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二大魔王~魔王の護衛をしてたらいつの間にか俺も魔王として生きていくことになったので二人で世界を救うことにしました~  作者: Mini
第2章 魔王俊介視点 ガウルド国編

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ガウルド国

ガウルド国、会議部屋にて一つの報告が入った。


「ルマーニ女王陛下……ラビリス帝国からの通達です。今すぐ協定を結ばなければ軍をそちらへ送り込み力ずくで行使する……とのこと」


 その言葉に、会議室にいたもの全員に緊張が走る。

 そして、女王陛下が話す前に一人の男が慌てながら口を開いた。


「陛下、いかがいたしましょう……私どもとしましては、ラビリス帝国の協定をのむべきかと……」

「バカを言え!そんなことをしたら伝統あるガウルド国が失われてしまう!お前も知っているだろう!この協定は都合よく言っているだけで利益は向こうにしかない」

「……しかし……」


 ガウルド国内でも協定を結ぶべきという声とそうでないもので別れている。

 協定の話が本当なら、別に悪い話ではない。

 ガウルド国では禁術という都市国家を平気で破壊できる術が眠っている。その術を狙う国は少なくない。

 言ってしまえばその術を手に入れてしまえば誰も手出しはできない。しかし禁術と言われる魔術は他にも存在する。ガウルド国の禁術はその内の一つに過ぎない。

 それではなぜ……ラビリス帝国がガウルド国を狙っているのか……

 全員の話を聞きながら、ルマーニ女王陛下は真摯に告げた。


「この国がどこかの国に屈するということはまずありえません。最悪、禁術を使用することも視野に入れます」

「それだけは絶対にダメです」

「陛下……私たちはあなただから、ついてきたのです。あなたに危険が及ぶ行為は見過ごせません」

「それじゃあどうしろというのですか?おそらくラビリンス国の狙いは禁術だけじゃありません。」

「それはいったい……どういうことなのですか?」


 女王陛下の言葉に一人の男が問う。

 陛下は目を瞑り、数秒の沈黙が続いたのち……再度口を開くのだが————


「ルマーニ女王陛下!大変です!ラビリス帝国の国王、レン・シュバルツが、お越しになられました!」

「なんと!?」

「兵の数は!?」

「それが……兵は見当たらず、おそらく一人かと……」

「一体どういうことなんだ!厳戒態勢を取れ!住民の安全を最優先!」


 勢いよく扉を開けて報告をする兵士。その言葉に全員が慌てふためくなか……一人、冷静でいた人物がいた。

 ルマーニ女王陛下はその一人の兵士を見て、口角をあげながら言った。


「まったく、舐められたものですね。敵陣に一人で攻め込むなんて」

「女王陛下……それはいったい……」


 一人の男がそう言うと、女王陛下は自身の周りに数多の魔方陣を展開させ報告してきた兵士に攻撃をした。

 すると……その兵士は鎧を着ているとは思えないほどの身のこなしで飛んできている魔術をよけ、両手を軽く上げて煽るように言った。


「さすが女王陛下様だ。すぐに見抜いてくるとはな」


 兵士がそう言うと自身にかけていた変身術を解き、レン・シュバルツの姿があらわになった。


「……貴様!何をしている!兵を呼べ!」

「黙れよ爺さん……兵なんて一人も来ねぇよ」

「なんだと!?」

「……ッ!?体が、動かない……」

「重力魔術か……」


 金色の壁をなびかせ、ポケットに手を突っ込んだまま余裕の笑みを浮かべる。

 重力魔術でルマーニ女王陛下以外の人間を動けなくしていたのだ。

 周りを見渡し、事の重大さに気づく。


(城に入ってくるまでに100人以上の兵士を殺しに……いや、それだったら魔力感知で気づく。ということはこの男は誰一人として兵を殺していない。目的はなんだ?)


