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二大魔王~魔王の護衛をしていたらいつの間にか俺も魔王として生きていくことになったので二人で世界を救うことにしました~  作者: Mini
第1章 二人の魔王 現界(現世)任務編

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魔王就任式

 魔王就任式当日……なのにもかかわらず、二人の魔王はいつもの変わらない日常を送っていた。

 ルーナは漫画を読み、俊介はトレーニングルームで自分の魔術を研鑽。

 今回はリーサがお供でついて言っていたのでその様子を見ていた。


「シュン様……本日は魔王就任式ですが緊張とかしないのですか?」

「ん?めっちゃしてるよ?」

「え?」

「え?」


 予想していなかった返答なのか、リーサは困惑する。

 俊介の心境はものすごく単純なものだった。


(気を紛らわすためにトレーニングルームに来ているなんて言えない……ってまぁ言ってるようなものか)


 トレーニング用で持ってきていた水筒を手に取って飲み物を飲む俊介。

 リーサはその様子を見てはかっこいい。可愛い。としか思わなかった。

 世話係のイリアは今何をしているのかと言うと、就任式で着る魔王の服を進捗しているらしい。


「魔王かぁ……現界の任務をやる前から公認するといってくれていたけど、思えば就任式なんてものがあるんだな」

「はい。伝統的なものですよ。前回はルーナ様が就任されたものなので」

「そこに俺も加わるって思うと……なんか変な感じがするな」

「そんなことはございませんよ。シュン様はこれからも魔界のために死力を尽くし、名を遺す魔王様になるのですから」

「ハハハ……買いかぶりすぎだよ」


 リーサは至極当然のようにいうが、俊介はその言葉に肩を竦める。

 魔王の自覚……自分でそう思うのは少し違うのかもしれないが、実感はわいてきている。

 きっと魔王就任式が終わればそれはさらに強まるだろう。

 俊介はどこか肩の荷がおりないなぁと感じながらその場に座り込む。


「大魔王様が、魔王ルーナが。天界人のリュカさんが認めても……他の魔界人は認めない人もいるだろうな」

「そんなことは……」

「あるんだよ。実際、俺も自分の事を認めてない。」


 認めれるはずがないだろう。

 現界であんなことが起こっていて。

 自分が魔王だと認めるのと、実感するのは違う。

 自分が魔王なんだと実感すればするほど、認めれるわけがないだろうと自分の中で卑下してしまう。

 それに、俺が魔王になることに対して単体的な意見があるのもわかっている。実際に聞いたわけじゃないが、いるのはわかる。中には自分も魔王になりたかった人、目指したかった人がいる。その中で俺と言う魔界人でもない現界人が魔王になったらそりゃ反感も買うだろう。その覚悟はできている。

 何人かルーナの仕事でついていったことがあり魔界の国の偉い人とも会った事がある。護衛とはいえそこに向けられる殺意や軽蔑、俺をした見ながらもどこか警戒していたというのも知っている。

 俺は座り込んだまま深いため息を吐く。


(シュン様……そんなことないですよといいたい。わたくしはシュン様一筋であなたしか見ていないと)


 でもそれとこれは違うというのも知っている。

 だから今わたくしが出来ることは沈黙。

 そしてこの人を支えること。それが私に与えられた使命。そして覚悟だ。


 少しの沈黙が続いたのち、俊介は立ち上がってトレーニングを再開する。

 一時間の魔術訓練。それが終わったら十分間の休憩……その後はリーサと近接戦闘訓練。

 そのルーティーンをずっとしていた。ルーナも他のメイドも俊介がものすごく努力をしているというのを知っている。

 俊介自身そうしなきゃ自分は認めてもらえない。そう思っていたからだ。

 何よりも自分が認めるため……と捉えることもできるだろう。何にせよ、俊介は毎日必死に努力した。

 能力値全てを100で捉えると、こうだ。


 俊介の能力値

 魔力総量 60

 魔力質量 100(限界突破)

