帰還
俊介とルーナが現界に行く前日。
大魔王サタンにルーナは呼び出されていた。
「それで、わざわざ俺だけを呼び出したのにはなんだ」
「現界に行ったら、お前はあくまで俊介の付き添い。変に手を出すなよ」
「は?なんで」
「魔王としての素質を確かめたい。言っている意味がお前にはわかるだろう」
大魔王サタンの目がギロッとルーナの方に向く。
瞬間、緊張が走る。
当然、父が言いたいことは理解できるし、その意味も分かる。
(父さんは感情だけで動く魔王じゃない。利益も何もいらない。欲しいのは魔王たる素質がある奴だけ。そしてそいつがこの三つの世界にどんな影響を与えるのか。)
俊介はきっと、ここから成長すればルーナをも超える魔王になるかもしれない。それを大魔王サタン……そしてルーナ本人が自覚している。
ルーナは大魔王サタンの方へと視線を向けながら、その理解を示しつつも問う。
「父さんが言いたいことは分かる。要するに結果が欲しいんだろ?この世界は現界よりも広い。当然俊介の魔王就任をよく思わない連中もいる。そのための今回の仕事……そうだろ?」
「ああ、そうだ。今現在現界で起きていることは普通の魔界人じゃ到底解決できない内容。これを解決すれば認める。という奴もいる。いいか?くれぐれも下手に手を出すなよ?」
実の父親である大魔王サタンに、ルーナは鋭い目つきで口にする。
「いいぜ。だが俺に害がある人物、俊介に万が一……命にかかわることが起きたら俺は迷わず助ける。たとえそれで任務失敗になろうとな。」
父親の言い分が分かったと伝えながらも自分の意志は曲げないルーナ。
サタンはハッハッハと笑いながら了承した。
「まったく、お前のそういう性格は誰に似たんだか……いいだろう。交渉成立だ。くれぐれも、へまはするなよ」
「誰に言ってんだよ」
ルーナはそう言いながら姿を消し、大魔王サタンの部屋から出て行った。
そして……大魔王サタンはぼやくようにして呟いた。
「現界人の魂……マナと呼ばれるものに関して完璧に近い答えを導き出した人物が現れるとはな。もうそろそろ私が知らない術、人物が出てきてもおかしくはないか」
その現界人の魂、マナの答えを導き出したのは宮野景子……俊介の母親だった。
結果こそは残念だったが、大魔王サタンからすればそれは初めてのもので面白い観点だと思っていた。
その内容を知っているのは俊介、ルーナ、大魔王サタンの三名。天界人が知るのはもう少し先のお話である。
◇
ルーナ、俊介、イリア、リーサは身支度を済ませ、魔界の時と同様現界に繋がる扉に足を運び、家に残っているメイドたちに別れの挨拶をする。
「それじゃ、俺達は魔界に帰るけど……この家のこと、お前たちに頼んだぞ」
「お世話になりました。」
「「「シュン様、ルーナ様。どうかお元気で!」」」
リーサとイリアは他のメイドたちにゆっくりとお辞儀をして、他のメイドたちは四人を見送った。
一瞬のようにも、長いようにも感じる亜空間移動。
現界の空気とは一変し、どよめいている空気を感じてルーナと俊介は魔界に帰ってきたんだと実感する。
そして、扉の前には……ルーナと俊介の直属メイド。ナーシャが立っていた。
ルーナはすぐに笑顔で挨拶をする。
「ただいま!ナーシャ!」
「おかえりなさいませ。今回は意外と早かったんですね。」
「ま、今回は意外とラッキーな部分が多かったな。」
「シュン様も……よくご無事でお戻りになられました。」
「ありがとうございますナーシャさん。そちらはお変わりはないですか?」
「そうですね。これと言って魔界は変わらずです」
ルーナと俊介と話すナーシャ。その後ろでリーサはナーシャに向けてものすごく威嚇するように見ていた。まるで飼い主に近づくなと言っている犬のように。
後ろからものすごい殺気のような嫉妬のようなものが俊介にも伝わり、少し困惑しながらナーシャに紹介しようとするのだが……。
「ナーシャさん、こちらのメイドたちは————」
「ルーナ様から聞いています。本日からあなたの直属のメイドとしてこの魔界についてきたと……」
「あ、話していたんですね……って、え?直属メイド?それは俺が聞いていないのですが」
俊介は戸惑いながらルーナの方へと視線を向ける。ルーナは誤魔化すようにできてもいない口笛をし、後ろの二人も驚いていた。リーサに関しては多分嬉しがっていたと思うが……。
イリアは「なんで私がこんな人の世話なんか……」といいながらも内心嬉しいのを隠しきれていない。
