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8話 魔王様に呼び出されました

玉座の間。


空気は、いつもより硬かった。


重い足音が響く。


一つ目の巨体が、中央に立つ。


肩幅は柱と変わらない。

斧は門より大きい。


サイクロプスだった。


「……聞いたぞ」


低い声が、床を震わせる。


魔王が静かに言う。


「何をだ」


「戦場で寝る軍があると」


沈黙。


幹部たちが視線を落とす。


魔王はメウラを見る。


「説明せよ」


メウラは小さくうなずいた。


「十五分です」


サイクロプスが睨む。


「戦場は寝所ではない」


「そうですね」


「ならばなぜ横になる」


「眠いからです」


沈黙。


サイクロプスの目が細くなる。


「我らは百年、眠らず戦った」


「無理です」


「無理ではない」


「倒れていませんか」


玉座の間が静まり返る。


サイクロプスが唸る。


「それは、戦の証だ」


「疲労です」


「誇りだ」


「消耗です」


魔王が低く言う。


「戦闘継続時間は二倍になった」


サイクロプスが振り向く。


「数字だ」


「事実だ」


「根性はどこへ行った」


メウラが答える。


「残っています」


「どこに」


「整った体に」


沈黙。


サイクロプスは一歩踏み出す。


床が軋む。


「昼寝をした部隊と、していない部隊で模擬戦を行え」


参謀が即座に動く。


「承知」


訓練場。


二部隊が向かい合う。


片方は昼寝済み。

片方は徹夜訓練済み。


開始。


剣が交わる。


三刻後。


徹夜部隊の一人が息を荒げる。


四刻後。


昼寝部隊が押し始める。


五刻後。


徹夜部隊の斧が地面に落ちる。


音が重い。


静寂。


サイクロプスが黙る。


参謀が報告する。


「勝率、昼寝部隊九割」


「水分補給部隊、誤射ゼロ」


沈黙。


サイクロプスが低く言う。


「偶然だ」


メウラが答える。


「三回目です」


沈黙。


「……二度あることは三度あるか」


訓練場に風が吹く。


昼寝部隊は、整然と立っている。


徹夜部隊は、膝に手をついている。


サイクロプスがゆっくりとメウラを見る。


「戦場で、眠るのか」


「戦場ではありません」


「では」


「戦場に立つ前です」


沈黙。


魔王が立ち上がる。


「サイクロプス」


「……」


「我は結果を見る」


長い静寂。


サイクロプスは斧を肩に担ぎ直す。


「……十五分だな」


「はい」


「それ以上は許さん」


「十分です」


サイクロプスは去る。


玉座の間。


魔王がメウラを見る。


「敵は、昼寝をせぬ」


「だから勝てます」


沈黙。


魔王はゆっくり言った。


「……明日、もう一度来い」


メウラはうなずいた。


「営業時間外であれば」


玉座の間が、わずかに揺れた。


外では、サイクロプスが兵士に言っていた。


「十五分だ。寝ろ」


兵士たちが整然と横になる。


巨大な影も、静かに座る。


そして、目を閉じた。


そのとき。


参謀が、静かに報告書を差し出した。


「昨日の戦闘結果です」


魔王が目を通す。


沈黙。


「……損耗、ゼロ」


幹部たちが顔を上げる。


魔王が低く呟いた。


「十五分で、戦が変わるのか」


メウラは言った。


「昨日、変わりました」

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