 近接 58

 魔術総合 70

 雷魔術 97

 炎魔術 40

 水魔術 46

 風魔術 70

 重力魔術 66

 操魔術 52


 この数字の中、とくに魔術面においては点数が低いから弱いというわけではない。

 点数が低いのは攻撃力はものすごく高いが制御ができていないもの。

 飛ばす制御はできているが威力の制御ができないもの。

 このどちらも該当する。炎魔術が前者で後者が水魔術だ。

 それでは次に、ルーナの能力値を見てみようか。


 ルーナの能力値

 魔力総量 82(魔力が完全に戻れば100)

 魔力質量 93

 近接 90

 魔術総合 97

 雷魔術 94

 炎魔術 100

 水魔術 100

 風魔術 100

 重力魔術 100

 操魔術 100


 色々な応用が出来れば様々な魔術を多用することが出来る……が、これは単なる能力値。

 そこに土壇場での判断力も加味するとやはり三つの世界を合わせても最強はルーナだ。天界人……特に大天使のものたちがルーナといい勝負をするかもしれない。


「ま、今日は早めに切り上げるか」

「それがいいかと。そろそろ服の仕立ても終わることでしょう」

「なんでちょっと息が荒いんだよ」


 ハァハァと言いながらまだかまだかと言わんばかりの表情を見せるリーサ。

 俊介はジト目を向けながら言った。


「何それは素なの?」

「素……とは?わたくしは思っている事しか言いませんし感情に出しませんよ」

「あ、じゃあそれがデフォルトなのね」

「はい!シュン様に対する愛は誰にも負けないという自信があります!」

「はいはい……俺をそんな目で見てるのはリーサぐらいだよ」

「グハッ……と言うことは、わたくしが正妻ということでよろしいのですね?」

「誰がそんなこと言ったよ」

「シュン様もわたくしの事が大好きで仕方がないのですね!?」

「ごめんもう黙れ」

「ウグッ……ありがたきお言葉」


 俊介は呆れた表情でリーサを見つめ、リーサはそのまなざしにも屈せず自分を貫く。

 少し、そんな彼女がうらやましいと思ってしまう俊介なのであった。



 部屋に戻るとマスコットサイズのルーナが漫画を読んでいた。

 

「お~、お帰り~もうすぐ就任式だぞ~」

「うん……ルーナも出るの?」

「当たり前だろ。俺がお前を二人目の魔王として就任するんだから」


 そう言われてすぐ納得する。


(確かに……大魔王様はあの場所から出ない?出れないからそうなのか……)


 大魔王様の存在は魔界の人間全員が知っているが、見たことがあるのは数少ない。

 だからこそ都市伝説のように思ってる人がいてもおかしくはない。

 それでも魔界の魔王はルーナなのだから関係ないかと再度、納得し自己解決する俊介。

 

