18話 前線にも日陰を作ります
前線。
火山地帯。
溶岩。
熱風。
息を吸うと、喉が焼ける。
炎属性部隊が並んでいる。
水は飲んでいる。
だが、暑い。
一人が言う。
「水が蒸発します」
別の者。
「飲んだ気がしない」
サイクロプスが低く言う。
「水は飲んでいるな」
「はい」
「だが暑い」
「はい」
沈黙。
メウラが空を見上げる。
「直射が強いです」
サイクロプス。
「火山だ」
「だからです」
炎属性の一人が言う。
「立っているだけで、焼き鳥になります」
沈黙。
メウラ。
「日陰を作ります」
完全な沈黙。
「戦場だぞ」
「はい」
「影に隠れるのか」
「違います」
「逃げるのか」
「整えます」
翌日。
前線に巨大な遮光布。
炎属性が影の中に入る。
「……暗い」
「負けた気がする」
「これでは陰キャではないか」
沈黙。
メウラが言う。
「五分だけです」
五分後。
「……体が軽い」
「汗が止まった」
「まだ燃える」
一人が炎を出す。
ぼわっ。
まっすぐ。
安定。
隊長が目を見開く。
「……暴れない」
別の者。
「炎が素直だ」
サイクロプスが腕を組む。
「影は炎を弱めぬか」
メウラ。
「炎属性は焚き火ではありません」
そのとき。
敵襲。
炎属性が影から一斉に出る。
炎。
一直線。
以前より長い。
敵が蒸発する。
戦闘終了。
沈黙。
炎属性の一人が言う。
「……まだ出せる」
「もう一回いける」
隊長が言う。
「三刻目、水!」
別の者。
「三刻目、日陰!」
さらに別の者。
「四刻目、野菜!」
沈黙。
サイクロプスが振り向く。
「野菜はまだだ」
夕方。
巨大な影の下で炎属性が整列している。
誰も倒れていない。
一人がぽつり。
「……我慢大会より、影大会のほうがいい」
「何を競う」
「影の入り方の美しさ」
メウラ。
「競わなくていいです」
玉座の間。
参謀が報告する。
「炎属性部隊、消耗減少」
「離脱ゼロ継続」
魔王が言う。
「炎は強い」
メウラ。
「はい」
「だが、影を持つ炎は、さらに強い」
外から声。
「三刻目、水!」
「三刻目、日陰!」
少し間があって、
「三刻目、根性禁止!」
玉座の間は静かだった。
火山の上に、影がある。
炎は、そこから立ち上っていた。
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