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23話 魔王城の温度が一定ではありません

魔王城。


玉座の間。


重厚。


荘厳。


そして――暑い。


参謀が汗を拭く。


「……威厳が、蒸しています」


魔王が低く言う。


「威厳は蒸さぬ」


マントの下から汗が落ちる。


ぽた。


沈黙。


サイクロプスが言う。


「床が滑る」


侍従が転ぶ。


どん。


完全な沈黙。


メウラが温度計を掲げる。


「玉座付近、三度高いです」


参謀。


「三度くらい」


メウラ。


「人は三度で不機嫌になります」


沈黙。


炎の装飾がごうっと揺れる。


参謀。


「威厳の炎です」


「常時最大出力」


メウラ。


「最大は必要ですか」


沈黙。


魔王が小さく言う。


「……少し暑い」


全員が固まる。


サイクロプス。


「聞かなかったことにするか」


メウラ。


「聞きました」


魔王。


ゆっくりマントを外す。


ばさっ。


沈黙。


参謀が震える声で言う。


「……肩が出ています」


魔王。


「軽い」


サイクロプス。


「色が赤い」


メウラ。


「のぼせています」


完全な沈黙。


午後。


城内温度測定。


廊下、快適。


厨房、暑い。


玉座、灼熱。


メウラ。


「玉座だけ熱が溜まっています」


参謀。


「王は孤独ですから」


メウラ。


「孤独は体温を下げません」


沈黙。


送風魔法導入。


炎出力七割。


十呼吸ごとに揺れる。


炎がふわっと小さくなる。


参謀が青ざめる。


「あぁ……魔王様の威厳が……こんなにも小さく」


魔王が言う。


「……目に優しい」


完全な沈黙。


サイクロプス。


「怒鳴らなくても声が届く」


参謀。


「書類が汗で波打ちません」


侍従。


「滑りません」


玉座の間。


静か。


涼しい。


魔王が低く言う。


「……集中できる」


メウラがうなずく。


「整っています」


外から声。


「三刻目、水!」


少し間。


「三刻目、日陰!」


さらに間。


「三刻目、換気!」


さらに小声。


「三刻目、マント!」


玉座の炎がゆらぐ。


以前より小さい。


だが、安定している。


魔王が言う。


「炎は強い」


メウラ。


「はい」


「だが、蒸れない炎は、さらに強い」


玉座の間は、涼しかった。

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