苦戦
「――くそっ! あいつ、俺たちの動きを読んで待ち伏せしてやがったのか!」
トラックの荷台へ跳び移りながら、俺は格納庫の固定ロックを外した。
鎮座する身の丈一メートル半を超える過圧モンスターデバイス――『アイギス』。その武骨なグリップをガシッと握り締める。
ドクンッ……!
二度目ともなれば、もう迷いはない。
全身を駆け巡る激しい青白いスパーク。暴れ馬のような高圧魔力の波が、俺の体を通して瞬時にアイギスへとつながっていく。
「レオナちゃん、無茶よ! 密林の狭い足場じゃ、いくらアイギスでも多勢に無勢だわ!」
「ここでトラックごと蜂の巣にされるより百倍マシだよ! カリンさんはそのままハンドルを握ってて!」
アイギスの放熱フィンから青い粒子を撒き散らしながら、俺は荷台から夜の森林へ向けて勢いよく飛び降りた。
『捕獲の必要はない! あの小娘ごとトラックを粉砕せよ!』
周囲を取り囲む三機のオルクス帝国機甲が一斉に重機関銃を掃射する。
夜の密林を無数の曳光弾が切り裂くが、俺は体をめぐる魔力を全開にし、樹々の幹を三角跳びの要領で蹴り立てて弾道をすり抜ける。
「そんなじゃ!」
空中で旋回し、一番近くにいた機甲の頭上からアイギスを振り下ろす。
青白く光る鉄塊の強烈な一閃。
ズドォォォォンッ!!
『グアぁぁっ!?』
重装甲の頭部から胸陣までを一刀両断。爆炎が夜の森を赤く照らし出す。
だが、安堵する隙など一瞬たりともなかった。
キンッ――!!
澄んだ金属音が密林に響き渡った瞬間、俺の目の前に「それ」は現れていた。
(速っ――!?)
樹々の間を滑るような尋常ではない立体機動。
指揮官機甲の肩から躍り出た仮面の男――ヴァルター少佐自らが操る、最新鋭の可変機甲機が、高出力の魔導刀を構えて俺の首元へ肉薄していたのだ。
ガガギィィィンッ!!
咄嗟にアイギスの腹で受け止めるが、伝わってくるエネルギーが他の兵士のそれとは比べ物にならない。
「ッ……ヴァルター!!」
「ふっ……第一撃を防ぐか。どうやらその力、伊達ではないらしい」
黄金のバイザーの奥で、ヴァルターの瞳がギラリと冷たく光る。
彼は魔導刀にさらに魔力を流し込み、押し込みながら冷酷に言い放った。
「だが、個人の突出した性能など、洗練された部隊の前には無力だと知れ」
ヴァルターの合図とともに、残った帝国兵の機甲たちが整然と散開。俺とカリンのトラックを分断するように、緻密な射撃格子を組み上げた。
「なっ……機甲の連動射撃かよ!?」
死角からの精密な牽制射撃と、正面からのヴァルターの隙のない剣撃。
逃げ場を殺し、じわじわと追い詰めてくるオルクス帝国の洗練された戦術。
(マズいな……! 俺一人ならなんとか交わせても、これじゃカリンさんを守り切れない……!)
息が上がり始める。
生身でのデバイス接続による肉体への負荷と、ヴァルター率いる部隊の圧倒的な圧力が、容赦なく俺の体力を削り削り取っていく――!