「安心しな女王陛下……俺は誰も殺しちゃいねぇし、俺がここにいることはこの城にいる人間以外知らない。ただ()()()()()()な」

「……!?エスタか……」


 女王陛下がそう言うと、レン・シュバルツはゆっくりと歩き、顔を女王陛下に近づけながら睨みつけ小声で言った。


「協定を吞まなければお前の娘がどうなっても知らねぇぞ?」

「……ッ!?」

「期限は一か月……俺にしては結構優しいと思うぜ?国が動くとなるとこちらとしても大変だからな?よく考えることだ」

「一体お前は、何が目的だ」

「国に眠る禁術……俺はそれを集めるのが趣味なんだ。他のいくつかの国も協力を約束してくれているのだが、この国を手中に収めないと始まらない」

「お前はバカだな……国の内情をぺらぺらと話すなど————」

「黙って聞けよ。話しても問題ない事しか話してねぇんだからよ」


 レン・シュバルツは人差し指を唇に当て「しーっ」といいながら話す。

 そしてどんどんと強まる重力魔術がルマーニ女王陛下にもかかってしまう。


「こうやって力ずくでやるのもいいが……せっかくだ。こうして考えう時間を与えようとしてるんだ。協定を呑んでくれれば悪いようにはしない。それじゃ、いい報告を待ってるぜ」


 ラビリス帝国の王、レン・シュバルツは部屋を出て行くまで重力魔術が解かれることはなかった。

 何も被害は出ないと確信を得ていたのでルマーニ女王陛下は他の者たちに騒ぐな何もするなと命じていた。

 そしてレン・シュバルツが部屋を出て行こうと扉を開けると、そこにはエスタ王女が立っていた。


「お母様!」

「エスタ!」

「これはこれはエスタ王女様……安心してください。なにも手出しはしていません」

「ラビリス帝国……一体何の用ですか!」

「その用事も今終わったところですよ」


 レン・シュバルツはそう言いながらエスタ王女の肩に手を置き耳打ちで話していた。


「————」

「……ッ!?何をばかなことを!」


 エスタ王女は声を荒げてそういうが、レン・シュバルツは笑いながらその場から姿を消した。

 そしてそれと同時に、重力魔術が解かれ全員の身動きが取れるようになった。


「女王陛下……」

「……っく、めんどくさいことになったわね」

「我々は……協定を結ぶことを強く推奨します。」

「あの人物は危険です。確実に裏がある。ですが……逆らえばこの国が滅ぼされてしまう。私達はルマーニ女王陛下……そしてエスタ王女を第一優先に考えています。どうか……最良な判断を」


 その場にいたもの達が頭を下げる。ルマーニ女王陛下は彼らを見て、軽く溜息を吐く。

 ……が、エスタ王女は次の瞬間声をあげた。


「私は反対です。協定を結んでしまえばこの国の住民の命が危ない。道具のように扱い、殺されるのが落ちです。お母様……」


 真摯に言うエスタを見て、ルマーニはエスタらしくないと考えてしまう。

 いつもは確信があること以外は話さない娘なのだが、先程耳打ちで言われていたのも関係しているのか強く否定していた。

 ルマーニは頭を軽く押さえ、疲れをあらわにしながら言った。


「期限は一か月もあります。こちらのやれるべきことをやってみるのがまずはいいでしょう」


 そういって膝から崩れ落ちるルマーニを支えに行くエスタ。

 ルマーニの言葉にエスタは頷き、他の者たちもそれならと顔を合わせながら了承した。


————————————————————————


 ルーナを見送った俊介たちだったが、窓の外から鳥が手紙を加えて飛んできており……俊介の手に淡った。


 「なんだ?これ」


 裏返すとシーリングスタンプが貼っており、それを見たリーサとイリアは驚いた様子で口を開く。


「その紋様……ガウルド国のものですよ」

「確か今、ラビリス帝国と戦争するため準備しているだとか……」

「マジか!?そんな国がこっちに手紙を送るって事は……」


 早速いやな緊張感が走る。俊介は恐る恐るその手紙を広げて……読み上げた。


『魔王就任、おめでとうございます。わたくしはガウルド国の王女、エスタ・ワクタビアといいます。今現在私達の国、ガウルド国はラビリス帝国に狙われています。国の偉い人達もお母様も相手の協定を呑もうとしていますが私はそれを阻止したいのです。民を危険な目に合わせたくないのです。お忙しいとは思いますが、どうか……お力を貸してはくれないでしょうか。お願いします』


 手紙を読み上げた俊介はリーサとイリアの方に視線を向けた。


「二人はどう思う?」

「悪戯ではないでしょうけど……私はシュン様が行くのは反対です」

「わたくしも……イリアに賛成です。ですがガウルド国とラビリス帝国の現状も理解はできます」

「確か……戦争の準備とか言ってなかったか?」

「はい。ラビリス帝国が期限一か月で猶予を与え、協定を結ばなければ戦争になると……」

「それはあと何日だ?」

「二週間ほどしか……残されてないかと」


 リーサがそう口にし、俊介は口に手を当てて考える。


(イリアの言う通り悪戯ではなさそうだけど、国同士のいざこざに魔王が口をはさんでいいものなのか?)


