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27話 魔王軍、洗う

魔王城。


中庭。


風。


そして――


臭い。


沈黙。


参謀が言う。


「……誰だ」


副官。


「分かりません」


風が吹く。


ぶわっ。


参謀が顔をしかめる。


「強い」


サイクロプスが低く言う。


「前線の匂いだ」


沈黙。


兵士が整列している。


鎧。


マント。


焦げ。


汗。


泥。


そして――


臭い。


メウラが言う。


「洗ってください」


完全な沈黙。


参謀。


「鎧をか」


「はい」


兵士が言う。


「戦士は洗いません」


別の兵士。


「誇りです」


ゾンビが言う。


「私は落ちます」


沈黙。


メウラ。


「臭いです」


サイクロプスが腕を組む。


「確かに臭い」


完全な沈黙。


翌日。


城内。


巨大な桶。


水。


泡。


兵士が立っている。


鎧を持っている。


参謀が震える声で言う。


「……本当にやるのか」


メウラ。


「はい」


兵士が鎧を入れる。


じゃぶ。


水が黒くなる。


沈黙。


参謀。


「敵の血か」


メウラ。


「汗です」


完全な沈黙。


ゾンビ兵。


腕を外す。


桶に入れる。


ぽちゃん。


沈黙。


参謀。


「部品を洗うな」


ゾンビ。


「外れます」


サイクロプスが言う。


「私のマントもか」


メウラ。


「はい」


サイクロプスが入れる。


じゃぶ。


水がさらに黒くなる。


参謀。


「……見なかったことにするか」


そのとき。


風。


干し場。


鎧。


マント。


旗。


全部並んでいる。


ドラゴンが上を飛ぶ。


翼の風。


ぶわっ。


乾く。


兵士が言う。


「軽い」


別の兵士。


「臭くない」


さらに別の兵士。


「動きやすい」


サイクロプスがマントを羽織る。


沈黙。


「軽い」


参謀が言う。


「威厳は」


サイクロプス。


「軽い」


完全な沈黙。


玉座の間。


報告。


参謀。


「兵士の苦情、減少」


「兵舎の臭い、減少」


魔王が言う。


「軍は強い」


メウラ。


「はい」


魔王。


「だが」


一拍。


「臭わぬ軍は、さらに強い」


外から声。


「三刻目、水!」


少し間。


「三刻目、日陰!」


さらに間。


「三刻目、洗濯!」


沈黙。


参謀が言う。


「文化になったな」


風が吹く。


干された鎧が揺れる。


魔王軍は――


少しだけ、いい匂いだった。

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