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二大魔王~魔王の護衛をしてたらいつの間にか俺も魔王として生きていくことになったので二人で世界を救うことにしました~  作者: Mini
第2章 魔王俊介視点 ガウルド国編

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17/23

魔王様の魔術の才能はピカイチのようです

 王女エスタ・ワクタビアの護衛をすることになって一日目。

 翌日の朝食の時間になり俊介はまだぐっすりと眠っていた。

 部屋の前ではリーサが待機をしており、午前六時半が過ぎたところで前方からエスタの影が見えリーサは構えた。


「おはようございますエスタ王女様。生憎とシュン様はまだ眠ってらっしゃっています」

「そうなんですか?私が起こしてきますよ」


 少しだけ威圧的に言うリーサに対してエスタも何故かむきになる。

 互いがにらみ合い、今にも火花があがりそうだ。

 リーサは自分の立場を利用してさらに追い打ちをかける。


「申し訳ありませんが。わたくしはシュン様の()()()()()ですので!そういうのはこちらの仕事なんです」

「そうかもしれませんがここはガウルド国の城で私はそこの王女です!俊介様を起こす権利があります」

「ないです」

「あります!」


 わいわいぎゃーぎゃーと騒ぐ二人。ガウルド国の現状を忘れているんじゃないかと疑ってしまうが、無理もない。正直に言うと戦争が起こるかもしれないというこの状況において民や国の雰囲気が悪いという事は一切ない。

 あまり大々的に報じていないというのもあるかもしれないが、魔界では戦争というものは珍しくない。

 魔王争いや七龍賢人という七人の最強達の座をかけて戦う国はそう少なくない。

 七龍賢人に入れば当然その国に手出ししようとしてくるものは限られてくる。

 何だったら国を賭けて国王が一騎打ちで戦うのもあるんだとか……当然俊介は知らない。が、魔界の基本といっても過言ではないらしい。


 そして二人が部屋の前で騒いでいるのか、ドアが開く。


「あ!シュン様!おはようございます!」

「俊介様、朝食の準備ができていますよ!」

「お、おう……二人して何やってたんだ?」

「「……!」」


 エスタとリーサは顔を合わせて頬を赤らめる。俊介の反応からして二人のやり取りを聞いていたらしい。

 聞いていたというより、それで起こされたというのが正しいのだが……。

 俊介は頭を軽く掻き、着替えを済ませ朝食に向かおうとしてエスタが困惑した様子で俊介に話しかけた。


「もしかして……その状態で向かわれますか?」

「何か問題でも?」


 問題はない。別に普通の服装で何も違和感やおかしい所はない。

 そう……普通の人間なら。

 今の俊介はローブを羽織っていない。抑えきれない魔力が体から溢れてきているという事だ。

 俊介はそれが当たり前だったので気づくのが少し遅れたが、普通の魔界人からしたら怯えて困惑するのも無理はない。

 俊介の魔力を見ただけで怒っているのではないか……という誤解をされても何も言えないのだ。


「あ~そういうことですか……ごめんなさい。今すぐローブを取ってきます」

「すみません。ありがとうございます。私はいいのですが……お母様や他の人たちが驚いてしまうので」


 エスタは自分の服をぎゅっと握りながら言い、俊介は申し訳ないと思いながらローブに魔力を送って自然と俊介の体を覆うローブ。


(日に日に魔力が大きくなってくな……どこまで増えるんだ?)


 今になって、ルーナに言われていたことを思い出した俊介。魔力や魔術の事を教えてもらった時、薄い魔力を体に張るように言われていた。今でもそれを意識しているし、問題はない……と思っていた。

 実際はかなりの高騰テクニックなのだと知った俊介。魔力が多ければ多いほどこの制御は難しい。


(これはマジで魔術の訓練を今まで以上に増やしていかないといけないな。それこそ……日常生活でも意識していかないと)


