13話 勇者軍が整い改革室を作るそうです
勇者城、作戦室。
参謀が机を叩く。
「整い改革室を設置する!」
ざわめき。
勇者がうなずく。
「最近、兵の目が死んでいる」
沈黙。
リオが小さく手を挙げる。
「六時間眠らせれば」
「甘えるな」
「水を」
「自己責任だ」
「野菜を」
「色が地味だ」
沈黙。
参謀が言う。
「よって整い改革室を設置する」
紙が配られる。
【整い改革室】
【室長:リオ】
リオが紙を見る。
「……俺ですか」
「言い出したからだ」
「権限は」
「応援する」
「予算は」
「気持ちで」
「場所は」
「廊下」
沈黙。
廊下。
机ひとつ。
椅子なし。
壁に紙が貼られる。
【整い改革室】
兵士が通る。
「何だこれ」
「整うらしい」
「どうやって」
リオが言う。
「水を」
兵士が言う。
「持ってる」
「六時間眠る」
「無理」
「なぜ」
「鐘が鳴る」
沈黙。
会議室。
参謀が言う。
「整い改革室、成果は」
リオが紙を出す。
【提案1:水を置く】
「却下」
「理由は」
「濡れる」
【提案2:六時間睡眠】
「却下」
「理由は」
「長い」
【提案3:野菜】
「却下」
「理由は」
「咀嚼中に号令が出せない」
沈黙。
勇者が言う。
「では“整っている感じ”を出せ」
「感じ」
「旗を立てろ」
翌日。
訓練場に旗が立つ。
【整い実施中】
怒号。
「削れ!」
兵士が言う。
「整っているのか?」
「旗が立っている」
沈黙。
夜。
兵舎。
湿っている。
いびき。
兵士が言う。
「整い週間らしい」
「何が変わった」
「旗が増えた」
「寝る時間は」
「三時間」
沈黙。
リオが小さく言う。
「六時間……」
隣の兵士が言う。
「夢の話か」
翌日。
会議室。
参謀が言う。
「整い改革室、解体」
「早いですね」
「成果が見えない」
「旗は立っています」
「それは訓練場だ」
紙が置かれる。
【配置転換:通常任務】
リオが言う。
「整いは」
参謀が答える。
「気のせいだ」
沈黙。
リオが一枚、紙を差し出す。
【最近の欠員数】
参謀が眉をひそめる。
「何だ」
「整いが気のせいなら」
一拍。
「減っているのも、気のせいですか」
沈黙。
勇者が言う。
「……数字は」
参謀が答える。
「本物です」
静寂。
リオが言う。
「では整いも、本物かもしれません」
長い沈黙。
誰も何も言わない。
外で怒号。
「削れ!」
参謀が紙を奪う。
「……解体だ」
沈黙。
廊下。
【整い改革室】の紙が剥がされる。
代わりに貼られる。
【気合推進係】
リオが見る。
小さく笑う。
「具体的だな」
懐から黒い封筒を出し読む。
【水は、自己責任ではありません】
【六時間】
封筒を戻す。
机に一枚だけ紙を置く。
【整い、検討中(継続)】
そして廊下を歩き出す。
後ろで兵士の声。
「整いって何だ」
「たぶん水だ」
沈黙。
その日、勇者軍では
「整い」という言葉だけが増えた。
そして
欠員も、増えた。
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