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17話 炎属が熱中症です

前線。


火山地帯。


溶岩。


熱風。


息を吸うだけで喉が焼ける。


炎属性部隊が並んでいる。


汗だく。


だが誰も水を飲まない。


サイクロプスが低く言う。


「水はどうした」


沈黙。


隊長が胸を張る。


「炎は、水に頼らぬ」


ざわつき。


「昨日から我慢大会を」


「誰が一番、飲まずに耐えられるか」


沈黙。


参謀が紙を落とす。


「大会?」


隊長が誇らしげに言う。


「現在、優勝候補は三日目のグレンです」


グレンがふらりと揺れる。


「まだ……いけます……」


倒れる。


沈黙。


医務室。


メウラが冷たい布を額に当てる。


「何時間、水を飲んでいませんか」


「炎は……強い……」


「質問に答えてください」


「二日半……」


沈黙。


サイクロプスが唸る。


「何を競っている」


隊長が言う。


「熱さへの誇りです」


「炎属性の名誉です」


メウラが静かに言う。


「やせ我慢は名誉じゃないです」


沈黙。


訓練場。


炎属性が円になっている。


中央に桶。


水が入っている。


誰も手を伸ばさない。


メウラが言う。


「飲んでください」


「炎が弱まる」


「消えるかもしれぬ」


「湿る」


沈黙。


メウラは一人の炎属性を前に出す。


「昨日、水を飲んだ人」


小さく手が挙がる。


「……飲みました」


「どうでしたか」


炎属性は桶を見る。


皆の視線。


一口、飲む。


ごく。


その瞬間――


ぶふっ。


むせる。


炎が、ぼわっと小さく揺れる。


一瞬、炎が弱まる。


ざわめき。


「やはり!」


「弱まった!」


「消えるぞ!」


炎属性が咳き込む。


「ち、違う……」


深呼吸。


もう一口。


ごく。


沈黙。


炎を出す。


ぼわっ。


今度は揺れない。


まっすぐ。


安定している。


「……揺れない」


「暴れない」


「さっきより、軽い」


メウラが静かに言う。


「むせただけです」


沈黙。


サイクロプスが腕を組む。


「炎属性は焚き火ではない」


「はい」


メウラは水を一口飲む。


「水は敵ではありません」


「体の基本です」


隊長が迷う。


桶を見る。


水を見る。


部下を見る。


グレンがかすれ声で言う。


「……優勝は……」


メウラが即答する。


「熱中症は、強さとは無関係です」


沈黙。


「我慢大会は中止です」


「優勝者は」


「医務室です」


完全な沈黙。


炎属性の一人が恐る恐る水を飲む。


ごく。


沈黙。


炎を出す。


ぼわっ。


炎は――安定している。


「……揺れない」


「暴れない」


「軽い」


隊長が水を飲む。


沈黙。


炎を出す。


以前より、まっすぐ。


サイクロプスが低く言う。


「……強い」


メウラが言う。


「燃えすぎない炎は、長いです」


夕方。


桶の水は空になっている。


炎属性部隊は立っている。


倒れていない。


隊長が小さく言う。


「……我慢は、強さではなかったか」


メウラが答える。


「我慢は、消耗です」


沈黙。


医務室。


グレンが目を開ける。


「……優勝は」


「ありません」


「……次は、水早飲み大会を」


「やめてください」


「……水を」


コップが渡される。


ごく。


グレンが小さく言う。


「……うまい」


玉座の間。


報告。


参謀が読む。


「炎属性部隊、離脱ゼロ」


魔王が低く言う。


「炎は強い」


メウラがうなずく。


「はい」


「誇りとは、立ち続けることだ」


沈黙。


魔王が続ける。


「熱もまた、循環か」


メウラは答える。


「水とセットです」


外では炎属性の声。


「三刻目、水!」


「我慢するな!」


「我慢は医務室!」


玉座の間は静かだった。


炎は、揺れない。

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