 実際ローブはすごく役に立つ。魔力を隠してもらう他にも受けた魔術を解析し我流に帰ることも可能だ。


——————————————————————————


 ルーナが天界に行くまでの三日間で俊介はみっちりトレーニングルームにこもっていた。


「お~、やってんなぁ……お前の雷魔術もかなり良くなってきてんじゃん」

「上級はほとんど覚えたかな。あとは他の魔術との応用が課題って感じかな」

「そうだなぁ……シュンは他の自然系統魔術は極める気ってあるのか?」


 ルーナは何気なく俊介に聞いた。

 俊介は軽く唸り天井を見上げながら口にする。


「ん~……使えたらいいなとは思うけど、今は得意な雷魔術を神王級にあげることが目標かな」

「そっか……まぁ本にも書いとくけどここでお前にアドバイス!」


 ルーナは人差し指をビシッとあげ、魔術を発動しながらクイズ形式でアドバイスをした。


「この魔術はな~んだ」


 勢いよく爆ぜる魔術……どう見ても炎魔術のそれだった。

 俊介は首を傾げて答えた。


「炎魔術?」


 俊介の答えにルーナは煽るように口にする。


「ぶっぶ~!正解は水魔術でした~!厳密にいえば水魔術を炎魔術と併用したって感じだけど、割合は八対二ってところかな」

「……どういうこと?」

「要するに、魔術は一工夫だけでかなり変わるって事。シュンは魔力の質量がバケモンだから他の魔術と合わせれば初級、中級でも威力は王級になる可能性だってあり得るって話だ。それに……」


 俊介は納得するが、ルーナは続けて言う。


「雷魔術を上級まで極めたなら、自然と他の魔術の性能も底上げされてるはずだぜ?」

「え~?ほんとかなぁ……」

「試しにやってみろよ」


 少し疑いながらルーナの言った通り他の魔術を発動しようと試す俊介。


(あんまり変わらないと思うけどなぁ……ま、一番苦手な炎魔術を使ってみるか)


 右手を軽く前に出し、炎魔術を発動する。

 今までにない威力で勢いよく飛び出し、俊介とリーサは困惑していた。

 俊介はルーナの方へと視線を向けるが、ルーナは「にっ」と歯を見せながら言った。


「な?言ったろ?お前は何気なく初級魔術を撃ったのかもしれないが実際の威力は上級以上王級未満ってところ。普通ならあり得ねぇんだよ」

「なるほど……魔術の連弩があがる程他の魔術の威力や制度も上がるって事か。言われてみれば確かに制度も前よりはしやすくなったかも?」

「だろ?まぁシュンの場合は結構イレギュラーだけどな。普通は他の魔術が相対的に上がることはない。お前だからこそのものだな。んでそこで、このローブの手番です!」


 ルーナは俊介のローブを手に取り、それを俊介の肩にかける。

 当然、俊介は何がしたいのかわかっていない様子。


「いったいこれで何をするの?」

「まぁ、構えてろって」


 ルーナはにやにやと何かを企んでいる話し方でいい、俊介は嫌な予感が頭をよぎった。

 案の定その嫌な予感は的中して瞬きする暇なくルーナの一番得意な魔術、炎魔術が勢いよく飛んでくる。俊介は避けようとするが、ルーナが放った炎魔術はローブの中に吸い込まれ、その炎魔術の詳細が俊介の脳みそに直接伝えられる。


「……これって!?」

「少しは炎魔術に関してわかったんじゃないか?」

「……うん……すごいな。これ」


 わかったなんてものじゃない。正確に情報が叩き込まれて何がダメだったかすぐにわかった。

 ローブにこんな使い方があるなんて思いつきもしなかった。

 確かにこれなら魔術の事もわかる————


「勘違いしちゃだめだぞ?これはただの近道。俺が天界に行く用事がなかったら絶対にさせなかった。それに、魔術の事をわかった気になるな。痛い目を見るぞ」

「う……すみません」

「ま、シュンのことだからあまり心配はしてないよ。毎日俺のいった事はちゃんとできてるし、応用は自分で見つけろよ」

「ありがとう。ルーナ」

「……っせ」


 俊介は笑顔でお礼を言い、ルーナは少し……照れていた。


——————————————————————————


 俊介とリーサ、そしてエスタは朝食を済ませ自身の部屋に戻っていた。


「エスタさん……この辺に使っていない場所とかってあったりしますか?」

「ありますけど……どうかされましたか?」

「魔術の特訓をしたくて……」


 俊介は申し訳なさそうにいうが、その言葉を聞いたエスタはパーッと可愛らしい笑顔をしながらウキウキで言った。


「でしたら、いい場所がございますよ!ついてきてください!」


 エスタは俊介とリーサを連れて城を出る。

 俊介は昨日女王陛下から預かった禁書を片手に空を飛んだ。

 案内されたのは山奥。ここに一通りはなく、魔物も出るという。

 訓練としてはうってつけの場所だった。


「実は、ここら辺魔物が出て困っているんですよ。他の国に行くときに使う道でもあるので……」

「なるほど。ならちょうどいいですね。今日中に全部魔物を狩ってしまいましょう」

「で、できるのですか!?」

「うちの魔王様舐めんな」

「……す、すみません」


 ぐわっとすごい形相で睨みつけるリーサにエスタはこればっかりは申し訳ないと反省。

 俊介は何も気にした様子なくローブをリーサに預けて禍々しい魔力を極限まで抑え体に纏う。


(いつ見てもすごい……魔力だけで圧倒されてしまう)


