おとり作戦
ババババッ、と無数の銃弾が俺の足元と周囲の樹々を抉り取る。
死角からの容赦ない連動射撃。それを躱した瞬間、ヴァルター機の鋭利な魔導刀が空気を切り裂いて迫る。
ガッ、ガギィィンッ!
「くっ……!」
アイギスで受け流すものの、衝撃で足元がズルリと後退する。
呼吸が荒い。心臓が早鐘のように打っている。
生身でアイギスを操る負荷は、確実に俺の身体を内側から蝕み始めていた。
(このままじゃジリ貧だ……! 俺がここで防戦一方になってる間に、回り込まれたらトラックがやられる!)
背後でアイドリング音を響かせるカリンのトラック。
運転席のカリンは青ざめた顔でハンドルを握りしめ、必死に俺の戦いを見守っていた。
(道を開けるには……これしかない!)
俺は奥歯を噛み締めると、アイギスの放熱フィンを一気に開放した。
青白い光の粒子が爆発的に噴射され、その推進力で一気にヴァルターの間合いから後方――トラックとは真逆の、密林の奥深くへと大きく跳躍する。
「なっ……!?」
ヴァルターがわずかに眉をひそめた。
着地と同時に、俺はトラックの運転席へ向けて腹の底から叫んだ。
「カリンさん! 俺がここでこいつらを引きつける! その隙にトラックを飛ばして、向こうの王国軍駐屯地から救援を呼んできてくれ!」
「な、何を言ってるのレオナちゃん!? あなた一人を置いていくなんてできるわけないでしょ!?」
カリンが身を乗り出して悲鳴を上げる。
「いいから行けって!! 二人まとめてここで蜂の巣になったら、元も子もないだろ?」
「でも、あなたの体だってもう限界じゃ――!」
「あと15分!!!!!」
華奢な体には似つかわしくない、怒号が銃声をかき分け密林に響く。
「……それ以上はちょっと厳しいかな!」
汗をぬぐいながら申し訳なさそうにカリンに視線を送る。
「……っ! 10分で戻るから!!」
カリンはアクセルを床まで力任せに踏み込んだ。
唸りを上げるトラックがタイヤを空転させながら急発進し、開けた街道へ向けて猛烈なスピードで走り抜けていく。
すぐに小さくなったトラックのエンジン音を聞きながら、
俺はアイギスを両手で構え直し、ギラリと光る刀身をオルクス帝国の機甲部隊へと突きつけた。
「仮面野郎! お前らの目的は『こいつ』と、それを操る『俺』なんだろ? 」
「なら、ちゃんと狙わねぇとあたんないぜ?」
挑発とともに、アイギスから凄まじい魔力の奔流を放ち、夜の森林を昼間のように照らし出す。
ヴァルターの黄金のバイザーが、ギラリと強く輝いた。
「……全機、目標をあの銀髪の少女に集中せよ。トラックは後回しだ」
『了解!』
(あえて挑発に乗ったのか、もしくはほかに考えがあったのか……
真意は仮面に隠れて読めないが、乗ってくれて助かった)
ジリジリと間合いを詰めてくる黒い機甲部隊。そして、静かに魔導刀を構えるヴァルター。
肺が焼けるように熱い。腕の筋肉が悲鳴を上げている。
だが――俺の体をめぐる魔力はあふれんばかりに奔流していた。
「そんじゃ、第二ラウンドと行こうか」




