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王女は"ざまぁ"されるほどの罪を犯したのか  作者: myano


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第4話 着任

 都市を出て三日。俺たちは領地の近くまでやって来た。

 領地が近付くにつれ、足取りが重くなるのを感じる。

「はぁ……ならず者が住み着いているなんて聞いてないぞ」

「ものは考えようです。彼らを味方につければ人手はすぐに手に入りますよ!」

 この子、どれだけポジティブなんだ。それともただの世間知らずなのか?

 というか、ならず者たちの中に二人で飛び込んでいっても大丈夫だろうか? 今更不安になってきたぞ。


 領地に向かって歩いていると、目の前に関所のようなものが見えてきた。

「あれは何でしょうか? すごくボロ――風情がある建物ですね」

「……正直にボロボロだと言ったらどうだ?」

 領地に向かうためにはあの建物を通らないといけないのか……。

「止まれ。お前たち、旅の者か?」

 建物の前には二人の男が立っていた。二人とも人相が悪く、剣を身に着けている。

 おじさんが言っていた、ならず者の仲間だろうか。

「俺たちは先日、この周辺の領主になったんだ。ここを通してもらえないだろうか?」

「ああん? この先はオレたちの街だ! 誰が来ても通すわけにはいかないな!」

 男が俺たちを威嚇するように「バン!」と建物を叩く。すると、建物がギシギシと嫌な音を立てて揺れる。……崩れてこないよな?

「アニキ! この男ビビってますぜ! それにこの女、見たことが無いぐらいの美人ですね。街に連れて帰っちゃダメですかね?」

「バカ野郎! オレたちには天使様が居るだろうが! 天使様に比べたらこの女なんて獣と変わらな――いだだだ」

「あ゛? もう一回言ってみろやコラ」

「フィーナさん!? キャラが変わってる!」

 気が付くと、フィーナが男の右腕を背中にひねり上げている。

 彼女の動きは、俺の目では捉えることができないほどのスピードだった。

「ギブギブ! 撤回するからやめてくれぇ!」

 男は痛みで悶え苦しみながらバンバンと関所を叩く。

――ミシミシッ、バキッ

 今までとは比べ物にならないほどの大きな破断音が響き、建物が大きく揺れた。

「マズい! 崩れるぞ!」

 俺たちは慌てて建物のそばから離れる。

「ヒィッ! 助けてくれぇ!」

 背後から男の悲鳴が聞こえる。振り向くと、関所を守っていた男の一人が逃げ遅れていた。

 男は両手で足を掴み、必死にもがいている。

――瓦礫に足を挟まれて動けなくなったのか!

