表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺だけ使える妖怪図鑑〜復讐の炎は燃え続ける〜  作者: 不知火 数多


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/6

〜北海道編〜

アルファポリスでもこの作品は投稿をしています。

俺は、家族の復讐と、妹の千夏を取り戻すために、北海道にやってきた。

 北海道にやってきて真っ先にすることを祖父に尋ねると、まずは、妖怪図鑑の使い方、そして、妖刀村正の扱いに慣れることだった。

 妖力というのは、普通の人には見えず、妖力を自由自在に操れるようになると、遠くからものを持ち上げられたりできるそうだ。マジシャンで成功しているひとの中には陰陽師の末裔というのがたまに紛れたりするという小ネタを教えてもらった。

 祖父は、妖怪図鑑を持ち、説明しだした。

「この妖怪図鑑は、妖怪を閉じ込められることのできる呪具の一つ。これを扱うためには、魂の試練というのをしてもらう必要がある。魂の試練とは、己と向き合い、そして、過去の因縁やわだかまりから自身を解き放つこと。それができなければ、妖怪を捕まえることができず。これは、単なる紙切れの束にすぎなくなってしまう。今から呪文を唱える。準備しておけ」

 そう言いながら、漢字かなにかわからないが、文字が大量に書いてある紙を取り出し、ゴニョゴニョと唱え始めた。

 しばらくすると、紙が光り、そして、俺は、黒い空間へと飛ばされた。

 今までの人生の経過がパノラマのようにパラパラと映し出される。生まれたての俺を抱きかかえている両親。祖母と話している光景。卒園式、入学式、卒業式、誕生日。そして、あの惨劇の日。妖怪などいないと頑なに否定していたはずなのに、父と母は、首を切られ、俺も殺されかけ、妹の千夏は、連れ去られた。

 声が聞こえてくる。昔の自分の声。

――妖怪などいるわけがない――

――全部まやかしだ――

俺の過去が纏わりつく。

 死んだ首のない両親が、這って近づいてくる。そして、俺を奈落の底へと引きずり込もうとする。

 違う。違う。俺は、俺は、俺は――。


 頭を抱えて現実を直視しないようにした。

 

 優しい聞き憶えのある声が聞こえた。死んだ祖母の声だ。

 俺は、まだ祖母が元気だったとき、祖母の膝で泣いていた。学校で、家族のことを詰られてとてもくやしかったんだ。

「大丈夫、大丈夫」と頭を祖母は優しく撫でる。

「妖怪はいるけど、いまは信じなくてもいいのよ。多分直に会えると思うから」

 祖母は予見していた。こうなることがわかっていたのではないか。万が一のときに、動けない自分のことを。

 そして、祖母はさらに耳元で言った。

 俺は、その一言を聞き、すべてが吹っ切れた。亡霊が、因縁が、過去が、すべて泡のように溶けていった。

 俺は、黒い空間から脱出することができた。

 祖父が「成功したな」と妖怪図鑑を確認した。背表紙が、色づいていた。前見ていたときは、なんの色もついていなかったのに。

「さあ、行くか」

 祖父が先陣をきる。祖父からは影が伸びていなかった。祖父が頼もしく思って幻覚を見たのだろう。

 俺は、必ず、千夏を連れ戻し、必ずあの怪物を殺す。その気合いを忘れないように心がけた。

 祖父は、手始めにコロポックルを捕まえようと提案した。なんでも妖怪図鑑の扱いに慣れる必要があるそうだ。

 祖父が一度止まった。

「妖怪図鑑には、妖怪を退治しても捕まえることができるが、悪い妖怪ばかりではない。条件が書いてあることがある。念じれば、そのページに止まる」

 頭の中で、念じると、勝手にパラパラとページがめくれ始めた。

 前見たときは、何も書いてなかったのに、そこには、獲得条件というのがあった。

 ――獲得条件――

コロポックルの信頼を勝ち取れ。


 信頼? コロポックルというのはコミュニケーションが取れるのか? よくわからなかった。

 少し歩くと、祖父があたりを見回した。

「このあたりのはずなんだが」

 なぜか困惑している。

 祖父は、しばらくあたりを散策していたが、なかなか見つけられないようである。

 やっと祖父は見つけたようだが、浮かない顔をしている。

「前来たときは、フキ畑が広がっていたはずなんだが、まばらになっておる。きっと地球温暖化のせいじゃな。これじゃあコロポックルは住めん。コロポックルは諦めようかのう」

 一つ戦略を思いついた。戦略と呼べるような大層なものではないが。

「じいちゃん、俺は、コロポックルを獲得できそうだよ」

 祖父は、よくわかっていない顔をする。今まで勉強してきた成果がここで活きるとは思っていなかった。

 俺は、大学に送っていた小論文に、自分の行っていた研究を書いていた。その一つに、植物を短期間で増殖させる方法というのもあった。身近なもので、できるので、面接官からの印象は良かったと感じた。

 数日かかるが、それぐらいは祖父は多めに見てくれるだろう。


 三日後、再び同じ場所に来た。すると、見事なフキ畑ができていた。俺も正直ここまで効果があるとは思っていなかった。祖父もとても驚きを隠せないようだ。

 急に図鑑が光った。ページがパラパラとめくれ、コロポックルの絵が浮き上がる。

「おお、成功じゃ、試しに召喚してみなさい。心の中で念じるだけで構わん」

 念じると、可愛らしい小人が出てきた。妖怪みんなこんなふうに愛くるしければいいのに。そう思わずにはいられなかった。

 

