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二大魔王~魔王の護衛をしてたらいつの間にか俺も魔王として生きていくことになったので二人で世界を救うことにしました~  作者: Mini
第2章 魔王俊介視点 ガウルド国編

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20/23

王級魔術

 ガルシアと俊介は同時に魔術を発動しながら走り出していた。


(さて……どうするか。こっちは質量だけで押し切ろうと思えばいけるけど、万が一にも備えて全開で戦うのは避けたいところ)


 俊介は冷汗をたらしながら自分と相手の力量を正確に分析しようと後手に回る選択を取っていた。

 そして、ガルシアは俊介の魔力質量を図ろうと、自分の周りに氷魔術を展開させ……つららを俊介に飛ばす。


(魔王様のお手並み拝見……こっちも様子見だけど、場合によっちゃ本気出さないといけない展開になりうる。ったく、この禍々しい魔力質量見るだけで鳥肌立つわまじで……けど)


 氷魔術を発動した瞬間、ガルシアはにやりと笑みを浮かべた。

 俊介は炎魔術で相殺し、その氷が解けて地面へと水に代わり零れ落ちる。


(魔力の質量で負けていても……総量ではこちらが上!)


 ガルシアはそう考え、先程の倍の両の氷魔術を俊介に投げ飛ばし……俊介は上級魔術である『電光石火』ですべてよけ、ガルシアに接近し拳を振りかざしながら……


「この速さに、お前はついてこれるのか?」


 俊介がそう発した直後、ガルシアは後方へと下がる。


(地面に氷だと?なるほど……地面を凍らせて距離を取る作戦か。近接戦闘を避けたくてしょうがないようだな)


「えらい早いが、所詮は魔術。空間に散らばる魔力の動きを見たら嫌でも体が反応するんだよ」


 ガルシアは余裕な笑みを浮かべながらそう言うが、俊介はその場でぼったちながら、風魔術で後方に下がったガルシアを背中から押すような形で発動した。

 俊介は電光石火を発動したまま、風魔術で迫りくるガルシアに対し魔術を発動しようとするのだが————


 直後、ガルシアは氷魔術で剣を作り俊介を突き刺そうとしていた。


(かなり焦ったが、近接戦闘が苦手と思わせておいて~なんてのは定石。問題はここからだ)


 ガルシアは、この攻撃をが防がれてしまうとわかっている。

 のでこの攻撃は囮として、本命は先程使用した凍ってる地面……そこから氷を発動すれば俊介を突き刺せる。

 これが、ガルシアの狙い。


 だったのだが————


「は!?」

「っぶねぇ……」


 次の瞬間……俊介は頭上へと飛んでいた。

 当然、それを見たガルシアは目を丸くしながら驚く。



 空気中の魔力の動きは見えなかった。

 いったい何が、何が起こったというのだ。

 もともと風魔術を体に纏っていた?

 いや、それはあり得ない。

 今も体に纏っているのは雷だけ……


 そこで、ガルシアは気づく。


「そのローブか」

「そうだ。お前を風魔術でこっちに飛ばした時……直前で魔術の気配がしたんだ。そんで俺は魔力をローブに送り俺は今こうしてここにいるってわけだ。」

「あり得ねぇだろ……なんだそりゃ」


(さっきもそうだった。俺の氷魔術をローブが守ったかと思ったら同じ氷魔術を威力も速さも上げた状態で出してきていた。何か仕掛けがあると思ったが……)


 ガルシアは両手を軽く上げ、にやりと笑みを浮かべながら口にする。


「魔王様とも会おうお方がサポート相手もを使うんですかぁ?魔界も落ちたものだな」

「そうだな。だがすまないが俺は魔術を学んで一か月経つか経たないかくらいなんだ。大目に見てやってくれ」


 俊介の返しにガルシアは内心で驚いていた。

 もし、ここで表情を見せてしまえば不利に働いてしまう。

 が、それを誤魔化すように右手を強く握る。


(一か月でそれかよ。強すぎんだろ。そら魔王にもなるわ)


 しかしここで引くという手はガルシアにはない。

 近接戦闘が苦手という嘘もバレてしまった今、ガルシアは全力で俊介を倒しにかかるしかない。

 今、ここで負けてしまえばラビリス帝国の動きにも影響が出てしまう。


(こっちには()()があるが……最悪そっちに任せるのも手か)


