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7話 水分と睡眠をおすすめします

訓練場。


魔族たちが剣を振るっている。


以前より静かだ。


怒号は減り、転倒もない。


だが――


「……隊長」


一人の兵士が手を挙げた。


「どうした」


「二刻目です」


沈黙。


「それがどうした」


「メウラ殿の指示では、水分補給の時間です」


周囲がざわつく。


「今、訓練中だぞ」

「敵は待たぬ」

「汗は出ていない」


兵士は真剣だった。


「昨日、水を飲まずに続けた者が、足をつりました」


沈黙。


隊長が空を見る。


「……水を飲め」


兵士たちが一斉に水筒を取り出す。


「ゴクッ」


「…うまい」


「涙がでる」


「こんなにおいしい水は飲んだことがない…」


「普通の水だぞ」


その様子を、参謀が遠くから見ていた。


「……戦場で、水を飲む軍か」


横に立つ幹部が言う。


「戦闘継続時間は伸びております」


参謀は腕を組んだ。


「理屈は理解できる」


「だが……」


そのとき。


メウラが小さな椅子を持って現れた。


「どうしました」


参謀が振り返る。


「昼寝とは何だ」


「昼寝です」


「戦の最中に眠るのか」


「短時間です」


「どれくらいだ」


「十五分」


沈黙。


「十五分で何が変わる」


「回復します」


参謀が目を細める。


「十五分で、軍の運命が変わるのか」


「たぶん」


真顔だった。


訓練場の端。


兵士たちが地面に座っている。


「本当に寝るのか」

「目を閉じるだけでいいらしい」

「敵が来たらどうする」

「いびきは禁止か?」

「小さめなら可だそうだ」



一人が恐る恐る横になる。


「……静かだな」


「うむ」


十五分後。


兵士が目を開ける。


「……軽い」


「本当か」


「頭が、重くない」


別の兵士が言う。


「さっきまで剣が重かった」


「今はどうだ」


「持てる」


参謀が報告書をめくる。


・水分補給後、足の痙攣ゼロ

・昼寝導入後、午後の訓練効率上昇


参謀は呟く。


「効率……」


玉座の間。


魔王が報告を聞いていた。


「昼寝を導入したと?」


「はい」


「兵は横になったと?」


「はい」


沈黙。


魔王が低く言う。


「士気は落ちぬのか」


幹部が答える。


「むしろ……」


「むしろ?」


「午後の集中力が向上しております」


魔王は目を閉じる。


「……理解が追いつかぬ」


メウラが口を開いた。


「眠いまま戦うほうが危険です」


「だが我らは魔族だ」


「魔族も眠ります」


沈黙。


参謀が低く言う。


「昼寝をした部隊と、していない部隊で模擬戦を行いました」


「結果は」


「昼寝した部隊の勝率、八割」


玉座の間がざわつく。


魔王がゆっくり立ち上がる。


「……十五分でか」


「はい」


メウラは続ける。


「水分も大事です」


「まだあるのか」


「水分が足りないと、判断が鈍ります」


参謀が報告書を見つめる。


「午後の誤射、ゼロ……」


魔王が呟く。


「戦闘継続時間が二倍になり」


「暴発が消え」


「そして昼寝か」


メウラはうなずいた。


「整っています」


沈黙。


外では、兵士が叫んでいた。


「三刻目だ! 水だ!」


別の兵士が言う。


「四刻目は昼寝だ!」


魔王は窓の外を見つめる。


整然と横になる魔族たち。


風が吹く。


静かだ。


魔王が小さく呟く。


「……我は、いつから昼寝をしていない」


沈黙。


幹部たちが固まる。


メウラが答える。


「今からでもできます」


参謀が呟く。


「玉座は横になる仕様ではありません」


サイクロプスが言った。

「改造するか」


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