どこにでもいる普通の高校生
また感想をいただきました。ありがたい。
あとなんかまた“現すん”がこそっとランクインしていたようで……こちらもありがたいけどなぜ今……?
〈side:Taira〉
俺の名前は平公助。どこにでもいる普通の高校生……
……なんてな。
はっきり言えば、俺ほど特異な男子高校生もそういないんじゃないかと思ってる。
いやたしかに、学業の成績や運動なんかはそこそこ止まりだ。
もっとも、それもあえて手を抜いてるからではあるんだが。
その気になれば上位にだって食いこめる。ただ強いて頑張る理由がないだけで。
そんなことより趣味に時間をまわしたいってのもあるが。なにせ歴としたオタクなもので。おかげで登校は始業ギリギリ、されど下校はいち早くという生活態度だが……
まあ、俺のことよりも、だ。
俺の特異性は俺自身よりむしろ、その周囲にこそあるといってもいい。
俺には四人の幼馴染がいる。
ただの幼馴染じゃない。美少女幼馴染が、だ。
黒髪ショートカット、いいんちょ気質のナツ――高根沢夏。
ミディアムヘアをお気にのピンで留めた、正統派美少女のアカリ――桃枝あかり。
ゆるふわロング、なにより脅威のGが目を引くミノリ――日永実乃里。
そしてオタク仲間にしてロリボディクォータのチユキ――小井千雪。
いずれ劣らぬすこぶるつきの美少女たちと、物心つくかどうかというころからの縁がある。
これを特異と呼ばずして、なんと呼ぶ。
正直めちゃくちゃ恵まれてる自覚はある。前世でどれだけ徳を積んだのかという話だ。
「――いやほんと羨ましいよ平氏は」
「だよな~! もう今すぐオレと変わってくんね?」
「フッ、残念。来世に期待だな」
さて、そんな俺も四六時中美少女幼馴染と一緒にいるわけでもない。
男友達とのつき合いも当然ある。現在昼休み、まさにその友達たちと飯食いながらだべっているとこ。
校内中庭の一角、いつものベンチを三人で占拠しながら。
「ま、まあ仮に俺氏が平氏のポジについたとしても、あの美少女集団と会話できるとも思えんのですが。精々キョドッてキモがられるのが関の山……あ、あれ、なにやら目から汗が」
ダチその一。これ見よがしなオタク男子、ゲンさんが眼鏡を持ち上げ目元を拭っている。
しかし、少々卑屈に過ぎるぞゲンさん。話せば結構いいやつなんだけどな。
「そうかー? オレなら毎日ウハウハで過ごす自信あっけどなー。んでゆくゆくは、あのたわわに実ったたわわをたわわに……グフフ」
ダチその二。両手を卑猥にワキワキさせているのがフジワラ。
チャラめの見た目どおりわりと剣呑な連中とつき合いもあるようだが、不思議と馬は合うやつ。
「たわわたわわて。それじゃチユキが仲間外れだろ」
「いやいやっ、もちろん小井ちゃんもストライクゾーン圏内よ? あの汚れを知らないなだらかボディ、心ゆくまで撫でまわせたら……くぅ~~~っ!」
「たしかに、いいよね小井氏。合法ロリ、そのうえオタクに理解あるオタク……!」
「まだギリ合法じゃ……いや合法か?」
会えばいつも、こんな馬鹿話をしている俺たち。
なんだかんだ落ち着くよなあ、やっぱ。贅沢な話かもしれないが、まわりがいつも女ばっかっていうのも正直疲れるとこあるし。少なくとも、こんなあけすけに猥談なんかはできない。あいつらウブだしなあ……そっち方面でイジり過ぎると最悪キレかねないから面倒だ。
「――でもよぉ!?」
「うわビビッた。なに急に」
「実際のトコどうなん? いやもうホントはじつはあったりするんじゃね? たわわをたわわしたことがよォ……!」
「顔を寄せるな暑苦しい」
ずずいと詰め寄るフジワラを、しっしと追い払う。
まあたわわしたことならあるんだが。いやいや事故、あくまで事故だから(建前)
ただそういうお茶目なスキンシップはともかく、具体的にあいつらとどう、っていうのは残念ながらまだないのが事実か。それでもこのフジワラ同様、校内の結構な人数が俺とあいつらのうちの誰かがデキてると認識している。それも事実。
とはいえ、だ。
「いや実際、いい加減俺もそろそろ心決めなきゃなー、とは思ってんだよ」
「ほほう」
「え、なに? 平ちゃんいよいよコクるの? コクっちゃうのっ?」
「だから鬱陶しいっての。あー、まあそうだよ。そうなんだが……」
おお、と声を上げる二人を余所に、我知らず空を仰ぐ俺。
もともと、高校に上がったら告白するつもりではいた。
青春の絶頂といったら、まさに今だろう。
その時期を彼女持ちとして過ごせるなら、それは人生の勝者と言っても過言ではない。
だが、なのだ。
いったい誰を選ぶのか。それが最も悩ましい問題。
一番無難な選択肢は、ナツだろう。
面倒かけてる自覚はあるが、翻せばそれは誰よりも濃いつき合いがあるということ。
アカリもまた正規ルートといっていい。
なにかと引っ込みがちなあいつは、俺が引っぱってやらないとという気にさせる。
ミノリの引力も抗いがたい。
なにせ説明不要のデカさだ。あれに飛び込みたくない男がいようものか。
もちろんチユキも捨てがたい。
なんたって同好の士だしな。あいつとのオタ活の日々は、さぞ楽しかろう。
これまで積み重ねてきた時間もある。四人とも、俺を憎からず思っているのは間違いない。
だからこそ、余計に決めかねる。
誰かを選ぶということは、他の誰かを選ばないということ。
俺の決断で、確実に三人は傷つく。
それがなぁ、やっぱちょっとなぁ……
(んで結局、最初の一年はずるずる先延ばしにしちまったけど……)
だがもう高校生活も二年のなかば。
来年は受験もあるし、青春を謳歌するなら今がもう、いわば瀬戸際。
ああー! でもなあー!