 そう考えた瞬間、頭上から火炎が降り注ぐ。

 ガルシアは地面を凍らせすべりながら避けるが、その背後には俊介の姿が見え……拳を振りかざそうとしていた。


「それで誘導したつもりかよ!エセキングが!」

「ああ、これでいいんだよ」


 俊介の電光石火は更に早く、更に強く……雷を帯びながら進化していった。

 が、それと同時にガルシアも決死の覚悟で氷魔術の王級魔術を繰り出す。


(これはあまり出したくなかったが……しゃーないか)


「……ッ!?」

「王級魔術……『氷河』」


 そう詠唱した瞬間、背後でも……頭上でも、横でもなく。地面から俊介とガルシアを引きはがすように数十メートルの壁が出現した。

 俊介は巻き込まれないように一歩下がるが、それと同時に何もできなくなってしまった。


(まさか、あいつ逃げる気か!?)


 俊介はそう思考するが、それはないとすぐに確信した。

 ラビリス帝国側に魔王が介入している。それだけで十分大きな情報だ。

 だが、仮にそうだとしたらより多くの情報を落としておきたい。そう考えるだろう。

 相手は戦争を自ら起こそうとしている連中だ。

 そして、もしガルシアが逃げるという選択を取ってしまえばガルシアは打つ手がないと判断されてしまう。

 ガルシアとしてもそれは避けたいし、避けなければならなかった。


(俺の戦い方はある程度理解されてしまった。ここはできる限り痛手を負わせながらあいつの攻撃を分析して情報を落とす)


 王級魔術の氷壁……高さと分厚さはともに数十メートルはあった。

 氷魔術は防御にも適している。

 だが、氷壁を発動して約二秒……俊介は瞬時に炎魔術で氷壁の上から溶かすように飛ばしていた。


(こんだけ氷壁がデカかったらある程度適当にぶっ放しても問題はない)


 紫色の炎……精度を意識するのなら今の俊介ではあと数秒時間がかかる。

 これだけ大きい氷壁であれば、それは必要ないと判断し威力に全振りする炎魔術を発動した。

 そして今、炎魔術が降り注ぎ……氷壁は次第に溶けていき地面に水が出来始める。

 水蒸気が周りに充満し、煙のようになり互いに姿が見えなかった。


(力技にもほどがあるだろ……だがこれで俺の姿も分からなくなった。自業自得だな)


 ガルシアは魔力で気配を消し、水蒸気の中で息をひそめる。


(水蒸気……わかってはいたけど、かなりめんどうだな。王級の使い手ってのもあって魔力を消すのもうまい。ま……刺客的人間だからそれはそうか)


 俊介は心の中でつぶやきながら、この状況をフルで活用するように準備をしていた。

 ローブを手に取り、自分の魔力を込めてそれを投げた。


「……ッ!?」


(ローブだと!?)


 俊介の魔力を感じ後ろを振り返るが、迫ってきたのは俊介が羽織っていたローブ。

 それを見て一瞬安堵すると同時に、自分の愚かさに気づく。


(……まさか————)


「今気づいてもおせぇよ」


 俊介はガルシアの一瞬の焦り、そして安堵感を魔力で察知しながら位置を特定し……蹴り飛ばしていた。


「うぐっ……」


 ズザーっと地面をこすりながら態勢を整えるガルシア。

 もろに食らってしまったせいで体が軽くふらついてしまう。

 電光石火プラス魔力で身体能力を底上げしているせいか、体が思うように動かない。


「っち、いいのくらったな」


 帽子を深くかぶりながら、ガルシアは構える。

 その行動に紳士的な動作は一切感じられない。

 そして……水蒸気が次第に晴れる。

 前方からゆっくりと歩き迫りくる俊介に、ガルシアは睨むようにして口を開いた。


「なんで魔術を使わなかった?舐めてんのか?」

「舐める?俺がそんなことをするわけがないだろ。逆に、お前は気づかねぇのかよ?」

「何?」

「言ったよな?お前……空気中の魔力の動きを見ればどういう魔術が発動されるのかわかるって」

「……何が言いたい?」

「上を見てみろ」


 俊介は人差し指を上に向け、ガルシアは視線をさされた方向に向ける。

 そして、事の重大さに気づいてしまう。


「……ッ!?なん、だよ……これ」


 俊介とガルシアの頭上には……暗雲が出来ていた。



 魔術を発動された瞬間は見ていない。

 ローブが魔術を発動できるのか?

