白銀の装甲
『撃て! 魔女を蜂の巣にしろ!!』
倒れ伏した俺に向けて、残る敵兵たちの銃口が一斉に火を噴く。
指先ひとつ動かない。魔力も底を突き、ただ迫り来る無数の弾丸を見つめることしかできなかった。
(くっそ、ここまで…か……)
そう覚悟して目を閉じかけた、その刹那――。
――ガギィィィィィンッ!!!!
凄まじい金属の激突音と、火花の嵐。
俺の目の前に、夜の密林を照らす眩い『白銀の装甲』が音もなく割り込んでいた。
「なっ……何だ!?」
『敵襲! 上空からだ!!』
美しく磨き抜かれた白銀と白の装甲。
ユーベル王国軍が誇る正規機甲が、巨大なタワーシールドを掲げて俺への射撃を完全に遮断していたのだ。
一機だけではない。周囲の樹々を飛び越え、さらに数機の白銀機甲が次々と着地する。
『いたいけな少女一人に帝国正規軍が寄ってたかって随分な仕打ちですわね』
『総員、一斉射撃! 目標を殲滅せよ!』
圧倒的な統率力と制圧力。
王国軍機甲部隊の放つ精密な魔導砲撃が、狼狽する帝国兵たちを瞬く間に圧倒していく。
『くそっ、王国の救援部隊だと!?』
『少佐を回収しろ! 後退だ、全機一時撤退!!』
大破したヴァルター機を抱え、這う這うの体で闇の中へと逃げ去っていく帝国軍の残党たち。
銃撃の音が止み、静まり返る森林の中――遠くから、聞き覚えのある魔導エンジンの爆音が響いてきた。
「レオナちゃぁぁぁぁんっ!!」
タイヤのスキール音を響かせながら、ボロボロの整備トラックが滑り込んでくる。
運転席のドアを蹴破るようにして飛び出してきたのは、泥だらけで涙と鼻水でぐしゃぐしゃになったカリンだった。
「レオナちゃん! 嘘でしょ、返事をして! レオナちゃんっ!!」
俺の身体を抱き起こし、必死に名前を叫ぶカリン。
薄れゆく意識の端で、俺は泥だらけの彼女の顔をぼんやりと見上げた。
……10分。本当に、きっかり10分で救援を連れて戻ってきやがった。
「……カリン、さん……」
「…5秒遅刻」
「冗談言う余裕はあるようね……! まったく……っ!」
ぎゅううっ、と胸に顔を埋められ、またしても息が詰まりそうになる。
「……あり、がと……」
ふっと肩の力が抜け、張り詰めていた糸が完全に切れた。
温かいぬくもりと安堵感に包まれながら、俺の意識は深い深い闇の中へと落ちていった。