 怖い。今にも逃げ出したい。エスタはそう考えるがそれと同時に見とれてしまっていた。

 そしてその背後から迫りくる魔物……

 俊介はすぐに察知して雷魔術で周囲の魔物を一掃した。


「すごい……これが魔王様の実力……」

「七龍賢人の方がもっとすごいでしょ……ルーナに勝った事一回もないし」

「そ、そんな事ありません!難しい雷魔術を身に纏って戦闘はそうそう見れるものではありません!」


 エスタの褒め上手に乗らされ、調子が上がってきた俊介。

 薄い雷を身に纏うことで魔力を最小限で身体能力を向上させることが出来る。

 それでは逆に、雷で身体能力があがった状態で……魔力を強化してみよう。

 周囲に聳え立つ森林が次々と俊介の魔力で倒れ、バリバリという音を立てる。俊介たちがいる頭上にだけ、暗雲が漂う。


「リーサ、そのローブ……エスタさんに羽織らせてくれ」

「か、かしこまりました」

「私は大丈夫で————」

「いいや、それも心配してますが……問題はそこではないです」


 俊介の魔力で防魔術を施しそのローブを羽織るエスタ。

 どこか胸騒ぎがし、その答えはすぐにわかった。


「魔物ってのは、魔力に反応するんだな」


 俊介が魔力の質を上げたことで四方八方……あらゆるとことから魔物が飛び出してきていた。

 最悪エスタはリーサが守ってくれる……が、今の俊介には関係なかった。


「ちょうどいい……一気に来てくれた方が掃除も楽になる」


 にやりと笑みを浮かべながら俊介は次々に魔物を殺していく。


「上級う魔術……『電光石火』」


 紫色の電気を体に纏いながら、魔力で身体能力を強化……威力も速さも全てが上級魔術の域を超えていた。

 最初はゴブリンのような小さな魔物だったが次第に大きくなり、中には雷魔術に耐性を持った魔物も現れてきていた。電光石火を解き、中級魔術の範囲雷攻撃を発動した。


(これで雷耐性以外の魔物は倒れたか……炎魔術は避けないといけない……ここは)


 俊介は重力魔術を応用し魔物たちを引き寄せ体術に持ち込んだ。

 自分の腕に重力魔術を施し威力をあげる。顔面を次々に殴り血がそこら中に吹き飛ぶ。

 その様子を見ていたリーサは敬愛の眼差しを送り「さすがシュン様……」と言葉をこぼしていた。

 が、その隣でローブを羽織っていたエスタはそれをぎゅっと握り恐怖し、魔王俊介の実力を目の当たりにしていた。


(確かに七龍賢人やルーナ様と比べると実力は劣るかもしれない……でも、それでも……複数の魔術を同時並行して威力も変わらないのはさすがとしか言いようがない……この人、今は成長段階かもしれないけどここから先、もっともっと強くなる……それこそ、この魔界を代表する人物にだって……)


 魔術の同時並行は珍しい話ではない。

 だが普通の人間は魔術の使う術が増えれば増えるほど威力や性能は半減する。

 七龍賢人はそれを魔力の量や技量でカバーしている。

 ルーナは魔眼を所有しているのでそういったデメリットはない。しかし、俊介は違った。

 俊介は同時並行しても魔術の性能が落ちるどころか上がっていった。おそらくそれは魔物を俊介に集中させるために魔力量を跳ね上げさせている。そこまでは理解できる。

 問題はその質量だった。

 俊介の放っている魔力は微量。常人で十の魔力を放っているのだとしたらこの人は俊介は百……千……いや云十万という魔力を放っているのに等しい質量だった。


 魔物がうじゃうじゃと湧いていたのが数も減っていき、重力魔術も効かない魔物を風魔術で背中を押し出すようにして俊介は拳を振りかざす。


 そして、俊介は天を仰ぐように上を向く。

 殺した魔物の血が雨のように降り、俊介はそれを浴びていた。

 その姿はまさしく魔王のそれ……兆候だった。


「こんなにすぐ終わるなんて……思わなかったです」

「さすがシュン様!かなりまおってますね!」

「なんだよまおってるって……」


 リーサの変な言葉に俊介はジト目を向ける……エスタもかなり安心したのか駆け寄ろうとするのが、ここで俊介の魔力を上げていたのが裏目に出てしまう。

 リーサと俊介はエスタの後ろから迫りくる明らかに今までで一番強い魔物を感知する。


「……エスタ……!」

「……ッ!?」


(やべぇ……雷魔術で行けばギリ間に合うか?いや、それじゃ間に合わねぇ)