ナーシャは「ルーナ様……」と手をおでこにあてて呆れた様子をしていた。
「二人を連れてきたのは、俺の直属メイドになるってことでいいのか?」
「あ、まぁ……うん。厳密にいえば直属なのはリーサで、イリアは世話係って感じだな」
「だから、なんでそれを言わないんだよ」
「あの、シュンさん?敬語が抜けていますよ?」
「敬語を外せといったのはルーナだよな?なら、この今の状況は何も悪くないってことだよな?」
「あの、はい。ほんとすみません……別に忘れていたわけじゃないんです……よ?」
なんと、びっくりなことに立場が逆転したように見えてしまうメイド陣。
ナーシャは俊介が敬語じゃないことに驚いていたが、それだけじゃなかった。
あの魔王が、もう一人の魔王とはいえ押し負けているという事実。
どちらが悪いかなんて言わずもがな。
だがしかし、俊介はこんなにもルーナに対して強いのかとメイド陣営は認識した。
「おい、見てないでお前ら助けろよ」
「さすがわたくしの主様です!」
「自業自得ですね」
「私は知らない。何も知らない。」
「お前ら……マジで……」
見捨てるメイド陣。そしてゆっくりと近づく俊介。ルーナは大声をあげて謝るのであった。
そこからどうしてリーサとイリアを連れてきたのか、今後の動きも含めて色々と俊介に話していたルーナ。
「つまり、次の任務や今後のためにリーサ達は必要だと……」
「そういうこと」
「まぁ事情は分かったけど、なんでそんな急なの?って、別に急ではないか。」
俊介は首を傾げながらルーナに聞くが、ルーナは肩を軽く竦め……視線をあちこちに飛ばしながら口を開く。
「この任務が終わり次第、お前は魔界で大々的に報じるつもりなんだよ。いわゆる魔王就任式ってところだな。そんな男が直属のメイドの一人や二人、いないと格好がつかないだろ?」
「今魔界ではもう一人の魔王が誕生したっていうことしか報じられていないか……」
「そうそう。今回の任務はそう言うのもあってお前に任せてたってわけ」
「ふ~ん。そりゃ信用していない魔界人もいるか」
なんか饒舌に話すなぁと思いつつも、別にそれ以上は何も聞かなかった俊介。ルーナはそれに少し安堵しながら、イリアとリーサに視線を向ける。
「って事だ。これからシュンの事よろしく頼む」
「「任せてください」」
なんと頼もしいんだ。ツンツンしていたイリアとデレデレしていたリーサが、こんなにも真剣な表情になっている。当然のごとく、二人の心の中は嬉しさでいっぱいなのだが。
(ま、それだけじゃないけど。今はまだ黙ってても平気か)
心の中でそう呟きながら、ルーナは自分の部屋へと戻っていく。
そして俊介たちも部屋に向かおうとして、先頭にいたナーシャが振り返る。
「ちなみに、私との近接戦闘は通常通り行うのでご安心を」
「ッ……やっぱりあるんですね」
俊介が少し残念そうにしていると、その後ろにいた白髪の赤い瞳がきらりと光り……ナーシャに近づきながら言った。
「それならご安心を。わたくしも近接戦闘が出来ますので!」
「あら、あなたはルーナ様が創った方ですよね?私はオリジナルですので問題ないかと」
互いが睨み合いながらばちばちと電気走る。
その様子を見ながら俊介とイリアは間を通る。
後ろからギャーギャー言っている(ほとんどリーサが騒いでナーシャは冷静にいなしている)のを聞きながら、俊介はイリアに話しかけていた。
「別に、いやなら無理にしなくても大丈夫だからな?」
「は?誰がいつ嫌だって言ったんですか。あなたはバカですか?それとも私にお世話係はしてほしくないのですか?」
「いや、超してほしい……です」
「ならいいんです」
(こっわ。ほんとに怖いし表情と言動が合ってないんだよな)
本当にいまだにつかめないのはイリアだ。めちゃくちゃ冷たい目線を向けて罵倒しながらもそこには照れも入っていて、なんなら悪意は何も感じない。いったいどんな情緒なんだと思うことが多すぎるメイドさんだ。怒らせないでおこう。
そう思ったのもつかの間、今度はイリアから話しかけられてしまう。
「そういえば、お体の方……主に体調面はもう大丈夫なのですか?」
「あ……うん。そう、だね。万全ってわけじゃないけど、落ち着いてるよ」
「そうですか。何かあればすぐに言ってくださいね。」
「……ありがとう」
「いえ。メイドの務めですので」
ごめん。本当にわからん。ねぇなんでそんなに急に優しくなったの?怖いから表情は見ないようにしてたけど、なんでそんな急に俺の事心配しだしたの?