「すみません。少し遅れてしまいました。」


 そう言いながら、慌てて部屋に入ってくるのはイリア。その後ろには数名のメイドがおり、白い布で覆いかぶさった何かを持ってきていた。

 ルーナとナーシャは来たかと、そちらの方へと視線を向けて俊介は少し首を傾げる。リーサは自分の両手を握り胸の前で息を荒くしながら今か今かと待ち構える。


「……それは?」


 俊介は指をさしながらイリアに聞いた。

 するとイリアは鋭い目つきで、話し始めていた。


「は?忘れたのですか?あなたが魔王就任の際に着る服に決まってるじゃないですかバカなんですか」

「あ、あ~!はい。ほんとすみません」


 忘れていたわけではなかったが、そんな大事に持ってきてもらうとは思っていなかった。

 イリアは「まったく、これだから……」と言いながらももじもじする。


「すごくかっこよくできたのですよ。」

「お、おう……そうか」


 本日もイリアの情緒が読めず困惑する俊介。

 ルーナはマスコットキャラのサイズのまま、宙に浮いて俊介に近づく。


「なぁなぁ!早速来てみろよ!」

「う、うん……そうだね。じゃあ着てくるよ」


 俊介はそう言いながらすぐ横にある更衣室で着替える。

 といっても、俊介はどんな服が着ていたのかは知っている。何故なら俊介がオーダーメイドしたものだったからだ。

 あまり目立たない服装。それが俊介の要望。ルーナは基本ベースが白でできているのでその逆の黒でお願いした。

 着替え終わった俊介がそのカーテンを開ける。

 言わずもがな、全員がパァっと表情を明るくして俊介の事を褒めていた。


「シュン様!すごくお似合いですよ!ええ、ええ、それはもう魔王様です!さすがわたくしの魔王様です!」

「シュン様、すごく似合っております」

「よかったですね。シュン様」


 リーサは限界突破したのか俊介に近寄りまじまじとその衣装を見る。ナーシャとイリアは俊介の姿を見て敬意を示していた。


「やめてよ二人とも。いうても護衛の時に来てた服装と変わらないだろ?」

「そうですが、性能が違いますよ。こんかいのはシュン様特性……あなたが着ないと意味のないものなんですから」


 ナーシャはそう言って俊介は少し照れてしまう。

 ……が、そんなことはお構いなしにまじまじと見ていたリーサが少し不思議そうに声をあげる。


「この紺色のマント?ローブの性能が少し特殊ですね」

「あーそれね。前の黒いマントは俺が魔術を使えないというのもあって全てを跳ね返す性能だったんだけど、今回のは違う。」

「そのマントで受けた魔術を解析し、自分流にアレンジできるというものなんだろ?」

「そういうこと」


 ルーナがどや顔交じりに説明をする。いつもの姿ならかっこいいのだが、マスコットキャラのままそれをされると少しむかつく。というか可愛いという声も上がるのではと思う俊介。

 どうしてこのローブの性能にしたのか……答えは簡単だ。

 単純に魔術の事をもっと知りたかったからだ。と言うのは簡単だけど、このローブを使える機会なんてあまりないだろう。

 自分で触れた方が理解も早いし。

 だが一応……念のため。多分重要なのは自分流にアレンジができるという点だろう。

 それと……もう一つ。


「そのローブ、他にも何か仕掛けがあるのですか?」

「ああ、まぁ見てなよ」


 俊介はそう言って、少し離れた場所にローブを置く。

 そしてもっと離れてドアの前に立ち、片手を前に出す。すると……離れていたローブが俊介の魔力に反応して近寄り、ローブが俊介の肩にかかる。


「ま、手を伸ばさなくても魔力信号を送ればある程度の距離なら勝手にこうやって来てくれるってわけだ」

「すごい便利なものですね」

「……ッ!?」


 ルーナは気づいてしまった。あまりの自然さにスルーしてしまう所だった。

 俊介がそのローブを羽織っている間。体に纏っている魔力が見れないのだ。


「お前、魔王になるんだから隠さなくてもいいんだぞ?」

「念のためだよ。魔王と言っても俺の事を下に見てる人はいるでしょ?それに、まだ魔力制御が完璧じゃない。変に威嚇されてるって思われても嫌だしね。まぁ大丈夫だよ。隠しているだけで体に魔力は常に纏っているから。」

「ふ~ん。ならいいんだけど」


 これが、俊介の特注オーダーメイド。魔王と言うにはいささか疑問があるが、今はこれでいい。

 魔力の制御に関してはルーナから常に体に薄い魔力を張ることと言われてきてそれを維持してきたが、魔力の質量が多いとどれだけ薄く張ってもその力量がばれてしまう。なのでローブを羽織っている間はどれだけ魔力を放出していても他者から見えることはない。

 俊介は今後のためにもある程度の実力は隠すという方針で行くらしい。


(ま、相手からは魔力がゼロにも見えるから隠しているってすぐばれるかもだけど……)


