大城壁の王都
ゲオルグ峡谷を抜けると、視界が一気に開けた。
夕暮れの茜色に染まる広大な平原の向こう――そこに、圧倒的な威容を誇る巨大構造物が鎮座していた。
「……うわぁ、デッカいねぇ……」
思わずトラックの助手席の窓から身を乗り出して呟く。
何重にも張り巡らされた白亜の三重城壁。その内側には中世と近未来の魔導テクノロジーが融合したような美しい街並みが広がり、中心には天を突くようにそびえ立つ幾つもの巨大な魔導尖塔群。
「あれがユーベル王国の心臓部――王都オルディアンよ」
ハンドルを握るカリンが、どこか誇らしげに、そして少し緊張した面持ちで微笑んだ。
「王立魔導学院も、国中の最新兵器を開発している魔導技術局も、すべてあの尖塔の中にあるわ」
「へえ……あの中に、アイギスを作った学者先生たちや、母さんを助けるための情報があるわけか」
キャリアーの屋根の上から、コックピットを開けたセシリア隊長がこちらを見下ろして声をかけてきた。
「レオナ、カリン少尉。これより我が『白銀の翼』が先導して王都中央軍本部へ直行いたしますわ。……門をくぐれば、もう後戻りはできませんことよ?」
「望むところ!よろしくー!」
俺が手をひらひらと振ると、セシリア隊長は「ふん」と気取ってハッチを閉じた。
ゴゴゴゴ……と地響きを立てて開く巨大な城門。
帝国軍の伏兵を撃破し、極秘兵器を持ち帰った白銀騎士団の凱旋に、沿道の兵士や市民たちから歓声が沸き起こる。
その熱気の中を抜け、俺たちを乗せたキャリアーは、巨大な尖塔群の真下――『王立魔導工廠・技術査問所』の前庭へと滑り込んだ。
「さあ……着いたわよ、レオナちゃん」
トラックを降りると、そこには豪奢な軍服や、見るからに気難しそうなローブを纏った学者たちが、物々しい護衛を引き連れて待ち構えていた。
その視線は、トラックの荷台に積まれた『アイギス』と、そして俺へと一斉に突き刺さる。
「……あれが、例の起動者か?」
「ただのド田舎の小娘ではないか。外骨格もなしにアイギスを扱ったなど、何かの手違いか誇大報告だろう」
「まあいい、技術局の適性検査と査問にかければ、メッキなど一瞬で剥がれる……」
ひそひそと交わされる、冷笑混じりの値踏みするような声。
カリンが不安そうに俺の肩に手を置いたが、俺は小さく息を吐いて笑った。
(ふん……やっぱりどこに行っても、頭でっかちの連中は現場を見ようとしないんだな)
前世で理不尽にリストラされ、すべてを奪われたあの日から。
異世界で拾われ、温かい家族を知り、命懸けでここまできた。
机の上の理論しか知らない連中に、俺の値踏みなんかさせてたまるかよ。
こいつらも、王国も何もかも利用して、必ず助けに行くからな。
……母さん。
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます!
これにて第1章完結となります。
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次回からは第2章(王都での日常・査問会編)がスタートします。引き続きお楽しみください!