 俺は慌てて男のもとに向かい、彼に覆いかぶさるようにして降ってくる瓦礫から庇う。

「お前、何で?」

「大切な領民だからな。こんな所で失うわけにはいかない」

 俺がそう言うと、男は嗚咽を漏らした。


 しばらくすると、周囲の揺れと関所の崩壊が収まる。

 というより――

「関所、完全に崩れてしまったな」

「頑張って作った関所が……」

 男がうなだれる。

手作りの簡易的な関所だったからこそ、瓦礫が少なくて下敷きにならずに済んだのかもしれない。

「お前ら! 大丈夫か!」

「クライム! 無事ですか!?」

 先に避難していた二人が戻ってくる。

「俺は大丈夫だ。彼を助けるのを手伝ってくれ!」

 俺たちは足を挟まれた男を救出すべく、瓦礫を取り除き始めた。


「くそっ! なかなか足が出てこない」

「もっと人手が欲しいですね」

「お嬢ちゃんは休んでな! ここは男のオレたちが――」

「いいえ! これを壊したのはわたくしです。微力ですがお手伝いさせてください!」

 フィーナが泣きそうな顔で懇願する。相当責任を感じているようだ。

「そうか、感謝する。……あと、獣だなんて言って悪かった。お嬢ちゃんは良い女だよ」

 男もそれを感じ取ったんだろう。フィーナが明るくなればと軽口をたたいてくれたようだ。

「こんな時に口説かないでもらえますか? それにわたくしにはもう、心に決めた人が居ますので」

 驚きで手元が狂いそうになる。だけど、フィーナも元は貴族令嬢だから許嫁が居るのは当たり前だ。きっといつの日か、王都に戻ってその相手と結ばれるんだろう。

 と、その時。遠くから大量の足音が聞こえてきた。



「どうした!? 何があった!?」

「リーダー!」

 集団の先頭にいる男がならず者のリーダーらしい。見たところ、20代(なか)ばくらいだろうか。

彼は俺たちのところまでやって来ると、すぐに状況を把握する。

「お前ら! 手を貸せ!」

 リーダーが仲間たちに指示を出すと、彼らはテキパキと瓦礫を取り除いていった。


 男の足首より上にあった瓦礫を取り除き、慎重に男を救出する。

「折れてるかもしれないから無理に引っ張るなよ!」

「俺たちは瓦礫を持ち上げて隙間を作るぞ!」

 リーダーの指示に従い、仲間たちがゆっくりと男を引っ張っていく。

 やがて、男が瓦礫の中から助け出された。


「よし! もう大丈夫だ! 頭は打ってないか?」

「はい。領主様が守ってくれたので!」

「領主? コイツのことか?」

 リーダーが怪訝な顔で俺を見る。ここで怯むわけにはいかないと一歩前に出た。

「初めまして。この度領主に任命されたクライム・マーシーです。あなたが彼らをまとめているのですか?」

「オレはクロウ・ノワール、ここのリーダーだ」

「きちんとした話はのちほど。まずは彼をあなた方の拠点まで運んで治療しましょう」

「あ、ああ、そうだな。おい! こいつをアジトまで運ぶぞ!」

 クロウが指示を出すと部下たちの威勢の良い声が飛び、男が領地に運ばれていく。

「クライムたちも来てもらえるか?」

「もちろん」

 俺はクロウたちに案内されて彼らの拠点に向かった。



 関所から西に進むと、小さな街があった。

 街の入り口には『ルインハム』と彫られた石が設置されている。これがこの街の名前なのだろう。

 街に住民や旅人の姿はなく、忘れ去られた街という雰囲気を感じた。

 それでも街の外周は石造りの壁で囲まれていて、破損している様子もない。


 俺たちは、ルインハムで1番立派な建物に案内された。

「ここがオレたちのアジトだ。入ってくれ」

 建物の玄関でケガをした男たちと別れ、俺たちは奥に向かっていく。

 やがて、『応接室』と書かれた部屋にやってきた。

「お兄様! 大丈夫ですか!?」

 俺たちが中に入った途端、奥から白っぽい服装の女の子が走って来る。

「シエナ、怪我人が一人いる。治療を頼む」

「わかりました!」

 シエナと呼ばれた女の子が勢いよく飛び出していった。

 俺とフィーナ、クロウの3人が応接室に残される。

「オレたちに出来ることは済んだし、今のうちに話をするか」

 俺たちは向かい合うようにして席に着いた。



「まずは、仲間の命を助けてくれてありがとう。この通りだ」

 そう言ってクロウは深々と頭を下げる。やはり彼は仲間思いだ。

「クロウさん、頭を上げてください。さっきも言った通り、俺はここの領主で彼は領民です。領主が領民を守るのは当たり前のことです」

 クロウは一瞬ポカンとするが、すぐに満足げな表情に変わる。

「そうだよな。それこそが仕えがいのある貴族ってもんだ。クライム――いや、クライム様。オレたちはあなた様にお仕えいたします!」

 クロウは立ち上がり、俺の前に来て臣下の礼をとる。

 俺は彼の手を取り、ともに領地を発展させていくことを誓った。

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