 魔王であるものが口を挟んでしまえば……それこそルーナだったらきっとすぐに片は付くのだろう。

 そうでなくとも魔王がどちらかの国の肩を持つなど他の国が聞けばどう思うのか。

 かえって印象が悪くなってしまうのではないか。

 そこまで考えた所で、俊介はもう一つの質問をした。


「俺って魔王として認めてない国がいくつもあるんだよね?」

「……はい。そうですね……ガウルド国とラビリス帝国も確かそうだった気がします」


(わかってはいたし全然いいけどいざそうやってはっきり言われると傷つくなぁ)


 そんなことを心の中でつぶやきながら俊介は二人に真摯に告げる。


「俺は、エスタって人に会ってみたい。理由はどうであれ民を救おうとしている人を野放しにするなんてできない」

「シュン様……」

「ですが、魔王が口を出すということは……」

「わかってるよ。でも、魔王として認められてないんだったら大丈夫じゃない?それに、そこで解決して認めて貰えばいいだけの話だし」


 俺はそう言いながら自分の手を眺める。


「俺はルーナと違ってよそ者の人間で、こうして魔王になった人間だ。俺が魔界の人間で違う国にいたらなんでお前がってなってると思う。だから俺は魔界の魔王として、この世界で起きてることに対して首を突っ込みまくって魔界の事を知って、皆に認めてもらう。そうしなきゃ俺の夢は叶えられない」

「シュン様の夢というのは?」


 リーサとイリアは首を傾げて聞くが、俊介は少し気恥ずかしそうにしながら答えた。


「三つの世界が笑って暮らせる世界。そんな世界を俺は作りたい」


 その言葉に二人は驚くが、リーサは優しく笑い、イリアはいつも通りの表情に戻る。


「ものすごく、いい夢だと思います」

「シュン様にしてはいいんじゃないのでしょうか?」

「何それ褒めてるの?」

「わたくし共も……その船旅にお邪魔させていただきますよ!シュン様の夢がわたくし達の夢でもありますので」


 まさか、そんなことを言ってくれるとは思わなかった。

 心からの言葉に俊介は感動するが、二人に悟られないように我慢して笑いながら言う。


「ありがとう。二人とも」


 そう言われた二人は再度、驚きほんの少しだけ赤面する。

 俊介の心情に気づいていたが二人は気づかないふりをしていた。


「シュン様……実際にあってみるのもいいかもしれませんが、念のため最初は手紙を送って相手の出方を伺ってみるのはどうでしょか?」

「確かに……文章的に殴り書きっぽかったですし」


(二人の言う通りだな……ダメもとで送ってるだけの可能性も十分にあり得る。そこで何も返事をせずにガウルド国に行けば変な誤解を生んで逆に戦争の火種になりかねない。)