何が何だか分からず体をびくびくさせ怯える。
ツンデレというのはこういうことなのか?それにしては落差が凄すぎるんじゃないのか?
教えて!有識者さん!
(って……俺は何やってんだ)
俊介は片手で顔を覆いながら軽く溜息を吐く。それを不思議そうに見ていたイリアだったが、ルーナのいる部屋につきその部屋に入る。
当然、ルーナは自分の漫画を読んでげらげらと笑っていた。
(全く、呑気な人だな。この人は)
ただその呑気さに助けられていることもある。それは今もだ。
変わらない日常。それを目にするだけで今の俊介にとっては心が和らいでいた。
先程のメイドたちとの会話だってそうだ。
全員が全員、俊介の事を着にかけてくれていたというのは本人である俊介にも伝わっていた。
それを少し申し訳ないと思っていたが、俊介がもし逆の立場だったら同じことをしていただろう。
だから、今はその空間がとてもありがたかった。
「よっこいしょ。」
俊介はルーナが寝転がっているソファの反対に座り、視線を落とす。
「……」
あの選択が今でも間違った選択だとは思っていない。
夢なのか精神世界なのか、両親とも話せて前に進むと覚悟も決めた。
でもふと思い出してしまう。
自分が人を殺してしまった事。そしてそれが母親であったこと。
あの場面を何回、何十回と繰り返しても同じ選択をしていたと思う。
嘆いても仕方がない。そんなことは分かってる。
でも、今でも手が震えるんだ。
父は俺の手の中で死んだ。その感触も……母親の首をはねた時の感触も。全て鮮明に覚えている。この手が覚えてしまっているのだ。
それを払拭するように握り、深く……深く深呼吸をする。
(ま、そんなにすぐ立ち直れる訳ねぇか)
ルーナは漫画を読んでいるふりをして俊介の様子を見ていた。
きっと俊介は、このことを一生引きずっていくのだろう。
別にそれが悪いとは思わない。むしろ強くなるきっかけになるだろうとルーナは思っていた。
「おい、シュン。そう言えば父さんが呼んでたぞ」
「え?」
「きっと魔王の就任式の件と今回の任務の事、あとはその先の事を話されると思うけど……今は行けそうにないか」
「いや、行く」
「別に急ぎってわけじゃないんだぞ?」
「わかってる。それでも、行く。その感じじゃ、俺一人って事だよね?」
「う、うん……」
やはり今これを言うのはしくじったか。俊介のその精神状態で大魔王サタンに会うのは危険だと判断するが、体に纏っている魔力も、感情を読み取っても特段変な感じはしないので考えた末に軽く溜息をして見送った。
「心配だな……」
そう独り言つルーナ。今この部屋には誰もいない。他三人のメイドは別の事をしている。
ルーナは手に持っていた漫画を読み直す。
◇
一人で来るのは初めての俊介。扉を開き、その奥へと進んでいく。
(前来た時より魔天魂が薄く感じる気がする。)
否。魔天魂が薄くなっているのではなく、俊介がその魔天魂に耐えうる魔力を纏っているというのが正しい。
当の本人がそれに気づくまでまだ時間はかかるが、魔力の質量だけじゃなく、総量も徐々に増えていってるのは俊介もルーナも気づいていた。
「ついた。やっぱ緊張するなぁ」
引き返そうと、するが……先程よりも強い魔天魂を感じ、目の前に大魔王が来ていると理解した俊介。
そして、大魔王サタンは声をあげた。
「よく来たな。新たな魔王……俊介よ。」
「……ッ!?」
わかっていた。今目の前にいたことは。それなのに大魔王サタンの声を聴いた瞬間どことなく寒気を感じてしまった。
依然来た時はルーナと一緒だったため、そういう負のものはルーナが一掃していたとすぐに理解する俊介。そして大魔王は笑いながら今回の任務について労っていた。
「まずは、現界の任務ご苦労であった。お前が主犯を殺したおかげで現界の危機はひとまず去った。これでお前も晴れて魔王。明日魔王就任式を開こうと思う。」
「ありがとうございます」
俊介は睨みながら言う。
大魔王は首を傾げながら口を開いた。
「嬉しそうじゃないな」
「当たり前です。分かっていましたよね。全てわかったうえで……主犯、俺の母親を殺させたのですよね」