 そう思いながらも、就任式の時間がやってきた。

 外にはものすごい住人の数がいる。

 その場にいなくても映像で全魔界で今回の就任式は公開される。

 国の国王、女王、全員が今回の就任式を見届けるのだ。

 そして忘れてしまいがちだが、このマスコットキャラが……この魔界を仕切る魔王ルーナ・サタン・ヘラニカなのだ。


「準備はいいか?シュン」

「うん」


 マスコットキャラから普通のルーナに変身して、バルコニーの前に立つ。

 この場にいる全員が気づいていた。住人が向ける熱。そして声。

 結構な高さにいるのに、それが全て伝わってくる。

 俊介は固唾を呑み込み、頷く。


「ナーシャ、リーサ。頼む」


 ルーナの言葉に頷きながら窓を開けてそのバルコニーへと足を運ぶルーナ。

 すると、窓を開けたせいなのか……先程までよりもものすごい歓声が聞こえてくる。

 

「皆のもの!今日は先日宣伝した通り、新たな魔王が誕生し……今日、その魔王を皆に紹介したいと思う!」

「「「おおおおおおおお!」」」

「早く見せてくれ!」

「前代未聞の二人目の魔王!」

「ルーナ様!かっこいい!」


 ルーナは振り返り、俊介を見る。

 俊介はゆっくりとバルコニーの外へと足を運ぶ。

 やはり、ルーナはすごい。いつものルーナを知っているから猶更、魔界の魔王であろうとするルーナはカリスマ性を感じるのはもちろん、尊敬される人物なんだと改めて理解する。


「こいつが!俺と同じく魔王としてこの魔界を守ると決めた男!燈俊介だ!」


 ルーナの紹介に、その場にいるものたちは雄叫びをあげ……その熱が直に伝わる。

 歓迎してくれていると思っていいのだろう。少なくとも……今、ここにいる人達は異論はないらしい。

 民を見下ろし、その様子を肩を竦めながら見る俊介。ルーナは軽く背中を押していった。


「ほら、皆に挨拶しろ。他の国の奴らも見てるからな」

「わかってるよ」


 そして一歩前に出て、軽く咳ばらいをする俊介。すると下にいる民たちは声をあげるのをやめ、俊介の第一声をまっている。

 

「紹介にあずかりました。燈俊介といいます。皆さまご存じの通り、元々は魔王ルーナ様の護衛でした。ですが今はこうしてルーナ様と肩を並べる魔王として、立たせていただいています。中には認めない人もいるでしょう。それら全てをぶつけて貰っても構いません。自分は、それを受け止め魔王として認めてもらえるよう死力を尽くしてまいります」


 なんとも堅苦しい挨拶なのだろうか。自分で言っていて恥ずかしくなってきた……が、これでいい。

 民たちは数秒の沈黙が続いた。

 それはきっとローブを着ているせいだろう。

 正確な魔力量、質量が分からないのだから当然困惑する。

 だが、こんなにも誠心誠意を込めて話すところを見てしまっては、応援したくなるというものだ。

 数秒続いた沈黙が、すぐ歓声で埋まる。


「期待しているぞ!魔王様!」

「魔王俊介様!」

「ルーナ様が認めた男なんだ!俺達が認めなくてどうする!」

「「「俊介様!」」


 何度も自分の名前が呼ばれる。歓迎してくれる民に少しホッとする俊介。

 ルーナは笑いながら俊介に言った。


「ったく、堅苦しすぎだっての!みんなはこの日を待ち望んでいたらしいぞ」

「そうだと、いいな」


 その後ろにいたメイドたちは目頭に涙を浮かべて感動していた。


「うう……シュン様!魔王就任おめでとうございます」

「これからも私達でサポートしますので、いつでも頼ってくださいね」

「そうですよ。魔王シュン様」

「ありがとう。みんな」


 俊介はメイドたちに感謝し、城の中へと戻る。

 ルーナは民、そして他の国たち向けて話していた。


「シュン……いや、俊介が魔王になった理由はほとんど俺にある。文句が言いたいやつは全部俺に言え。間違っても俊介に矛先を向けるな。お前らが思っていることも十分にわかる。だから頼む」


 下にいる民……いや、映像で見ている国のもの達に向けていっているのだろう。

 俊介の子の魔王就任をよく思わない奴がいるというのも知っている。

 だからこそ、その重荷を担うためにルーナは言ってくれていたのだ。

 

(ルーナ……)