 いいや、そんな事出来てたまるか。

 それじゃあどうしてこうなっている?

 ローブのようなサポートアイテムが他にもあったのか?


 ガルシアはそう思った。

 上に向けていた視線を俊介の方へと戻し、彼が笑っているのを見たガルシアは……恐怖で体が包まれてしまった。

 そして、俊介は不敵な笑みを浮かべながら口にする。


「お前が氷魔術を使うってのを知った時、もしかしたらできるんじゃないかって思っていたんだ」

「……何を……言って……」

「結果的にこうして早まったわけだが、どうして水蒸気が晴れるの早かったか考えてなかったろ」

「……ッ!?」

「ローブを投げてお前の焦りと安堵感を誘った。お前は俺の魔力に反応した。そうだよな?」


 俊介の言っていることは正しい。

 ローブに纏っている俊介の魔力にガルシアは確かに反応した。

 けれど、ガルシアはまだ理解できていない様子だった。


「風魔術ですし蒸気を上に飛ばす……そんで、あとは……」


 俊介は指をパチンと鳴らし、雲に水魔術を施す。

 これで……列記とした雨雲が完成する。


「雨雲が何だよ。それでお前に何ができる!?雨を降らせるってか!?俺が氷魔術使いだぞ?この雨粒を氷に変えてお前に攻撃することだって————」


 ガルシアはむきになりながら右手を空に翳し、魔術を発動させようとするのだが……反応することはなかった。


「……ッ!?どう……して、まさか!?」

「ああ、そのまさかだ」


 この雨雲は先程俊介が水魔術を使用したことにより俊介のものへと変化した。

 もし、水魔術を使用する前に使っていたらこの雨雲はガルシアのものだった。

 俊介はあえて話す事によりガルシアが後手に回るよう立ち回り、絶望を味合わせるためそうしていたのだ。


(やばい……これはまずい。どうする……どうするのが正解なんだ)


 ガルシアは思考を張り巡らすが、答えは一向に出てこない。

 そして雷がバリバリと鳴り……その雷は俊介のものだと気づく。

 上を向き、凄まじい顔をしながらも最大限自分の身を守ろうと氷魔術を発動しようとして————


「『雷雲暗影』」


 俊介がそう発した直後、勢いよく落雷が降り注ぐ。

 ぎりぎりで魔術の発動に成功したガルシアだったが、その威力に耐えれることなく貫通し……直撃してしまう。

 王級魔術をもろにくらってしまったガルシアは地面に倒れこむ。


(まさか、ここの山で二回王級魔術を使うとは思わなかったな)


 俊介は空を見上げながらそう口にする。

 王級魔術を習得したときクソほどうれしかったが、雷魔術の中でもかなり隙が生まれやすく読まれやすい術ってこともあり、工夫をしないと戦えないとは思っていた。

 一度目は発動したけどそれを囮として使い、威力もほぼお粗末の状態だったため俊介としては正直納得がいっていなかった。

 しかし今回、見事に自分のやりたいことがはまり威力もかなりいい感じに出せた。

 勝とうが負けようが、気持ちよく決まったことが何よりもうれしかった。


「ま、勝つけど……」


 と、独り言ちながら倒れているガルシアにジト目を向ける俊介。


「どうっすかな~これ。確か……ガルシアとか言ってたっけか」


 このまま城へもっていって拷問させラビリス帝国の情報を吐かせるというのも考えたが……俊介は互いに不可抗力だったし見逃してやるか?と一瞬頭をよぎるが、やはり敵国の人間というのもあってただで見逃すというのはしたくなかった。