ぎゅぅっと握られる拳。みしみしという音が響く。
大魔王は俊介に思ってもいない謝罪をしながら話を続ける。
「すまない。だが、魔王になるというのは……魔界人になるというのはそういうことだ。それ相応の覚悟を見せろと。お前が前に言った事、覚えているよな?我はお前を試した。そしてお前は達成させ正式に魔王になることを許可した。それだけの事だ」
納得いかない。今すぐにでも殺したい。そう思ってしまう程俊介の心は憎悪で満たされていた。
だが、大魔王の言っていることは分かる。感情で動くのは得策ではないと察してその感情を押し殺す。
「ほう、我を憎まないのか」
「憎むも何も、両親ですが両親じゃない。ですが俺はいつかあなたを超える魔王になりますよ」
俊介のその言葉に、大魔王は声をあげながら笑っていた。
突拍子もないその言葉が大魔王に刺さった。
「ハッハッハ……面白い。その時を楽しみにしている」
俊介の目は覚悟で決まりきっており、大魔王は数秒目を閉じる。
大魔王サタンは今回も依然したように何らかの攻撃を俊介に仕掛けるつもりだったが、俊介の大魔王を超えるという言葉。そしてその覚悟を見てますます気に入ってしまった。
「それで、裏で操っていると思われる魔界人、もしくは天界人は見つけれたか?」
大魔王の言葉に俊介は首を横に振りながら答えた。
「いいえ。申し訳ありませんが見つからなかったです。分かったのは自分の母親が主犯だったということだけでした。」
「そうか。ならそれでいい。お前は現界人でありながら魔界人の魔王になった。これからもし現界で何かしらの事件が起こった場合はお前を派遣するが異論はないな?」
「ありません」
「ならよい」
大魔王サタンに言われ、俊介は即答。もちろんはなからそうするつもりだったので問題はない。
けれど、帰ってきたときにルーナが何かを誤魔化すように話していたことが気になっていた俊介は質問をしていた。
「それで、これからの俺の行動ってもう決められているのでしょうか」
きっと、俊介のこれからの行動に何か関係がある……そうふんだ俊介は問うのだが。
大魔王は顎に手を当てながら答える。
「そうか。これはまだ二人には話していなかったな。次のお前たちの事なんだが————」
————————————————————————
大魔王との話が終わり、俊介は部屋に戻ってきていた。
「お!おかえり~!どうだった?」
「何の問題もなかったよ。順調に話し終わった。」
「へぇ、あの父さんが……珍しいな」
「お疲れ様ですシュン様。お飲み物をお入れしますが何になさいましょう?」
「お茶で頼むよ」
「かしこまりました」
大魔王に話しに行く時より感情が普通に戻っているのを少し気にやむルーナ。
あの父親の事だ。絶対に何かは言われているはず……とすぐに考えるがきっと口止めされているのだろう。そこまで考えてそれ以上の詮索はしなかった。
お茶を渡され一服した俊介は立ち上がり、ルーナに話しかける。
「ルーナ。少しトレーニングルームに来てくれないか?」
「ん?いいけど……どうしたんだ?」
「ただ俺のトレーニングに付き合ってもらうだけだよ。試したい事とかあるし」
「そっか。そんじゃ向かおうか」
そう言って二人はトレーニングルームへと向かう。
イリアとリーサはこっそりとついていこうとしたが、ナーシャに笑顔で止められる。
「どうしてわたしくしたちはついていってはいけないのですか!」
「私含め、あなたたちもお呼びじゃないからです。」
「ぐぬぬ……わかりましたよ。」
ナーシャの言葉に二人はすぐ納得して折れる。
リーサはぶつくさ言いながら窓をふきふき。
イリアは机を拭き、目の前にあった俊介のコップを手に取って……後ろからものすごい視線を感じてすぐに洗ってしまう。
◇
トレーニングルームに来た二人。
俊介はすぐにルーナに聞いた。
「さっそくで申し訳ないんだけど、俺……あの時上級魔術の雷を使えた気がしたんだけど、その威力を試したくてさ」
「あ、ほんとに試したことがあって俺を呼んだだけ?」
