28話 魔王軍、畑を作る
前線。
平原。
兵士が並んでいる。
剣。
槍。
そして――
鍬。
沈黙。
参謀が言う。
「……何をしている」
兵士が答える。
「畑です」
完全な沈黙。
サイクロプスが低く言う。
「前線だぞ」
兵士。
「はい」
「敵が来る」
「はい」
「なぜ耕す」
兵士が言う。
「野菜です」
沈黙。
メウラが言う。
「整い食事です」
参謀。
「補給はある」
メウラ。
「鮮度がありません」
沈黙。
兵士が土を掘る。
ごり。
石。
ゾンビ兵が持ち上げる。
腕が外れる。
ぽと。
沈黙。
ゾンビ兵。
「問題ありません」
腕を拾う。
また掘る。
ドラゴンが上を飛ぶ。
影。
サイクロプスが言う。
「日陰ができたな」
メウラ。
「いい畑です」
沈黙。
数日後。
芽。
小さい。
兵士がしゃがむ。
「出ました」
別の兵士。
「小さい」
参謀。
「敵より小さい」
沈黙。
そのとき。
敵襲。
敵兵が止まる。
畑。
芽。
兵士。
鍬。
沈黙。
敵兵が言う。
「……何だこれは」
魔王軍兵士。
「野菜です」
沈黙。
敵兵。
「前線だぞ」
「はい」
「戦争だぞ」
「はい」
「なぜ畑だ」
兵士。
「整います」
沈黙。
そのとき。
ドラゴンが降りる。
巨大な翼。
風。
畑が揺れる。
参謀が言う。
「飛ぶな」
ドラゴン。
「水をやった」
沈黙。
数週間後。
前線。
畑。
緑。
兵士が野菜を持つ。
「甘い」
別の兵士。
「軽い」
サイクロプスが腕を組む。
「……戦場とは思えぬ」
玉座の間。
参謀が報告する。
「兵士の疲労、減少」
「食事満足度、上昇」
魔王が言う。
「軍は強い」
メウラ。
「はい」
魔王。
「だが」
一拍。
「畑を持つ軍は、さらに強い」
前線の畑で
兵士が
にんじんを引き抜く。
戦場は――
少しだけ、緑だった。