 とりあえず起こそうと近づくのだが、その直後————



 倒れこんでいるガルシアの地面からピンク色の魔方陣が突如として現れ俊介は急いで接近するが……ガルシアはその魔方陣の中へと消えていってしまった。


「クソが……!」



 ラビリス帝国、玉の座に手……レン・シュバルツの前にピンク色の魔方陣が現れボロボロのガルシアが倒れた状態で現れた。

 レン・シュバルツはガルシアを踏みつけ、眉をひくつかせて声を上げていた。


「何をしている?どうしてお前ほどの男が負ける?俺がこうして転移魔術を使わなかったら殺されていたよなぁ?」

「申し訳……ございません……山の一件を調査しよう出向いたのですが……奴と遭遇しました」

「奴だと?」


 奴という言葉を耳にした瞬間、更に表情が強張っていくレン。

 ぐりぐりとガルシアを強く踏みつけながら問う。


「その奴……というのは、魔王……ということでいいのか?」

「はい……ルーナではなく、新しくついた魔王……俊介でした」


 にやりと笑みを浮かべるレン。

 金色の髪の毛で前髪が覆われていたため表情はよくうかがえなかったが、その名前を聞いた瞬間ガルシアはレンの表情を目にしてしまう。

 レンは口角があがっていて、笑みを浮かべていたのだが……目は全く笑っていなかった。赤い瞳が炎のようにメラメラと闘志を燃やすように、一点を見つめるようにしていた。


「ルーナがこういう国のいざこざに自ら口を挟む奴ではない。新魔王様は向こう側についた……ということでいいんだよな?」

「はい……」


 踏んづけていた足をどかし、再度玉座に座るレン。

 頬杖を突きながらガルシアに再度問いていた。


()()()はまだ生きてるな?」

「はい……記憶も消しているので気づかれていない……かと」

「ならよい。今回の情報はかなり大きい。こちら側の戦力はいくらでもいる。エスタの入国の件……楽しくなりそうだ」


 レンは笑みを浮かべながらそう言葉をこぼしていた。


————————————————————————


 時刻はすっかり夜になっており、俊介はその間禁書について色々と調べながらガルシアとの戦闘を得て考え事をしていた。


「間違いなく、魔王が介入してるってばれてるよなぁ……別にいいけどさすがに早かったな」


 バレること自体は問題ないのだが、タイミングとそれが戦闘でというのが俊介としては失敗だなと感じていた。

 向こうの戦力はおそらくこちらが考える以上のものになるだろう。

 それに、先ほども言ったが魔王が介入していると知るだけで向こうからしたらかなりアドバンテージが高い。

 ルーナはそう言う人間じゃないと分かられているため必然的に俊介が介入したとバレる。


「ま、こっちからしても舐めてかかってくれた方がありがたいからいいんだけどさ」


 俊介はそう言いながら禁書を手に取り、空を飛んで城へと帰る。


(もうそろそろ大丈夫かな……エスタの部屋に向かうか)



 「そういえば……俊介様、やることがあるってリーサさんが言ってたけど、いったい何をしていているんだろう」


 気になり、訪ねてみようと部屋を出ようとしたところで……

 窓がコンコンとなり、そちらの方へと視線を向ける。


「俊介様!?」

「……こんばんは~」

「どうして窓から……」

「少し気になることがありましてね……それを調べていた所なんです。それでまぁ、一通りわかったので戻ってきたって感じですね」

「そうだったんですか」


 手元に持っている禁書を見てなんとなく察するエスタ。

 エスタはそれについてはあえて触れず、俊介を部屋へと招く。

 

「すみません……色々と散らかってはいますが……」

「大丈夫ですよ」


 エスタは気恥ずかしそうに視線を飛ばしながら言い、俊介は普通を装う。


(っても、さすがに緊張するな)


 心の中でそう言いながら悟られないようにする俊介。

 そして沈黙が続かないように口を開いた。


「色々と落ち着きましたか?」

「え?あぁ……そうですね。お昼リーサさんと街に出かけまして……色々と相談を乗ってくれていたんです。そしたら気持ちもすっきりしました」

「そうですか」


(リーサのやつ……やるときはやる人だからいいんだよな)


 別に、エスタについてやれという意味で休暇を与えたのではない。純粋に休暇を楽しんでもらいたかった。

 けれどリーサは善意でエスタの傍に出向いた。護衛というのももちろんあるかもしれないが()()()()()()()()……。俊介はエスタの表情、声色からそう察してほっとする。

 エスタは手をもじもじと膝の上でさせながら、口を開く。


「その……ごめんなさい。話を聞こうともせずいきなり怒鳴ったり……お見苦しい所をお見せしてしまって」

「いや、いいんですよ。気にしないでください。俺も逆の立場なら同じことをしていたと思います」

「で、ですが……」


 エスタは申し訳なさそうに視線を落とし肩を竦める。

 俊介はその様子を見ながら、視線をエスタの方に向けるのではなくあえて逸らしていった。


「ルマーニ女王陛下は娘であるエスタさんを送り出したくなかったんですよ」

「どうして、お母様は了承してくれたのに急にそれを取り消そうとしていたのですか?」

「女王陛下はラビリス帝国に行く際にかなり手間がかかるとおっしゃっていましたよね。」

「ええ」

「あの人も最初出向こうとして申請したらしいのですが弾かれたらしく、そして今回エスタさんが申請したときすぐに通ったのでエスタさんが危ないんじゃないかって。それで俺に相談してきたんですよ」