 次は、本番のようで、祖父の顔は少し強張っていた。次は、どんな妖怪なのだろう? コロポックルのようにはいかないのだろうか

 祖父についていくと、海のようだった。祖父が鈴を持っている。

「これはなぁ、妖怪を呼び寄せる鈴じゃよ。このあたりは、良くない伝承があるんじゃ。注意しておくれ」

「そういえば、じいちゃん、妖刀村正はどうなったの?」

 妖怪図鑑と共に渡されたが、やっぱり預かっておくと、そのあと、どこにいったのかわからない。今も持っている気配がない。

「今の時代に、刀を持ったまま自由に行き来できるわけ無いじゃろう。妖怪図鑑に念じれば、出てくる」

 試しにやってみると、本当に出た。

「妖怪図鑑は、魂の試練を通じてお前の魂と繋がっておる。戦うときは、念じれば、しまうこともできる」

 念じると、妖怪図鑑は、消え、また、再び念じると現れた。繰り返しやっていると祖父に叱られた。

「遊んでないで、しっかり心の準備しておれ。次は、コロポックルのようにはいかぬぞ」

 そして、祖父は鈴を鳴らした。俺は、妖刀村正を構えた。

 しばらくすると、波が荒れ始めた。何かが来ると、思った瞬間、海の中から触手が現れた、海に引きずり込もうとしてくる。

 それを辛うじて回避し、それが巨大な蛸のような見た目をしていることがわかった。

「気をつけとれ。この妖怪は、アッコロカムイじゃ。昔は、蜘蛛の妖怪じゃったが、今は、姿を変えておる」

 何本も触手を繰り出してくる。俺は、避けるので精一杯で、攻撃する術がなかった。というか、剣の振り方など、なにも教わっていない。なかば、苛立ち、少し祖父に視線を移しているうちに触手があたり、近くにあった岩に思い切り叩きつけられた。


 意識が遠のく。祖父が何かを言っている。

 その瞬間、誰かの記憶が流れ込んだ。誰だかわからないが、同じように刀を振り回している。流れた記憶の男は、正確に急所をついている。

 この男と同じようにすれば、万事解決なのではと目を開けた瞬間、触手が迫っていた。横に転がり避けて、俺は、岩に突き刺さった触手を登り、蛸の目に向かって思い切り剣を振りかぶった。

 アッコロカムイは悲鳴をあげる。まるで流れ込んだ記憶の男が憑依したかのように、俺は、何度も何度も剣を振りかぶった。

「ハハッ、アハハッ」

 笑みがこぼれ、どれだけ血が飛び散ろうが、構わず斬り続けた。


 我に返ったときにはあたりは触手がたくさん転がっていた。妖刀村正は、持つと、自我を忘れ、なにかを斬りたい衝動を抑えられないと聞いたことがある。だから、剣の魔性に魅入られてしまったのかもしれない。

 図鑑が俺から出て、アッコロカムイのページで止まった。気づいたら、アッコロカムイの残骸はなくなっていた。

「よくやったな」と祖父の声が聞こえたので返事をしながら、後ろを振り向くと、そこには祖父の姿はなく、黒い犬が傘を持って立っていた。

 あれ、じいちゃんは? と不思議に思っていると、体が自然と崖に向かって歩き始めた。なぜか、体がいうことを聞かない。

 体が崖の前で止まった。

 黒い犬が「飛べ」と言った瞬間、俺の体は投げ出されていた。体の自由がきかなかった。あと少しで地面についてしまうというとき、意識を失った。

 意識の片隅に、黒い犬の叫び声のようなものが聞こえた。


 起きたとき、俺は、一人、海岸に寝そべっていた。図鑑を念じて出すと、黒縄というさっきの犬の妖怪が登録されていた。しかし、どうして俺は助かったのだろう。

 それにじいちゃんは、どこに行ったのだろう。

 鈴が落ちていた。それを振ってみると、黒い鳥がこちらに目掛けてやってきた。妖刀村正を出し、剣を振るとまるで体に吸い付くように剣が動いた。

 鳥が真っ二つになり、図鑑が、光った。バイカイカムイという妖怪のようだ。

 祖父を見つけなければ……。

 しかし、祖父がいたのに、なぜこちらにしかアッコロカムイは攻撃してこなかったのだろう。祖父の荒れ果てた家を思い出した。そして、祖父が現れるタイミングがあまりにも良すぎた。祖父からは影が伸びていなかった。

 ――もしかして、祖父はもう生きてなかったのではないか?

 そして、倒してないはずの黒縄が登録されていたことを考えると、考えられるのは、祖父が、なにか、手助けをしてくれたおかげで、助かることができた。

 ということは、もう会えないのだろうか。

 ありがとう、もう一人でも大丈夫だよ。とっくに亡くなっていたはずの祖父がいるであろう天国に語りかけた。

 図鑑が光った。祖父の名前が登録されている。

 涙が溢れた。図鑑をしとしとと濡らす。


――獲得条件――

独り立ちをすることと書いてあった。


 俺は、涙を拭い、次の地へ赴いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