 俊介は二人の意見を呑み手紙を送った。内容はものすごくシンプルに。

 そしてその翌日、すぐに手紙が届く。

 そこに書かれていた内容は……


「すぐにガウルド国にいらしてください。私達は魔王俊介様を歓迎します。とのことです……どうしますかシュン様」

「他の場所で会えればそこがよかったけど、戦争をするかもしれないという国の王女が国を出るわけにもいかんしな。こっちが出向くしかないよ」

「行き方なのですが……ガウルド国は西側の諸国で行くのも時間がかかるかと……」


 リーサがそう口にすると、俊介はルーナから受け取った本を見せて笑みを浮かべながら言った。


「それなら大丈夫だ。任せてくれ」


 ルーナからもらった本は非常に便利で何でも書いてあった。

 色々な国への行き方。

 魔術に関してのあれこれ。

 そしてあとはこういう漫画が欲しいという事。

 最後のはいらないが、上二つはものすごくありがたい。


「ガウルド国の行き方はここからすぐそこにある湖の魔方陣を利用していけば一瞬で行けるらしい」

「なるほど!転送魔術ですか!」

「そういうことだ。魔王になった人しか使うことのできないものだから、移動手段はかなり楽だ。湖にある魔方陣の内容を変えれば他の国にも行けるらしい」

「そうと決まれば、早速行ってみましょう!」


 俊介はその言葉に頷き、ローブが俊介の体に自動でかかる。

 イリアはお留守番だ。かなり不機嫌にしていたがしょうがない。

 帰りは美味しいものを買ってあげよう。そんなことを考えながら俊介とリーサは、その湖まで足を運ぶ。

 何の変哲もない、ただの湖。右手を前に出し魔力を込める。するとその湖は割れて底に魔方陣が書かれてあった。


「すごいですね……なんですかこれは」

「ま、ルーナの気まぐれでしょ」


 なんとも粋な演出なのだろうか。自分が神にでもなった気分になれるその演出はルーナの漫画による影響かと俊介はジト目を向ける。

 実際の所は違うが、俊介とリーサはその魔方陣の上に立ち魔方陣に魔力を流し込む。

 すると光り輝きながら二人を包み、次の瞬間にはその魔方陣から姿が消えていた。

 二つに割れていた湖も何事もなかったかのように元に戻る。


「……うっ……ん」


 目を開けると、そこはガウルド国……ではなかった。


「どこですか?ここは……」


 リーサは少し戸惑いを見せるが、俊介は転送魔術が成功したと確信する。

 森の中に転送され、そのすぐそこは出口。

 そして前方には……国の正門らしき場所だったからだ。


「あれってガウルド国だよな?」

「そうですね……私はてっきりガウルド国の中に転送するのかと思っていました」

「俺もそう思ってたけど、まぁこっちの方が都合がいい」

「それってどういう……」


 俊介はそう言いながらすたすたと正門に向かって歩き始め、リーサは慌ててその後ろについていく。

 ガウルド国の正門には二人の兵士が立っており、見張っていた。

 きっと入国するには何かを見せなければいけないのだろう……だが俊介は魔王だ。そんなもの必要ないだろう。こういう時に魔王の威厳を使えばいい。

 俊介はそう思い、その意図を理解したリーサは「魔王様らしい!素晴らしい!かっこいい!かわいい!」そんなことを思っていた。


「今日も平和だなぁ……ほんとに戦争なんて起きるのかね」

「バカ……戦争って大きな声で言うなよ」


 二人の兵士はそんなことを言いながら前を向く……ゆっくりと歩き近づいてくる二人の影に二人の兵士は目を細める。


「と、止まれ!ここはガウルド国の正門……入国には許可証を見せてもらうぞ」


(なんて言おう……ぶっつけ本番でいいやと思ったけど、もしここで俺が魔王なんだけどって言ったらパニックになるよな?)


 そう思った俊介は頭を掻きながら口を開く。


「あの~入国許可証なんですけど————」

「も、もしかして……魔王様!?」

「た、確かに……よく見たらそうだ。でも何で魔力が一切感じないんだ?」


(よし、ローブの効果はちゃんと発揮しているな)


「バカ!頭を下げろ!」


 一人の兵士がもう一人の兵士の頭をガシッともって頭を下げる、俊介は頭をあげさせて説明をする。


「実は、この国に少し用事がありまして……通してくれたりできますか?」

「もちろんです!」

「魔王様なら何も問題ないです」

「ありがとうございます!」


(魔王ってだけでぺこぺこするの面白れ~……っていかんいかん)


 そんなしょうもないことを考えてる時間はない。

 俊介とリーサは開けられた門の中へと入っていき、無事にガウルド国に入国できた。


「ってか、なんで魔王さまなのに俺達に敬語なんだ?」

「さぁ?なんでだろ」


 二人の兵士は首を傾げるが、次の人物が来てその疑問はきれいさっぱりと忘れる……はずがなく————


「ねぇ、なんで魔王様がこの国に来てるの?」

「魔王様!就任おめでとうございます」

「ッハ、こんなやつ信用できるかよ。ルーナ様だったら大歓迎だったけどな」

「世界を守ってくれるのならなんでもいいよ」


 国に入るなり、ことは大きくなったいった。

 それは当然だろう。なんせ一つの世界の王が国に足を運んでいるのだから。

 そして面白いことに色々な人達がいた。

 歓迎するもの、懐疑的な目を向けるもの。

 何でもいいという人物まで。

 リーサはそんな人たちに威嚇するように鋭い視線を向けていた。


「ッヒ……すみません」

「シュン様を悪くいう奴は誰であろうと許さない」

「……これって、どっちが魔王なの?」


 リーサを魔王だという人も現れだした。

 確かに俊介から見てもリーサは恐ろしい。

 俊介以外に興味はなく、主が第一に考えているリーサ。

 前にルーナの事も叱ったらしい。リーサを作った本人でさえその圧に圧倒されて何も言えなかったとか。


「リーサ。あまり人を威嚇しちゃだめだぞ」

「申し訳ありません……つい」


 しゅん……となりながら反省するリーサ。

 少し歩くと駆け付けた兵士たちが驚きながらも槍や剣を俊介に向けながら口を開く。


「魔王……様が何故ここにおられるかはわかりませんが。一度城に来てもらいます」

「ああ、元々そのつもりだ」


 と、そこで俊介は一つの疑問が浮かび上がってくる。


(手紙では、歓迎するって書かれてなかったっけ?)


