表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/30

12話 勇者軍からスカウトがきました

魔王城、正門前。


今日も長蛇の列。


角。

牙。

……人間。


その列を、白い鎧の一団が割って進んでくる。


ざわめき。


「勇者軍だ」


門番がまばたきする。


「志願ですか」


「違う」


白鎧の男が胸を張る。


「我らは勇者軍・人材確保対策室!」


沈黙。


「何を確保するのですか」


「人材だ!」


「今、列ができていますが」


後ろの元勇者軍兵が言う。


「俺は並んでいる」


「順番だ」


白鎧が小声で言う。


「なぜ減らぬ」


玉座の間。


「報告!」


参謀が振り向く。


「勇者軍が“スカウト”に来ています」


沈黙。


魔王が言う。


「宣戦か」


「いえ、“条件提示”とのことです」


玉座の間が静まる。


白鎧の男が膝をつく。


「我らは、貴軍の“整い担当”をお借りしたい」


全員の視線がメウラに向く。


メウラは静かに攪拌している。


「何を借りますか」


「あなたを」


沈黙。


サイクロプスが小さく言う。


「……整い担当は肩書きだったのか」


参謀がメモする。


【整い担当(仮)】


白鎧が条件を読み上げる。


「給与二倍!」


ざわめき。


「研究室を個室化!」


ざわめき。


「週休一日!」


玉座の間が止まる。


メウラが首をかしげる。


「六時間眠れますか」


「……努力する!」


「水は」


「自己責任ではなくす方向で!」


「野菜は」


「導入を検討!」


沈黙。


サイクロプスが低く言う。


「全部、未来形だな」


参謀がうなずく。


「“方向で”が多い」


白鎧が焦る。


「勇者軍は変わる!」


「削るだけの軍ではない!」


「整う!」


メウラが静かに言う。


「今は何時間睡眠ですか」


「四時間!」


「昼寝は」


「気合!」


「水は」


「自己責任!」


沈黙。


サイクロプスが言う。


「帰れ」


白鎧が慌てる。


「待て!」


「貴軍は我らの敵だろう!」


魔王がゆっくり立ち上がる。


「違う」


沈黙。


「我らは整っただけだ」


「勝手に人が流れただけだ」


白鎧が拳を握る。


「では、整い方を教えろ!」


玉座の間がざわつく。


参謀が小声で言う。


「教えるのですか」


メウラが答える。


「水です」


白鎧が叫ぶ。


「それは聞いた!」


「六時間です」


「それも聞いた!」


「野菜です」


「……苦手だ!」


沈黙。


サイクロプスが言う。


「角を磨け」


白鎧が止まる。


「何だそれは」


「士気だ」


「角はない!」


「なら靴を磨け」


沈黙。


門の外。


志願者が増えている。


「残業なし希望です!」


「循環したいです!」


「六時間ください!」


白鎧が振り返る。


「……なぜ戻らぬ」


元勇者軍兵が言う。


「水が冷たい」


沈黙。


「六時間眠れる」


沈黙。


「怒鳴られない」


長い沈黙。


玉座の間。


白鎧が最後に言う。


「整い担当殿」


「はい」


「我らは本気だ」


「はい」


「来ないか」


メウラは少し考えた。


そして答える。


「整ったら、考えます」


沈黙。


サイクロプスが小さく笑う。


「まずは水だな」


勇者城、会議室。


白鎧が報告する。


「スカウト失敗」


勇者が問う。


「理由は」


「……水です」


沈黙。


参謀が震える。


「では水を導入」


勇者が低く言う。


「……自己責任で飲め」


白鎧が小さく言う。


「それが問題です」


魔王城。


兵士が水を飲む。


角を磨く。


きっちり眠る。


メウラはいつものように薬を混ぜている。


参謀が言う。


「引き抜きとは、恐ろしいものだ」


メウラは答える。


「整いは、持ち運べません」


沈黙。


門前の列は、今日も伸びていた。


そして勇者軍は、


勇者軍は、初めて水の値段を調べた。

面白かったら

ブックマークや評価を

してもらえると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