 俊介はもっともっと強くなって、魔界の人たちに認めてもらえるようにならないと。

 そう思いながら自分の手を強く握った。


「以上、魔王就任式だ。今日は祭りだ!みんな思う存分楽しんでってくれ!」


 そう言ってルーナも城の中へと戻っていった。

 下にいる民たちはどんちゃん騒ぎ。祭りと言っても屋台があるわけじゃない。

 外で酒を飲み、新しい魔王誕生をみんなで祝おう。そんな日だ。

 元々はちゃんと祭りのようにするつもりだったが現界から帰ってきてすぐだったこともあり間に合わなかった。

 ルーナはいつか絶対に民の皆とどんちゃん騒ぎするぞと心に決める。


 城の中に入るなり、扉が開いて一人のメイドがルーナに駆け寄った。


「ルーナ様。大魔王サタン様がお呼びです。」

「父さんが?わかった。すぐに向かう」


 少しめんどくさそうにしながら向かうルーナを俊介は見ていた。


「……」


 そして、無事……魔王就任式は終了した。


——————————————————————————


 ラビリス帝国……玉座にて。


「フッ、こいつが新しい魔王……ねぇ。どうして魔力を隠す必要がある」


 付き人に視線を向けるラビリス帝国の王。レン・シュバルツ。

 付き人は首を左右に振りながら答える。


「わかりません。詳細は不明です」

「なるほど……隠しながら魔王をするということか。はたまた魔力の制御ができていないのか。どちらにせよ理解できぬな」


 頬杖を突き、鼻で笑いながらその映像を着る国王。

 そしてその場から立ち上がり、付き人に問うた。


「ガウルド国の協定破綻に伴い、俺達は戦争をする。ガウルド国を手に入れれば他の国も手出しはできない」

「宣戦布告をなさると……」

「そういうことだ。新たな魔王も誕生したことだし、この魔界では問題が無限に起きるということを見思って知ってもらわないとな」


 「クックック」と不敵な笑みを浮かべながら玉座から離れるレン。

 そしてその後ろに続く付き人。

 レンはその場にいる兵たちに待機命令を出し、玉座の間を後にした。


——————————————————————————


 ガウルド国にて。


「陛下……いかがなさいましょうか」

「新たな魔王誕生……そしてこれはほとんどの国が見過ごせないでしょうね。ですが我々はそれにかまっている暇はないのです。おそらくラビリス帝国はこの国を手中に収めるため宣戦布告を仕掛けてくるでしょう。向こうの兵は2万を超える……ですがこちらは……」

「兵力、1万人ほどが限界かと。」

「そうですか。ですがそれでこの国を渡す理由にはなりません。戦争の準備を!」


 ルマーニ女王陛下の指示のもと、兵たちが一斉に動き出す。

 そしてその娘、エスタは自分の部屋で魔王就任の映像を確認していた。


「これが……新しい魔王様」


 その瞳は、確かにキラキラと輝いていた。

 英雄……救世主を見るように。

 そして自分の置かれている状況に視線を落とし、それと同時に映像がプツリと消える。


「この国は絶対に……渡したくありません!」


 拳をぎゅっと握りながらそう、吐露するエスタ王女であった。


——————————————————————————


 俊介たちが住むルーナ国のすぐ隣……隣国のレスパージ国では……


「新しい魔王が誕生したぞ!」

「これはめでたい!」

「すぐにお祝いの品を届けねば!」


 国王のスタックは新しい魔王誕生を心の底から喜んでいた。


 そしてそれはこの国だけではなく、はるか遠いザンクローネ国でも同様。

 全部が全部妬み恨むのではなく、嬉しさをあらわにする国も多々あった。

 だが、それは妬み恨んでいる国の数には及ばない。圧倒的に批判の声があげられる国の方が多かった。


——————————————————————————


 ルーナは父、大魔王サタンがいる場所へと足を運ぶ。


「来たか。我が息子よ。」

「それで、話ってなんだ?父さんも見てたんだろ?就任式を」

「ああ、見ていた。実にお前らしい演説、就任式だった」


 思ってもいないことを口にするサタンに少しの苛立ちを見せるルーナ。

 

