25話 ゾンビ兵の部品
前線。
行軍。
ゾンビ部隊。
静か。
整然。
そして――
ぽと。
沈黙。
参謀が止まる。
「……今、何が落ちた」
副官が答える。
「腕です」
沈黙。
ゾンビ兵が振り向く。
「私のです」
地面。
腕。
まだ指が動いている。
参謀が言う。
「拾え」
ゾンビ兵が腕を拾う。
肩に当てる。
ぽろ。
落ちる。
沈黙。
「付きません」
完全な沈黙。
サイクロプスが低く言う。
「何が起きている」
副官が答える。
「最近、部品が外れやすいです」
沈黙。
そのとき。
ぽと。
別の音。
参謀が振り向く。
「今度は何だ」
副官。
「脚です」
ゾンビ兵が座る。
「少し緩んでいました」
完全な沈黙。
医務室。
ゾンビ兵が並んでいる。
腕。
脚。
指。
机の上。
部品が増えている。
メウラが言う。
「最近、行軍距離は」
副官「二倍です」
沈黙。
「整ったので」
参謀が言う。
「増やした」
メウラ「腐敗は減りましたか」
「はい」
「では乾燥です」
沈黙。
ゾンビ兵が言う。
「乾くと、外れます」
メウラがうなずく。
「関節が緩みます」
サイクロプスが言う。
「締めろ」
ゾンビ兵が腕を押す。
ぐい。
ぽろ。
沈黙。
メウラが言う。
「乾燥防止にぬりましょう」
副官「何を」
メウラ「油です」
完全な沈黙。
翌日。
ゾンビ部隊。
整列。
そして――
ぬるぬるしている。
参謀が言う。
「……光っている」
ゾンビ兵が言う。
「外れません」
腕を振る。
外れない。
脚を動かす。
外れない。
サイクロプスが腕を組む。
「……臭う」
ゾンビ兵。
「以前よりですか」
参謀。
「以前よりだ」
沈黙。
そのとき。
敵襲。
ゾンビ部隊が走る。
腕。
外れない。
脚。
外れない。
敵が驚く。
「ぬるぬるしている!」
斬撃。
滑る。
敵が転ぶ。
沈黙。
戦闘終了。
参謀が言う。
「……滑ったな」
サイクロプス。
「外れぬな」
ゾンビ兵が言う。
「整いました」
玉座の間。
参謀が報告する。
「ゾンビ部隊、部品脱落ゼロ」
魔王が言う。
「ゾンビは強い」
メウラ「はい」
「ですが」
一拍。
「外れないゾンビは、さらに強いです」
外から声。
「油!」
「関節!」
「締まってます!」
沈黙。
魔王城は静かだった。
ゾンビは――
落ちなくなっていた。
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