「そう……だったのですか」


 やはり、私の早とちりだった。

 ただ私を信用していなくてやってた行動じゃない。

 私を心配してとった行動なんだと、そこでちゃんと理解した。

 そう思うと、自然と涙が垂れ……頬を伝っていた。


「ごめんなさい。私……お母様にあんなことを……」

「誰にだって失敗はある。大事なのは次、どうするかです。リーサと一緒にいて答えは出たんじゃないんですか?」


 そうだ。私は偽らないと決めた。自分のやりたいようにやると……そう決めた。

 自分が母親に言った後悔はもう悔いても仕方ない。次はそれを行動で挽回し示したい。

 自分が一国の王女であるという事。

 ルマーニ女王陛下の娘としてではなく、ガウルド国の王女……エスタとして。


「はい。決めています。明日……お母様とお話をしようと思っています」

「そうですか。なら問題はないですね」


 俊介は笑みを浮かべて返すのだが、エスタは肩を竦めていた。

 その動作に少し首を傾げる俊介。


「どうかしましたか?」

「いえ……お母様と二人きりでちゃんと話したことがないので少し緊張するというか……」


 苦笑しながら返すエスタ。俊介は返答に困っていた。


(俺も母親とちゃんと話したことがないからな~)


 嫌な思い出が頭をよぎる。

 もっとちゃんと話してみたかったという感情が、何故か芽生えてきてしまう。

 そして……自然と俊介は言葉をこぼしていた。


「そういうの……いいですね」

「……?」

「あ、いえ!今のは忘れてください!」


 俊介は慌てながら言うのだが、エスタは小首をかしげる。

 どうしてそんなことを今言ってしまったのだろうか。

 羨ましいという感情が出てしまったのか。

 今まで両親がいない環境で育ってきたというのもありあまりそういうのには興味がなかった。

 そしてあんな最期だったため早く忘れようとしていた。

 しかし今、そういう親子らしいこと聞いてしまい……少し胸がざわついてしまった。

 エスタは何も言わなかったが、俊介は軽く視線を落としながら話す。


「俺には、親がいないんですよ。なのでその……うらやましいなって」

「そう、だったんですか」


 エスタはそれ以上聞くという事はしなかった。

 少し気まずくなってしまうという雰囲気になると分かっていて俊介は話したのだ。

 でも、なぜか言わないとって思ってしまった。

 全部を言うつもりはない。

 もしエスタが「どうして」といえば俺は言ったかもしれない。



 数秒の沈黙が続き……エスタに視線を向けながら苦笑し言った。


「ごめんなさい。俺の方こそ……空気を悪くしてしまって」

「い、いえ……そんなことは思っていないので大丈夫ですよ」

「そうですか……」

「知っていますか?花の最期って何種類もあるんですよ?」

「……花?」


 エスタの急な発言に俊介の頭の中が?で埋まる。

 親の話をしていたのに、何で今?

 もしかして、気を遣わせてしまったか?と思い俊介は反省するのだが……

 エスタは部屋の扉付近に飾ってある花の方へと視線を向けたまま続けた。


「散る。零れる。落ちる。萎む。しがみつく。崩れる。舞う。枯れる。沈む。私は最初、こんなにも種類があるのなんて知りませんでした。ですが花の事を調べ、知っていくことに連れてこういうことがあるのだと気づいたのです」


 エスタは優しい笑顔で言っていた。

 そして、俊介の方へと視線を向け……優しい笑顔で口にする。


「人生も……同じだと思うんです。このどれでも終わっても……ああ、最期は美しかったなと思える……そんな人生にしたいんです。俊介様は、どのような最期を迎えたいですか?」

「……」


 エスタの問いに、俊介は何も言うことが出来なかった。

 何を言われているのか分からないんじゃない。

 理解してなお、自分がどのような最期を迎えたいかを……言えなかった。

 あるいは想像できなかったのかもしれない。

 けれど、エスタは違った。


「私は自分のやりたいことをたくさんして、国の為に死ねるのなら本望です。ですのでこの場合、枯れる。ですね。」


 「何を言っているのでしょうか」と恥ずかしそうに言うエスタだったが、そんな彼女が逞しく見え、負けているなと感じてしまった。

 自分の思想をしっかりと持っている人なんだと。

 