 明らかに大柄……それなのに静かな動き。そしてこの感じは魔術は効かないのだろう。

 護衛をするとなってピンチ。

 俊介はリーサに魔力信号を送りそれをくみ取ったリーサは迷いなく魔物へと接近、俊介はエスタを担ぎ、距離を取った。


「大丈夫ですか?」

「え……あ、はい……ありがとうございます……俊介様」


 お姫様抱っこをされているのに気づいて頬を赤らめるエスタ。

 俊介はすぐに降ろして真摯に告げた。


「エスタさん……この山、消し飛ぶ可能性があるかもしれないですがいいですか?」

「え?あぁはい……問題ないですよ。そちらの方が他の国の方々もガウルド国に来やすいでしょうし」

「ありがとう」


 そして俊介は走り出す。

 リーサと入れ替わり、俊介に魔力信号で瞬時に伝えた。


(魔術が効きません。おそらくはあの持っている斧が原因かと)

(わかった。ありがとう。リーサはエスタの傍を離れないでほしい。見た感じこいつ以外に魔物はいない)

(かしこまりました)


 俊介はザッと構える。

 明らかに今までで戦ってきた魔物で一番強い。

 現界で戦った母親よりも……確実に。


(ッチ、いやなことを思い出させやがって)


 俊介は怒りをぶつけるように走り出し、単純な魔力で強化した身体能力で仕掛けた。

 魔物はにやりと笑みを浮かべて斧を振りかざす。それを避けた俊介だったがその直後逆の拳が俊介に直撃する。


「っぶねぇ……咄嗟に腕で守ったけどそれでもこれかよ」


 全身にびりびりと伝わってくる振動。骨の隅々までじんじんと走る痛みを感じながら俊介は狂気じみた笑みを浮かべて再度走り出した。


(思えば、こんなに戦闘を楽しんだことはなかったな)


 今まで戦闘をしたことがなかった俊介。

 現界での出来事を得て俊介は魔術、そして近接戦闘を身に着けると誓った。

 そして今、こうして自分の力を惜しみなく発揮できる人物がこうして現れた。

 俊介からしてみれば、この上なくありがたかった。


「なぁ、お前……俺が魔術を使わねぇと思ったのかよ?」


 瞬間……頭上の暗雲から、凄まじい威力の雷が魔物を襲った。

 魔物は斧を上にあげてその雷を吸収するようにしていた。


「やっぱりな。お前は魔術が効かないんじゃなくてその斧に()()()()()()だったら、今のお前は魔術を防ぐ手段がないということだよな」


 俊介の言葉にリーサとエスタは驚く。


「この雲……俊介様が生成したものだったって事なんですか!?」

「ええ……おそらくは。」


 リーサはこの時、俊介の魔術としての才能……そして戦闘センスに驚いていた。


(ルーナ様も言っていましたが、シュン様の戦闘技術は他の人とは違ってやれることを全てやる人……)


——————————————————————————


「どうして、ルーナ様はシュン様に戦い方を教えないのですか?」


 リーサはルーナに聞いた。魔術を教えるのも、近接戦闘をリーサに任せるのもわかる。

 でも、こうして戦え、ああして戦った方がいいという指導の仕方は一切しなかった。

 リーサはそれが不思議でたまらなかった。

 俊介の戦闘技術を疑っているわけではない。ただ魔王ルーナの戦闘を俊介にも教えれば早いのではと考えていたのだ。

 ルーナはリーサの問いにすぐ答える。


「普通に必要ないからかな」

「必要ないとは?」

「あいつって自分ではわかってないけど才能もセンスもあるよ。それに俺はあいつに言ったんだ。教科書通りに戦うのは面白くねぇだろって。あいつにはあいつ独自のやりやすい戦い方がある。そう思っただけだ」


