だよなぁ……さて、どうするか」


 俊介は薄々と気づいていた。

 この禍々しいオーラは以前山で戦った魔物のオーラにそっくりだという事に。

 おそらくあいつと同等かそれ以上の魔物がうじゃうじゃといる。

 と、そこまで考えて俊介はエスタに質問した。


「エスタさん……この突発的なダンジョンって、出口は決まっているものなのですか?」

「い……いえ、出口は確か……ランダムだったはず……まさか!?」

「はい。もしラビリス帝国のものがやっているとすれば出口はおそらくラビリス帝国付近のはずです」


 自然とそう眼が得るのが妥当だろう。

 いうならばこのダンジョンは試験に近い。

 俺達がラビリス帝国に入国するに相応しいかの試験。

 ラビリス帝国の近くにあるダンジョンは表向きのダンジョン……これは俺達専用の……特別ダンジョンだという事だ。



 瞬間、二人の兵士が慌てた様子で声を上げる。


「あ……あれを見てくれ!」

「なんだよ……あれは!」


 俊介とリーサ、エスタがその言葉に振り向く。

 すると、ゴブリンと狼の大群がこちらへと接近してきていた。


「とんでもない量ですね……どうしますか?シュン様……」

「これぐらいの強さらな俺一人で十分だ」


 俊介はそう言ってリーサとエスタの前に立ち、地面から雷魔術で接近してくる魔物たちに攻撃をしていた。

 ほとんどの魔物たちは今の攻撃でダウンしていたのだが、後ろにいる狼やゴブリン達は雷魔術にかかった様子なくそのまま接近してきていた。


「俊介様!」

「わかってます!リーサ、エスタの事は任せたぞ」

「はい。お任せください」


(やはりそうだ。あの山での一件もラビリス帝国が放った魔物……あいつらの中にも術が雷魔術が効かなかった魔物もいたな)


 考えれば考えるほどラビリス帝国仕業だと理解し、俊介はだんだん怒りが込み上げてくる。



 もしかすると独立国家にならざるを得なかった原因も……そいつらの仕業なんじゃねぇのか?

 ちまちまとこざかしい野郎だ。

 

 俊介は今までにないほどの魔力を練り上げ……質量を最大限あげた状態で炎魔術を放った。

 瞬間、走ってきていた魔物たちは塵となり消えていった。

 その様子を見ていた兵士二人とエスタは驚く。


「魔術が効かなかったんじゃ……」

「あの魔物たちはおそらく効かないのではなく耐性が他の魔物より高かっただけです。シュン様の高質量に耐えきれなかったのでしょう」

「……す、すげぇ……」

「俺達が出る幕なんてないんじゃないのか?」


 狼とゴブリンの魔物を倒し、次に進もうとするのだが……敵は奥から次々と湧いて出てきていた。

 鬼人、鳥物、魚人族。

 迫りくる敵全員に言語能力はなく、戦闘能力だけが異常に高かった。


(まじかよ……さすがに俺でのこの量の敵を一人で相手にするのはかなり厳しいぞ)


 どうする……どうするのが正解なんだ。

 このダンジョンが何階層なのかもわからない。

 俊介が頭の中で色々と思考を張り巡らせているとリーサが真剣な表情で話し出していた。


「シュン様……わたくしたちをもっと頼ってください。一人で背負い込もうとしないでください」

「そうですよ!私も……その、お役に立てるかはわかりませんけど……何か手伝えることがあれば!」

「俊介様……いや、俊介殿……我々も戦いますよ」

「守られっぱなしじゃ兵士の意味がないですからね!」

「……みんな……」


 そうだ。全員が覚悟をもってここに立っているのは知っているだろう。一人で背負い込む必要なんてない。

 俺は俊介で、ルーナじゃない。俺は俺のやり方で戦えばいい。

 そう思考したとき……頭の中がものすごくクリアになった。


「カルロスさんとラージスさんは俺達が取りこぼした敵を葬ってください!」

「わかりましたぜ!俊介の旦那!」

「俺達の名前を覚えてくれてたんですね……俊介殿」

「ハハハ……エスタはカルロスさんとラージスさんに聖魔術で常にヒールを回してください!」

「わかりました!」

「リーサ……お前は前線で俺と暴れてもらうぞ」

「わたくしがシュン様と一緒に戦う……この日をどれだけ待ち望んだことか!」


 赤い瞳がメラメラと闘志で燃え、魔力を体全体に纏うリーサ。

 その様子を見て俊介は少し恐怖するが、切り替えて電光石火を身に纏う。

 そして、各々が俊介の指示のもと……戦い始める。


(思えば……リーサの戦いをあんまりちゃんと見てこなかったな)