「え?うん……そうだけど。どうしたの?そんなに驚いて」
「あぁいや、別に何も……」
なんか漫画でよくある「面貸せ」とかの奴かと思ったら普通にトレーニングするだけでどこかショックを受けていたルーナ。
(ま、まぁ日頃の恨みとか言ってこなかっただけましか)
そう呟きながら切り替えて解説を始めるルーナ。
「一回、どんな感じかやってみてよ」
「わかった」
雷魔術を体に纏い、瞬きをせずとも視界から消え……一瞬で移動をしていた俊介。
バリバリと音を立て、その雷は紫色と青黒く光る雷撃。俊介が通った場所がえぐるようにしてなくなっていた。
ルーナはそれを見ていたわけじゃなくあの場で感じ取っていただけなのでこうして威力を見て驚いていた。
(す、すげぇ威力だな俺の知ってる術じゃねぇぞこれ)
そう心の中で言いながらゴホンと咳払いをして語りだす。
「今のお前の術は雷魔術の上級……電光石火というものだ。お前の攻撃は全部が桁違いの威力を有している。もっと極めたらすげぇ技になるな」
「なるほど……具体的にはどこをどうすればいいとかってあるか?」
「う~ん、そうだなぁ……まずは単純に魔力を込めて発動する時間を短縮するところかな。そうすればその術はもっと脅威なものになる。」
「確かに。不意打ちで攻撃が出来るようになるか」
俊介はルーナの的確なアドバイスに頷きながら考え込むように手を口元にあてる。
(おかしい。やっぱりどこか変だ)
ルーナはすぐに感じ取った。
大魔王との話から帰ってきていきなりトレーニングに付き合わされるルーナ。
何かあるに違いないだろう。
先程変な詮索はしないと決めたがどうしても気になってしまったルーナは俊介に聞いてしまった。
「なぁ、なんで急に魔術のトレーニングをしようと思ったんだよ?今はゆっくり休めよ」
再度、的確な言葉が飛んでくる。
今の俊介の精神状態は万全は言えない。明日は魔王就任式も控えている。
ゆっくり休んで明日に備えるのが得策だ。
それなのに俊介は何やら慌てているようにも見える。
ルーナは肩を竦めるが、俊介は自分の手を眺めながら口を開く。
「早く、俺が強くならないと……一人でもやれるようにしないとだめなんだよ」
その言葉を聞いて。ルーナはなんとなく察することが出来た。といっても現界にいた時からなんとなくわかっていたことだったが。
ルーナは俊介を見て溜息を吐きながら……
「わーったよ。今日はとことんお前に付き合ってやるから。なんなら模擬戦でもすっか?」
「いや、それは……」
「なんでそこは退くんだよ。お前のレベルに合わせてやるから。やろうぜ」
やると決めたらやる。それがルーナのモットーだ。いつまでもくよくよしていたら相手に失礼だ。
そして、日が落ち夕食の準備ができるまで……二人は戦った。
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魔界……ガウルド国にて。
「女王陛下。二代目魔王と言われている燈俊介が現界でから戻ってきたようです。」
「そう……報告ご苦労。エスタ。」
「はい。お母様。」
「この世界に魔王はいるとおもう?」
「どうでしょう……わたくしにはお答えしかねます。」
「ふふ……あなたは偉いわね。不確定のものに対し慎重。でもそれが悪く働くこともある。それを覚えておきなさい。」
「わかっています。ラビリス帝国との和平協定の方はどうなりましたか?」
「お答えしかねます……と言いたいところですが、決裂しそうですね」
「と……いうことは……」
緊張が走る中、ガウルド国の女王陛下は真摯に告げる。
「戦争が……起きても不思議ではないですね」
その言葉に、周りにいる兵も驚いていた。
エスタ……ルマーニ女王陛下の娘の瞳に何が映っていたのか。
恐怖か、栄光か。
兵とは違い、怖がっている様子をしていないようにも見えた。
城のバルコニーに並んで立つ親子。
女王陛下はその下に住む住人たちの方へと視線を向け、王女のエスタは奥の丘に視線を向けていた。
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