 わたくしは、この時ピンと来ていたなかった。

 言いたいことは分かる。けどそれでも最初は教科書を渡し理解させる。そこから自分独自の戦い方を学んでいけばいいのではないかと思った。

 それでも、ルーナ様はそうしなかった。

 どうしてだろう。気になる。ルーナ様に感じていて、わたくしには感じないシュン様の才能を。

 だから毎日できる限りシュン様にトレーニングルームについていった。近接戦闘をしない日も。

 そこで私は気づいた。

 この人は、自分でやれること、やれないことを模索して最悪のパターンを何個も考えているのだと。

 普通の人間はこれが通用しなかった。じゃああれをやろう。そう考えるのが普通だ。でもシュン様はそれを見越してわたくし達見方をも欺くやり方。それが、この人の戦い方なんだと思い知らされた。


——————————————————————————


 この暗雲は、シュン様の魔力や雷魔術の性能を底上げしてできたものじゃない……もう、王級である『雷雲暗影』を取得ているのだ。

 そしてその王級雷魔術を囮にした。

 俊介のその戦い方にリーサはぞくぞくし、笑みを浮かべた。


「まさか、王級魔術を使うとは思ってなかったよ。人間相手には絶対にできない戦い方だがお前ら魔物は所詮は魔物。ここまでの知恵はなかったろ」


 自分で何を言っているのだろうか。

 俺は見たじゃないか。知恵を、言語を使って戦う魔物を。

 この魔物は言語能力こそないもののパワーや戦闘技術では現界の魔物……母親より格段に上。

 逆に母親は言語能力こそあったが適応前だったのか戦闘技術はこいつと比べると劣る。


 怒りを全て、ぶつけるように……俊介は右手を前に出し、炎魔術を使用する。


(思い出せ、ルーナと特訓したときの炎魔術の特徴を……)


 雷魔術と炎魔術はもっとも遠い場所に位置する。

 雷魔術は速さを重視し、魔力を上げることで威力が凄まじいものになる。

 言ってしまえば魔力ありきの魔術。

 逆に炎魔術はその逆で威力を重視する術。

 俊介は早く出そうとしていたから威力や制御がおろそかになっていた。

 ゆっくり、そして早く魔力を練り上げ……その温度を上げる。

 今現在魔物は俊介の王級魔術を斧に吸わせている。重力魔術でそこから動けなくしているので極限まで炎魔術を練り上げる。


(ルーナはこれを早くしてるのか……マジですげぇんだな)


 ルーナのすごさを再認識し、炎魔術が放たれる。

 炎はルーナと同じ、紫色の炎へとなっていた。

 

 刹那……魔物の方向に向かって山は消し飛んでいた。

 エスタもリーサも吹き飛ばされないよう必死で体に力を入れ、俊介は「お~すげぇ」と手をおでこにあてて呑気に見ていた。


 威力はルーナと遜色ない、

 だが、これを一瞬で作り上げるルーナの魔術技術はとんでもないものだ。

 俊介はそんなことを考えながら振り返り、二人の安全を確認した。


「大丈夫か?……って、どうしたの二人とも」

「いや、ほんとに消し飛んだじゃないですか……」

「シュン様の魔術……恐ろしいですね」

「そう?ルーナのアドバイスのおかげだよ。これを早く発動すると全部が中途半端になるだろうしな」

「「そこじゃない」」


 リーサとエスタはジト目を向けながら同時にツッコむ。


(これを魔術を学んで一か月未満ってのがおかしな話なんですよ……シュン様)

(この人にお願いしてよかったけど、やっぱ少し怖いかも……)


 二人は心の中でそう呟く。

 俊介は首を傾げて何のことかさっぱりと言った様子。

 だが、これで魔物はきれいさっぱりいなくなり国の人たちも移動しやすくなっただろう。


「とりあえず、一件落着だな」

「落着ではないですけど……そうですね。そう言うことにしておきましょうか」


 そして、無事(?)護衛も何とか出来、三人は城へと帰っていった。


——————————————————————————


「ルマーニ女王陛下!大変です!なんと、ラビリス帝国から受諾されました!」

「……!?こんなあっさり……どうして……」


 兵士が慌てた様子で部屋に入り、報告する。

 以前話していた……護衛任務の本命、ラビリス帝国に行くというものがあっさりと通ってしまったのだ。

 所在、地位、どうして国に行きたいか、それ以外にも審査や確認で時間がかかる入国。

 最低でも期限ぎりぎりの時期になると踏んでいたガウルド国だったが、ラビリス帝国の立ち回りが気になってしまう女王陛下ルマーニ。

 彼女は口に手を当てながら思考する。


(いったい何を考えて?話す余地があると思った?いいや……だったらもっと早くに私が申請したタイミングで受諾されているはず。何なら私のを蹴った。それなのにもかかわらずエスタの入国は許可した……もしかして狙いはエスタ?)