 今までは俊介のサポートという形で戦っていたためこういう戦闘は初めて見る。

 リーサはというもの、俊介の期待に応えるよう……一目散に走り出し鬼人の方へと突っ込んでいった。


「思う存分かかってきてください」


 リーサがそう発すると鬼人たちはリーサの方へとものすごい勢いで向かう。

 後方に立つ鬼人は構えて魔術を発動……接近してきている鬼人は斧や剣を振りかざす。

 リーサは華麗によけ、飛んでくる魔術をもよける。


(うまいな……避けた魔術が前衛の鬼人に当たるように動いている……)


 そして接近してくる鬼人の攻撃がリーサに当たろうとした直後……リーサの動きが一気に早くなり瞬きをする暇なく鬼人の首がもげていた。

 返り血がリーサの白い髪に付着し、もうどちらが鬼かわからない様子。

 鋭い眼孔を向けるリーサ。そして鬼人たちはリーサの動きに恐怖していた。


「わたくしは今気分がいいんです……がっかりさせないでくださいね」


 リーサはそう言うと、再度走り出し前衛の鬼人たちをことごとく殺しに回っていた。

 俊介はリーサの戦闘を肌で感じながら魚人族と鳥物と戦闘をしていた。


(リーサの方は大丈夫そうだな……エスタさんの方も少し向かわせてしまったけどあの二人がどうにかしてくれるはず)


 俊介はリーサの戦闘にとにかく驚いていた。

 近接戦闘はナーシャに匹敵するほど……そこにプラスして魔術の使用もできる。

 今リーサは魔術を使わず単純なフィジカルだけで鬼人たちを圧倒している。その事実に感心半分恐怖もしていた。


(ただの変態じゃないってのが怖いんだよなぁ……変に逆らうのやめとこかな)


 俊介は魚人族から放たれた水魔術を炎魔術で受け流しながらそう心の中で呟く。


(が……結構こっちも厄介なんだよな。魚人族の攻撃を受け流したと思えば頭上から鳥物がばかすか攻撃を仕掛けてくる)


 鳥物……鳥の羽と足を持ちながらも肉体は人間と変わらない生物。

 羽を武器代わりにすることも可能。

 一枚でかなり鋭い剣と同等の性能、そこに加えて魔術も使用してくる。

 かといって鳥物に気を取られていたら魚人族が地面に水魔術で水を張って泳ぎながら攻撃を仕掛けてくる。


(さぁ……どうするか)


 この魔物たちもバカではない。俊介の体に纏っている雷魔術を警戒してむやみには突っ込んでこない。


「まぁ変に来ないってんならそっちの方がやりやすいけど」


 俊介は頭上に飛んでいる鳥物の方へと接近する。

 魚人族たちはその隙に水を張り始めていた。

 鳥物は俊介の動き出しに応じて羽を抜き剣のようにして両手に装備をする。

 俊介は重力魔術で地面に転がっている石を浮かべてそれらを鳥物たちに向けて放つ。魔力で強化されている石と羽の剣がぶつかり金属音が鳴り響く。四体いる鳥物のうち一人に接近して雷魔術を放った。

 鳥物はその攻撃が放たれた直後、自身を覆うように羽を一点にに集中させて守る。


(なるほど……羽を自由自在に操ることが出来るってわけね)


 その隙に、他三体の鳥物が俊介を囲うように接近する。

 一体は羽を勢いよく飛ばし、一体は羽の剣で接近。最後の一体は魔術を発動しようとしていた。

 俊介は笑みを浮かべ、風魔術で羽を跳ね返しもう片方の手で雷魔術を使用する。

 風魔術と雷魔術の合術……風雷暴(サイクロン)で空中に飛んでいた鳥物たちを魚人族たちが張っていた水に落とす。

 それと同時に俊介もその水の方へと接近し、触れながら水魔術を唱え……その水を凍らせ鳥物と魚人族を一気に片づけた。


「ま、こんなもんだろ」


 俊介は振り返り、他の人たちの方へと向かおうとした直後……バキバキと音を鳴らしながら氷を打ち破ってきた魚人族が俊介を襲う。


「やっぱ、魚人族はそう簡単に今の攻撃じゃ死なないか……」


 頭を掻きながら、俊介は再度雷を身に纏い一瞬の隙に魚人族の背後に回った。

 俊介が魚人族の間に通っただけ……他のものはそう見えた。

 が、魚人族の体は無残にも……体が丸焦げになり、電気をバリバリとさせながらその場で倒れこみ……その後起き上がることはなかった。


「電光石火に殺傷力を上げるために肉体じゃなく電気に魔力を多く纏わせる……って、聞いてねぇか」


 塵となって消えていく魔物を見ながら、俊介はエスタの方へと向かった。

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