 そう。確かに手紙にはそう書かれていた。

 けれどガウルド国に足を運んでみれば歓迎はされていない。

 する人はいなかったが、こういうのは事前に来るっていうのを伝えないのか?

 直後、兵士の後方から女性の声が聞こえる。


「やめなさい!」

「ですが王女様……今我々は国を守るため……戦争にならないようにしているのです。魔王様を招けば他の国からも————」

「もう一度言います。やめなさい」


 その女性は兵士に命令し、向けていた剣を下す。

 俊介もリーサもすぐに理解した。

 この人物が、手紙の送り主……エスタ・ワクタビア本人だと。

 おして兵士を下がらせ、頭を下げながら謝罪をする王女様。


「すみません。ご無礼をお許しください。魔王様……」

「いいよいいよ……あなたがエスタさん……でいいんだよね?」

「はい。私はこの国の王女エスタ・ワクタビアと申します。この度は私の話に賛同していただき本当にありがとうございます。」

「ま、まぁ……ここで話すと目立つし、場所を変えませんか?」


 周りに人がいてそれをまじまじと見ている。

 一国の王女が頭を下げるという行動を魔王とはいえそうさせてしまっているのは申し訳ないという気持ちが込み上げてくる。

 それにこんな話はここでできるようなものじゃない。

 エスタも周りを見て、ゴホンっと咳払いをして頷く。


「そ、そうですね。場所を変えましょうか」


 俊介とリーサは場所を変え、城の方へと足を運んだ。

 エスタの容姿はとても美しかった。

 金色の長い髪に緑色の目。エメラルドのような瞳が人々を魅了する。

 まさに、王女様って感じの人だった。

 俊介は心の中で綺麗な人だなぁと思うが、リーサは何かを悟ってのか俊介を睨む。


(こっわ……なんでわかるんだよ。ローブ着てるんだよ?)


 心の中でそう呟き、全身に冷や汗をかく。

 リーサは「女の勘です」といいながらプイッと視線を逸らす。

 またしても俊介は恐怖を感じる。

 どうして心の中まで正確に読み取っているのだと。

 そうこうしているうちに城の中の一つの部屋……おそらくは客室だろう。

 俊介とリーサは客室へと案内され、扉を閉めるエスタ。


「ここなら問題はないでしょう……お母様や他の兵たちに何も言ってないので民たちはパニックになっていたのでしょう」

「やっぱいってなかったんかい」


 俊介はため息交じりにそう言って、ハッと……もう一度エスタの方に視線を向ける。


「お母さん……王女だから、女王様か。女王様たちにも言ってないのですか!?」

「え……はい。呼んでいいか聞けば絶対に反対すると思ったので……ダメでしたか?」

「ダメも何も……俺ものすごく悪者扱いされるんじゃないの?」


 俊介は視線を落とし、そう口にする。

 あの口ぶりから察するに、兵士や女王陛下に言えば魔王……俊介がこの国に来ることを公にすることになる。でもそれを避けたということは、この国の女王陛下は俊介の事をあまりいいようには思っていない。