(俺は……どんな最期を望むんだろ)


 自分で自問自答しようとする。やりたいことはある。魔界の人たちに魔王として認められたい。三つの世界が平和に暮らせるようにしたい。でもこれは、最期じゃない。そのすべてをやり終え、その先の話。

 だけどまぁ、この感じだったらエスタと同じく枯れる。じゃないのかと少し考える。やりきって、全部出し切る。それが枯れる。

 エスタが言っていた人生にも言える……これにはすごく納得した。

 散るように最期を迎える人もいればしがみつくように最期を迎える人だっている。

 色々と考えた末に……俊介は一つの答えが出ていた。


「多分俺は、散る。ですかね……どの最期だったとしても悔いのないようにする……というのが正確な答えですが、それは皆も同じです。俺は魔界人ではないので長生きはできません。ですが、俺という魔王は確かにそこにいたんだと、皆に知ってほしいんです」

「散る……確かにそうですね。儚く、消えてしまう。それではお互いやりたいことがたくさんありますね」

「ですね」


 俊介とエスタは互いに笑みを浮かべる。


「色々と気を遣わせてしまって申し訳ないです。俺がエスタさんの様子を見にきてのに、情けないです」

「そんなこと思わないでください!私は俊介様とお話しできるだけですごく嬉しいですし、落ち着きますから!」


 自分で言っていてカーッと頬が熱くなるのを感じるエスタ。

 それを隠すように頬に手を当てて視線を落とす。

 と、そのタイミングでエスタの部屋が勢いよく開く。


「シュン様!どうしてわたくしの所に帰ってこないのですか!」

「うわっ!?びっくりした……いきなり開けて飛びついてこようとするな!」


 俊介は飛んできたリーサを受け止めようとせず、その場から離れる。

 ドサッという音とともにリーサは顔を上げて頬を膨らませる。

 リーサはかなりスタイルがいいびで、今のその態勢は何かと気まずい。目のやり場に困る。

 そしてそれは俊介だけではなかった。


(すっごぉ……わかってたけど、リーサさんの胸おっきぃ……)


 エスタは口をポカンとあけながら心の中で呟く。

 その態勢というのはソファに仰向けで膝を曲げた状態。言ってしまえば赤ちゃんがするような態勢になっているのだ。

 リーサは俊介がキャッチしてくれると思って飛び込んでいたので色々本当にきわどい。

 俊介はリーサのおでこにチョップして起こさせる。


「ほれ。そろそろ体を起こさんかい」

「いやです!私はシュン様が抱っこしてくれないのならこのままギャン泣きします!」

「マジでやめろよ?」


 うるうると芝居がかった涙を浮かべるリーサに俊介はジト目を向ける。

 リーサは諦めたのか溜息を吐きながら体を起こして服のしわを伸ばすように直す。


「リーサ、色々とありがとな」

「いえ、大丈夫ですよ!わたくしは自分のやりたいことをしたまでですので!」


 リーサの言葉に俊介は笑みを浮かべる。

 テーブルの上に乗っている禁書が目に入り、リーサは首を傾げながら聞いた。


「やりたい事っていうのは……禁書のことだったんですか?」

「ああ、まぁそんな所だ。そんでまぁルマーニ女王陛下に少し聞きたいこともあるんだよな」


 俊介が頭を掻きながらそう言うと、エスタは右手を胸にあてながら真摯に告げる。


「俊介様!もしよろしければ……明日、私と一緒にお母様の所に行きませんか?」

「そうしたいのは山々なんだけど、さすがに親子の時間は邪魔できないからな……それは遠慮しておくよ」

「そうですか……そうですよね」


 内心ものすごくありがたいお誘いだったのだが、こればっかりはついていけない。自分のころ合いで向かうと決めた俊介。


「それじゃ、話したいことも話したし……そろそろ自室に戻ろうかな」

「シュン様!今日こそ一緒に寝ませんか!」

「やだ」

「ぶー!」


 俊介とリーサは部屋の扉の方へと足を運び、出ようとして振り返る。


「また何かあったらいつでも言ってください。エスタさんなら大丈夫ですよ。ラビリス帝国の事も問題なく了承してくれるはずです」

「はい!ありがとうございます」

「今日はゆっくり寝てくださいね。おやすみなさい」

「おやすみなさい」


 そして二人はエスタの部屋を出て行った。

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