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オーバーライド!〜通りすがりの美少女(中身おっさん)、たまたま拾った最新兵器で無双する〜  作者: あかぱん
通りすがりの美少女、つかの間の日常を楽しむ

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赤狼族

「――さあ、包帯はこれでよし、と」


王都オルディアン・女性士官用宿舎の一室。

カリンの手慣れた応急処置により、赤狼族の少女・ミアの肩と足の傷に清潔なガーゼと包帯が巻かれた。

机の上には、カリンが淹れてくれた温かいハーブティーから湯気が立ち上っている。


「……ありがとな、人間の姉ちゃん。ウチ、ミアってんだ」


ミアはカップを両手で包み、恐縮したように耳をペタンと伏せながら口を開いた。

セシリアが腕を組み、鋭い視線で問いかける。


「さて、ミア。あなたを襲っていた者たちは、帝国の規格刻印が入った違法火器を所持していましたわ。一体なぜ、獣人のあなたが王都の裏路地で彼らに追われていたのです?」


「……ウチの故郷は、帝国との国境近くにある赤狼族の集落だったんだ」


ミアは悔しそうに八重歯を噛み締めた。


「数ヶ月前、帝国の機甲部隊に集落を焼き払われた。生き残ったウチらは散り散りになって……ウチはなんとかこの王都まで逃げてきて、日雇いの護衛や裏通りの荷運びで食いつないでた。だけど、さっきの奴ら――帝国の横流し品を扱う密売組織に『珍しい赤狼の血統だから高く売れる』って目をつけられて……」


「なるほどね……帝国の侵略による難民を狙う人攫いか。胸糞悪い連中だぜ」


俺が眉をひそめて呟くと、ミアは驚いたように琥珀色の瞳を丸くした。


「レオナ様たちは……その、軍人さん……なんだよな? なんでそんなボロボロの装備で王都に?」


「レオナちゃんは軍人じゃないわ。……私の恩人であり、大切な仲間よ」


カリンが穏やかに微笑みながら、これまでの経緯をミアに説明した。


――レオナの故郷の村が帝国の機甲部隊に襲撃され、最愛の母親が連れ去られたこと。

――カリンが前線で立ち往生していたところをレオナが救い、本来なら外骨格バッテリーがなければ動かないはずの試作兵装『アイギス』を生身で起動させて敵機甲を叩き潰したこと。

――そして、母を奪還するための軍用許可と手掛かりを得るため、セシリアの護送のもと王都へやってきたこと。


「な、生身で機甲を……!? あのデカい鉄の怪物を、レオナ様が一人で!?」


ミアは信じられないといった様子で俺の華奢な腕を見つめ、それから尊敬と憧れに満ちた目で目を輝かせた。


「す、すげぇ……! ウチらの集落を蹂躙したあの機甲を、生身でぶっ壊すなんて……! やっぱりレオナ様は、ウチの命の恩人だけじゃなくて、本物の英雄っす!」


「よせって、大袈裟な。俺はただ、無我夢中で戦ってただけさ」


照れ隠しにポリポリと頬を掻く俺。だが、セシリアが冷徹な声で釘を刺した。


「浮かれるのはそこまでですわ。明日の朝、レオナを待っているのは魔導技術局の『査問会』ですのよ」


「……査問会、か」


カリンが表情を引き締め、眼鏡のブリッジを押し上げた。


「王立魔導技術局の石頭の研究者たちは、『帝国製の高圧圧縮技術を模倣し、王国の技術を詰め込んだ最新鋭機アイギスを生身の小娘が動かせるはずがない』『何かの不正か、あるいは帝国のスパイではないか』と疑っているわ。明日の査問会でレオナちゃんが正真正銘の『アイギスの起動者』であり、アイギスを制御できると証明できなければ……アイギスは軍に没収され、機密を知ったレオナちゃんも拘束される可能性があるの」


「なっ……! そんなの理不尽すぎるっす! レオナ様は助けてくれたのに!」


ミアが尻尾を逆立てて怒りを露わにする。

だが、セシリアは冷静に扇子を開いた。


「彼らは特に理論の外の存在を忌み嫌っていますわ。……ですが、わたくしが近衛の看板を背負って同行している以上、不当な言掛かりでレオナを罪人扱いさせるつもりはありません。明日は技術局の目の前で、ぐうの音も出ないほどの実力を見せつけてやればよろしいのですわ」


「セシリアさん……」


ツンとした物言いだが、セシリアなりに俺の味方をしてくれようとしているのが伝わってくる。

俺は拳を軽く握り、ニヤリと笑ってみせた。


「へっ、上等だ。理屈ばっかりで現場を知らねえ連中なんざ、目の前でアイギスぶん回して黙らせてやるさ」


「ふふっ、頼もしいわね。――でも、そのためにはまず、今日の疲れを綺麗サッパリ落とすのが先決よ!」


重苦しい空気を吹き飛ばすように、カリンがパンッと手を叩いた。


「怪我の手当ても終わったし、ミアちゃんも汗と泥で大変だったでしょう? 宿舎の地下にある広〜い魔導温水大浴場に行って、みんなでお風呂に入りましょ!」


「えっ」


俺の喉から、間の抜けた声が漏れた。

……みんなで? 大浴場?

つまり――カリンと、セシリアと、ミアと、俺が、一緒に入るということか……!?


「ちょ、ちょっと待てカリンさん! 俺は部屋のシャワーで十分っていうか、一人でササッと――」


「何言ってるのレオナちゃん。明日の大一番の前に、しっかり湯船に浸かって筋肉をほぐしておかないとダメよ!」


「問答無用ですわ、レオナ。あなた、先ほど路地裏で暴れて汗をかいたでしょう。さあ、バスタオルを持ちなさい」


「ウチ、レオナ様のお背中流しますッ!」


「おい待て! 話を聞けぇぇぇぇぇッ!!」

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