「さっさと本題に入ろうぜ。んで、なんだよ」

「しばらくお前はこの魔界から離れ、天界に行くことが決定した」

「は?どうして急に……」

「現界での事。それは天界でも起きているというのは知っているだろう?」


 そこまで言われてルーナは昨日の大魔王サタンとの会話が終わった俊介の態度を見て納得した。


「シュンも俺が天界に行くことは知ってるんだな」

「そうだ。どうやらちゃんと言わなかったらしいな」

「なんかあるとは思ってたけど、そういうことかよ」


 ルーナは軽く舌打ちをして大魔王サタンの方へと視線を向ける。

 俊介はおそらく、このことを聞いていた。だから急いでいるようにも見えたんだ。

 けれど問題視するのはそこじゃなかった。

 どうして自分が天界にわざわざ行かないといけないのか。そこだった。


「んで、俺を天界に送るって事は現界よりもひどい状況って事なんだな?」

「ああ。この案件は魔王であるお前にしか頼めないことだ」

「……わーったよ。大天使共にもこのことは伝えてあるのか?」


 ルーナがそういうと、背後から扉が出現し……そこから大天使が一人、リュカが姿を現す。


「知ってるよ。それに、推薦したのは俺だしね」

「リュカ……テメェどういう風の吹き回しだ?」

「いやいや、俺は最善を尽くそうと思っただけだよ?天界のためにね」

「ッチ、思ってもねぇことを」

「やだな。俺の事をそんな目で見るなよ。な?もう一度昔みたいに呼んでくれよ。」

「うっせ黙れ」


 リュカの態度。いつ見てもハナにつく。

 天界のためになんて思ってもいないことを口にして、極め付きは俺を推薦したこと。

 絶対に裏がある……と確信はするがもう決まってしまった事なので仕方がない。

 軽く溜息を吐いてからルーナは大魔王サタンに視線を向けて口を開いた。


「それで、いつだ。いつ天界に向かえばいい」

「今日から三日後だ」

「三日後……か。わかった。用件はそれだけだな?」

「ああ。もう下がっていいぞ」


 そしてすぐ、その場からルーナの姿は消え、リュカと大魔王サタンが残った。


「本当によかったのかい?天界に足を運ぶって事はそれなりの時間拘束させることになる。この魔界をあの子一人で任せれるとは到底思えない」

「それを含めて俺はルーナにお願いした。もし俊介が死んだのならそこまでの魔王だったということだ。」

「まったく、隙がねいねぇ……お父様は」


 両手を軽く上げて苦笑するリュカに、大魔王サタンは笑みを浮かべる。


「お前お気づいているのだろう?俊介の力には」

「まぁね。それを試すためにルーナと俊介君を引きはなすという選択をしたのだから。」


 そう言って、にやりと笑みを浮かべるリュカ。

 

「それじゃ、俺も帰るよ。仕事が溜まってるのでね」

「ああ……またな。我が息子よ」


 大魔王サタンはそう言うと、その場から姿を消しリュカも扉に入って天界へと戻っていった。


——————————————————————————


 天界、エルフの国……にて。


「皆さん!今すぐ逃げるのです!自分の命を第一優先に考えてください!」

「長も早く逃げてください!」


 緑の大自然が赤く、炎に包まれる。その仕業と予想できるのは魔物。

 天界人が魔物へと変貌して暴れている。

 それはエルフの国だけでなく、天界各所で多発している。

 暴れている魔物の等級はSランク。大天使が来てやっと解決できるもの。

 そして12の大天使では手に負えず、序列第7位のリュカは魔界の魔王……ルーナに助けを求めた。


 エルフの国は住人が少ないので全員が逃げ切れたが、最後まで残って戦っていた長がボロボロの状態で発見された。

 彼女の名前は……アグラエル。

 ボロボロの状態で発見され、大天使の一人によって保護された彼女はのちに目を覚ます。

第一章 これにて完。

明日から第二章です

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