いずれ劣らぬ美少女なんだよ、本当に。
ここから誰か一人選べなんて……もし神がいるなら、そいつはよほど残酷なヤツに違いない。
「……いっそ全員とつきあえたらなあ」
「えっ!? マジ? 平ちゃんハーレム志望?!」
「俺氏の友人、神だった件」
「いやいや冗談。現実でハーレムとか出来るわけねって」
驚愕の友人らにひらひらと手を振る。
実際本心から出た本音だったけど、さすがに取り繕わないわけにもいかない。
しかしなあ、ハーレムか……
ワンチャンどうにかなんねーかな。
――いやいや無理だろ常識的に考えて。エ●ゲやラノベじゃあるまいし。
「だよなぁ。そりゃもちろん男の夢だけどよぉ」
「夢は夢だからこそ美しい……つまり二次元こそ至高、Q.E.D.」
頷く友人たちを余所に、また空を仰ぐ。
いや贅沢な悩みだよ? そこは重々承知している。
だが真剣に考えてるんだよ、俺なりに。
どうせ過ごすなら最高の青春を。
そのための最高の選択肢――最適解は、いったい誰なのか……
ああ、まーじで決めかねる。
悩みは大きい。
……そういや、ちょっと前のナツの言動には手を焼かされたな。あんななんでもない場でいきなり決めろとか……俺がこれだけ悩んでるってのに、すこしはそこを汲んでほしいもんだ。
(てか、女子こそシチュエーションとか大事にするもんじゃねーのか?)
「あっ!」
悩む俺を余所に、急に脇から上がる声。
「でもよぉ、もし平ちゃんが誰かとつきあうことになったらよ……あとの三人はフリーってコト!? したらオレがカレシ立候補しても、」
「あ?」
おっと。
フジワラが続けた戯言に、つい本気の低い声が出てしまう。
「お、オイオイ平ちゃん出来心だって……! そこまで目くじら立てなくっても」
「……ん、悪い。俺も大人げなかった」
「が、ガクガクブルブル……!」
「いやゲンさん大袈裟。てか、あー、あれだ。仮に告っても玉砕するだけだと思うぞフジワラ。たぶん四人とも好みにカスりもしてねーもん、お前」
「うぉーい、泣くぞ!? 夢くらい見させてくれてもよくねッ?!」
冗談めかして場を和ませておく。危ない危ない。こんなの馬鹿話の一環だろ? ムキになって本性現す場面でもねーだろ、平公助。
けど、まあやっぱ、幼馴染のこととなると、つい、な。
わかっちゃあいるんだが、こればかりはどうにも。
(幼馴染、か……)
そういえば最近、ちょっと雰囲気が変わった気がしないでもない。
ここんとこで最も顕著なのは、数日前の教室でのこと。
いつものように偶然を装ってスキンシップと洒落込もうとしたら、
その手を、ミノリに払われた。
あの時はいきなりで呆然として、いつもみたく冗談めかすのさえ忘れてしまったが……
思えば、なんでいまさらあんな反応を?
(――いや待て、まさか……そういうことか?)
ひとつの可能性。
つまるところミノリは、
ようやく俺を、本気で異性として意識し始めた――?
なるほどな、得心いった。
ああいうおいたなら今までも散々してきたけど、いつもやんわり流されてたからな。ミノリにとっても、そしておそらく他の三人にとっても、せいぜい大型犬にじゃれつかれてるくらいの意識しかなかったんだろう。そのへん俺も薄々気づいてたし、だからこそ遠慮なくやらせてもらってたとこもあるが……
きっかけはわからない。
けどおそらく“なにか”があった。
……いや、案外ナツのフライングあたりが効いたのかもな。先を越された、的な?
最近の雰囲気からも、意識が変わったのは全員、とみていいだろう。
(にしても、いやぁ……)
思わず遠い目。安堵からだ。
なにせ異性に興味ねーのかとさえ疑ってたからな。何人もの野郎どもからの告白を蹴ってるのは、俺でなくても周知のこと。サッカー部のエース先輩だのカワイイとかちやほやされてた一年坊だの、そこそこのイケメンも中には交じってただけに、余計に本気でそう思いかけてたとこだった。
ま、とはいえだ。
他のやつになびくなんて心配、端からしちゃあいない。
美少女幼馴染の世界に他の男が介入する余地などない。
だってこれは俺の、“2‐Aのハーレムグループ”の物語なのだから。