 嫌な予感が頭をよぎる。もし本当にそうなのであればこの入国は母親として阻止しなければいけない。

 娘を敵国に行かせることを……。しかし同時に頭に国民やこれからの国の事が頭をよぎってしまう。

 極め付きはエスタの引くことはなかった表情。いつもはそんな表情を見せるどころか不確定要素や自信のない物にはあまり意見をしなかった娘。

 どうするのが正解なんだ。

 色々なことが一気に頭をめぐって頭痛がする。

 そしてそにょうすを兵士や執事が心配する中、ルマーニは閉じていた目を開けて言った。


「わかりました。伝えておきます。下がっていいですよ」


 兵士が部屋の扉を閉め、ルマーニは溜息を吐く。


「一体、どうするのが正解なのでしょうか」


 そう言いながら視線を執事に送る。その執事は紅茶を注ぎながら言った。


「女王陛下の考えがこの国の考えです。一度エスタお嬢様と話してみるのもいいのではないのでしょうか」

「話してみる……ねぇ。確かにそれが一番いいのかもしれないですね」


 注がれた紅茶を口に運んで一口、また一口と飲む。

 ルマーニはこう見えて、親らしいことをしたことがない。

 当然、エスタと二人っきりで話すという事もない。

 溜息を軽くつき、ルマーニは紅茶を飲んだ。


「もう一杯お願いできるかしら」

「かしこまりました」


——————————————————————————


「ガウルド国の件、受諾しておきました。レン様」

「よくやった。ルマーニ女王陛下は話し合いとうなのしょうもないことと分かっていたから受諾はしなかったが、その娘……エスタとなれば話は別だ」

「……しょうもないこととは?」


 側近の兵士が質問をする。

 レンはにやりと口角をあげ、ワインを口にしながら言った。


「国の王というのはいかに利益が出るか……それしか考えねぇんだよ基本。だから話し合ったとしてもグダグダと時間が過ぎるだけ。だが政治をしたことがない小娘ながら話は別だ。」


 持っているワインをゆっくりと回し、立ち上がるレン・シュバルツ。


「ガウルド国を手にすれば、エスタ・ワクタビアも俺のれに落ちるという事だ!そしてそいつが自ら足を運んでこの国に来るときた。利用しない手はないだろう。」


 そう言いながら、振り返って一人の帽子をかぶった男に話しかける。


「おい、そちらは順調なのだろうな?ガルシア」

「ええ、問題なく」


 帽子を外し、紳士的に振る舞う男。そしてその言葉にレンは笑っていた。


「順調に進んでいる……残り期限は一週間、あいつらは期限一か月でなんとかして戦争が起きないよう努めてきたが、俺らは着々とガウルド国を手にしようと動いている。それに気づかないあいつらはバカだ」


 レン・シュバルツは笑みを浮かべながら言い、周りにいた兵たちも笑い声を上げていた。

 帽子をかぶった男、ガルシアはつばを抑えて口を開いた。


「一応報告しておきますが、ガウルド国とその隣のヒューロン国に繋がる山が消し飛んだようです。」

「消し飛んだ?誰がやった」

「不明です。魔力の痕跡からしてかなりの手練れかと……」

「なるほど……向こうもそれ相応の魔術師を呼んでいるという事か。面白い。」


 ワインを口に運び、飲み干したワインガラスを握りつぶす。

 粉々になったガラスの破片を周りにいる笑っている兵士達の体に貫通させる。

 笑い声であふれかえっていたその場は一気に静寂に包みこまれる。


「貴重な兵を……」

「兵などいくらでもいる。それにこいつらも俺に殺されるなら本望さ」


 そして指を鳴らし兵を呼んだレンは血を流し即死した兵士の達の片づけを命令した。

 ガルシアはその様子を見て軽く首を左右に振り、部屋を出ようとし……


「引き続きお前はガウルド国に潜入してろ」

「はいはい……わかりましたよ。全く、人使いが荒いんですから」


 ガルシアは軽く溜息を吐きながらこの部屋方去り、レン・シュバルツは不敵な笑みを浮かべながら口にする。


「ガウルド国支配ももうすぐだ……禁術とエスタさえ手に入れれば俺が魔王になる日も近いな」


 レンはそう言って、城全体を邪悪な笑いで包み込んだ。

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