 そして、これは王女様の我儘……ということになる。

 そう思えば思う程俊介は胃が痛くなるのだが……来てしまったのは仕方ない。

 この国の騒ぎようだ。すぐに聞いて駆けつけてくるだろう。


「大丈夫です。今お母様は他の国に足を運んでいて交渉中です。」

「あ、なるほど策士だった」


 ちゃんとお母さんがいない時を狙ってたらしい。

 兵士たちもエスタには弱そうだったし、これを知るのはきっと国に帰ってきたときか。


「それで、さっそく本題に入りますが……この国に力を貸してほしいのです」

「うん……まぁ、いいや。一回話を最後まで聞こうか」


 俊介は諦めてエスタの話を聞くことにした。

 女王陛下には、嫌われてもいいからこの国を守らせてくださいと……こちらから頭を下げれば問題はないだろう。

 俊介のその甘い考えは、二日後に消える事になるのだが……


————————————————————————


 ラビリス帝国、玉座の間。


「まだ協定を結ぶ気にはならないのか」

「はい。現在ルマーニ女王陛下は他国と交渉しているようです」

「なるほど……是が非でも戦争にならない道を選ぶか」


 にやりと口角をあげるレン・シュバルツ。

 玉座の間の扉が開かれ、レン・シュバルツの父親、ロウ・シュバルツが入ってくる。


「レンよ。お前の方は順調か?」

「任せてくださいよお父様……ガウルド国をわが手に収め、他の国も乗っ取る。そうすれば……次は魔王、ルーナです」

「うむ……わが野望を叶えるのはお前しかいない。レン。頼んだぞ」

「はい。心得ております」


 そう言って頭を下げるレン・シュバルツだが……父ロウ・シュバルツを睨むようにしていた。

 が、それに気づいたものは誰一人としていなかった。


————————————————————————


 ガウルド国の一つ隣の国……ヒューリー国。


「すみませんルマーニ女王陛下……我々もあなたの国とは仲良くしたいですが、それは呑み込めません」

「どうしてですか!もう、あなたの国しか頼れるところはないんです!どうか……どうか話だけでも聞いてはくれないでしょうか!」

「……すみません」

「……ッ」


 誰も、耳を傾けることすらしてもらえなかった。

 どうしたらいいのだろうか。

 どうすれば民を……国を、娘を守れるのだろうか。

 もういっそのこと……自分を売れば国は助かるのだろうか。

 この際禁術なんてどうでもいい。

 そう考えてしまう程にルマーニ女王陛下は心が弱っていた。

 一人の兵士がルマーニ女王陛下に近づき、聞いた。


「女王陛下……どうしますか」

「どうするもなにも……残りの期限は2週間程度……何もできずに国を渡すことになるのでしょうね」

「陛下……」


 女王陛下の言葉についてきた兵士たち全員が視線を落とす。

 もう、国が助かる道は途絶えてしまった。

 そう思った。

 ルマーニ女王陛下はその場から離れ、一人になろうとしていた。


「どこに……」

「少し、外の風に当たってきます」


 そう言って、ルマーニは外に出て風に当たる。

 隣国の王からも見放され、誰を頼ればいいのか。

 溜息を吐き、途方に暮れるルマーニ。


「こんな時、ルーナ様がいれば……こんな国同士のいざこざなんてすぐ解決したでしょうに」


 独り言つようにそういうルマーニ。

 直後、後ろから何やら気配を感じて振り返り、構えを取る。


「誰!?」

「そんなに警戒しないでください。自分はただの通りすがりの魔術師ですよ。」

「魔術師?バカにしないでもらえるかしら……魔界では魔術師が当たり前なのよ。私が聞きたいのはそうではなく、あなたが誰で何者か、どうしてここにいるのかを聞いているの」

「怖いですねぇ……ガウルド国の女王陛下にしてこの国の唯一の()()()使()()()……」

「……あなたは、いったい……」


 魔力感知がこうささやいている。

 いますぐこの場を離れろと。

 だが、それと同時に一歩でも下手な動きでもしたら殺されてしまう。

 ルマーニは同時にそう思った。

 そして帽子をかぶっていた男はその帽子を外し、紳士のようにお辞儀をしながら……


「さすが、危機感知能力にも優れているとは……国を救いたい。今もそう思っていますか?」

「当たり前です。民を……国を救うためなら何でもするわ」

「ほう……その言葉に二言はないですね?」


 顔を近づけてくるその男に、ルマーニは屈することなく頷く。


「いいでしょう……なら私が助けて差し上げましょう」

「そんなの、信用できるわけないじゃない」

「信用するしないはあなたの自由……ですがこのままでは、国は救えずラビリス帝国に奪われてしまいますよ?」


 わかりやすい挑発。そして言動。

 見るからに詐欺師のそれだ。

 所在も名前もわからない魔術師に自分は今から騙されるのはないかとすぐにわかった。

 けれど、民が、国が……救える可能性、望みが少しでもあるのなら……

 そう思うと、体が自然と……


「わかりました。話だけでも聞きましょう……」


 ルマーニ女王陛下は目を瞑り感情を押し殺すようにしていうのだが……

 その言葉に……男はにやりと笑った。

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