24話 財務係ザイス
魔王城。
玉座の間。
静か。
涼しい。
炎は七割。
送風魔法が回っている。
参謀が言う。
「……最近、城が平和ですね」
サイクロプス「誰も倒れぬ」
侍従「床も滑りません」
沈黙。
扉が開く。
ばたん。
男が入ってくる。
紙束。
目が死んでいる。
参謀「誰だ」
男「財務係ザイスです」
沈黙。
ザイスが震える声で言う。
「城の財政が崩壊しました」
完全な沈黙。
参謀「なぜだ」
ザイス「卵です」
沈黙。
サイクロプス「卵?」
ザイス「兵士が一日三個食べています」
参謀「普通だ」
ザイス「三千人います」
沈黙。
参謀「……多いな」
ザイス「卵屋が城の前に二十軒できました」
メウラ「健康です」
ザイス「財務は不健康です」
紙をめくる。
「水です」
参謀「また水か」
ザイス「井戸が六つ枯れました」
サイクロプス「飲みすぎだ」
メウラ「必要です」
ザイス「昨日、城の前に水屋ができました」
沈黙。
「三十軒です」
参謀「水屋三十」
ザイス「城が市場です」
沈黙。
そのとき。
外から声。
「三刻目、水!」
ザイスが震える。
「また飲むのか」
参謀「文化だ」
ザイス「卵も文化ですか」
メウラ「栄養です」
ザイスが紙を投げる。
「栄養で国が潰れます!」
沈黙。
魔王が低く言う。
「戦費はどうだ」
ザイス。
「減りました」
「武器三割減」
「医療費五割減」
参謀「では黒字では」
ザイス「卵です」
沈黙。
サイクロプス「卵が強いな」
ザイス「卵が強すぎます」
沈黙。
メウラ「卵税を作りますか」
完全な沈黙。
ザイスが顔を上げる。
「……税?」
メウラ「卵一個、一銅貨」
参謀「三千人」
サイクロプス「一日九千個」
ザイスの目が輝く。
「九千銅貨!」
沈黙。
ザイス「天才ですか」
メウラ「普通です」
参謀「水税も作るか」
ザイス「水税!」
紙に書き始める。
がりがり。
「卵税」
「水税」
「昼寝税」
沈黙。
メウラ「昼寝は税をかけれません」
ザイス「残念です」
外から声。
「三刻目、水!」
ザイスが叫ぶ。
「飲め!」
全員が振り向く。
沈黙。
ザイス「飲めば税です!」
完全な沈黙。
参謀が呟く。
「……財務が整ってきたな」
魔王が言う。
「炎は強い」
メウラ「はい」
魔王「だが、卵も強い」
外で声。
「三刻目、卵!」
ザイスが紙を握る。
「……もう一個税を作ります」
参謀「何だ」
ザイス「健康税」
沈黙。
メウラ「却下します」
玉座の炎が揺れる。
卵屋の行列は、今日も長かった。
そしてザイスは、
卵の数を数え続けていた。
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