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オーバーライド!〜通りすがりの美少女(中身おっさん)、たまたま拾った最新兵器で無双する〜  作者: あかぱん
通りすがりの美少女、旅立つ

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黒煙の鉱山街と泥水すする少女

王都を出発してから三日。

カリンの運転する大型整備トラックは、帝国との国境にほど近い山岳地帯へと差し掛かっていた。


車窓から見える空は、青さを失い、重苦しい黒煙と灰色の粉塵に覆われている。

ゴツゴツとした岩山を削り取って作られたその街――『黒鉄のアイゼンベルク』。

王国屈指の魔導鉱石の産出地であり、前線へ送られる兵器燃料の供給拠点でもあるはずの場所だ。


「……なんだか、ずいぶんと空気が淀んでるっすね」


助手席から身を乗り出したミアが、黒煙の匂いに鼻をヒクヒクと鳴らして不快そうに耳を伏せる。


「アイゼンベルクは高純度魔導鉱石の採掘地ですわ。ですが……それにしても異様ですわね。活気というものがまるで感じられません」


後部座席で腕を組むセシリアも、険しい表情で街並みを見つめていた。

すれ違う住民たちは誰もがボロボロの布をまとい、痩せこけた顔を伏せて足早に通り過ぎていく。

街の要所には、黒塗りの強化装甲と実弾銃で武装した『領主私兵』が目を光らせ、住民たちを威圧するように睨みつけていた。


「とりあえず、燃料と物資の補給を済ませましょう。補給所はあちらの広場――」


カリンがハンドルを切ろうとした、その時だった。


――バチンッ!!


乾いた重い鞭の音と、小さく悲痛な悲鳴が路地裏から響いた。


「ぎゃっ……!?」

「ぐずぐず歩くな、この出来損ないが! 今日のノルマはあと鉱石箱三つだぞ!」


「……おい、止めてくれ、カリンさん」


俺は即座にトラックのドアを開け、飛び降りた。

セシリアとミアもそれに続く。


路地裏へ駆け込むと、そこには見るに堪えない光景が広がっていた。


泥水が溜まった石畳の上に、一人の小柄な少女が倒れ伏している。

擦り切れた麻袋のような貫頭衣をまとい、細い首には魔力を封じる重々しい『鉄の首輪』が嵌められていた。

背中には少女の体重以上はある巨大な木箱。中には青黒く毒々しい光を放つ未精製の魔導鉱石が詰め込まれている。


その少女を見下ろしているのは、革鎧を着た柄の悪い二人の私兵だった。

手にはトゲのついた革鞭を握り、ニヤニヤと下品な笑みを浮かべている。


「ほら立てよ、リリィ。今日の分の鉱石を日没までに精錬所へ運ばなきゃ、お前の大事な弟にやる『解毒薬』は抜きだからなァ!」


「ひっ……お、お願いします……! 弟は……弟はもう、熱で息も絶え絶えなんです……! 薬だけは……っ!」


少女――リリィは、泥水に顔を突っ伏しながら、すがるように私兵の靴先へ手を伸ばした。

その手は鉱石の毒素で紫色に変色し、ひび割れて血が滲んでいる。


「知るかよ! 領主ベルク子爵閣下の決めた規則だ。働かざる奴隷に生きる価値なし! ほら、立てぇッ!」


私兵が無慈悲に鞭を振り上げた――その切っ先が少女の細い背中を裂く、寸前。


ガシッ!!


「……あ?」


振り下ろされた鞭の先端を、素手で握り止めたのは俺だった。


「――てめえら、いい大人が子供相手に何やってんだ」


冷たく澄んだ、だが底知れぬ怒りを孕んだ声。

俺はサファイアブルーの瞳で、目の前の私兵を射抜くように見据えた。


「な、なんだぁ、このガキ……!? 痛ぇっ、離せ!」


私兵が力任せに鞭を引こうとするが、俺の細い指先はミリ単位たりとも動かない。

逆に握力をわずかに込めてやると、メキメキと音を立てて鞭の柄がひしゃげた。


「領主の規則だか何だか知らねえが、こんな重い毒鉱石を生身の子供に運ばせるなんて、正気じゃあねえな」


「き、貴様……領主私兵に手を出す気か!? ただの余所者が――」


もう一人の私兵が腰の長剣を抜こうとした瞬間、背後から疾風のように割り込んだセシリアのサーベルの鞘が、私兵の鳩尾みぞおちを正確無比に撃ち抜いた。


「ぐへっ……!?」


「動くな。無抵抗の子供に暴力を振るうなど、騎士にあるまじき下劣な所業……万死に値しますわ」


セシリアが冷徹な眼差しで切っ先を突きつけ、ミアも八重歯を剥き出して私兵の退路を塞ぐ。

あっという間に制圧された私兵たちは、顔を青ざめさせて後ずさった。


「お、おい! 待て! やめろ……っ!」


だが、その時。

助けられたはずのリリィが、泥水の中から必死に這い上がり、俺の足首に縋り付いてきたのだ。

その瞳には、救われた安堵ではなく、底知れない『恐怖と絶望』が浮かんでいた。


「お、お願いです……これ以上、兵隊さんを怒らせないで……! 私が……私が殴られて我慢すれば、弟に薬がもらえるんです……! 余計なことをされたら、弟が殺されちゃう……っ!!」


泥水をすすり、血を流しながら、少女は泣き叫んで俺たちを拒絶した。


「リリィ……ちゃん……?」


駆け寄ったカリンが、その痛ましい姿に息を呑む。

私兵の一人は、リリィのその言葉を聞いて勝ち誇ったように下卑た笑みを浮かべた。


「へっ……そうだ、分かってんじゃねえか。余所者の小娘ども、そいつの弟がどうなってもいいなら、俺たちをここで斬り捨てるんだな!」


「てめえ……っ」


俺の拳が、怒りでギリリと音を立てて軋んだ。

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