第37話 証拠隠滅罪
『お約束どおりこれ。けれどもう一度約束して頂戴。夢藤とのことは何もなかったと』
『わかってます』
『あなたにとってもその方がいいのよ。夢藤とそんなことがあったなんて知られたら無傷ですまないわ』
『だから、ここに来たんです。何もなかったことにしたかったから私。絶対に口を割りませんから、安心してください』
『そう。よかった。じゃあ、私はこれで』
『ああ、喜多村さん。雅樹さんの一ファンとしてお訊ねします。彼を応援したいから。雅樹さんはまたいつかカウボーイに戻って活動してくれるのでしょうか?』
『どうかしら。でも彼は政治家になってもアイドルは捨てないと思うわ。常に注目を浴びていたい、それが彼の一番の望みだから』
『嬉しい。それならずっと彼を応援できます。で、これなんですけど、やっぱり私、受け取れません』
『なんですって』
『お金なんていりません。雅樹さんとの思い出の方が大事だから。それで十分です』
『ちょっと待って。話が違うでしょ!』
『喋りませんから、ご安心を』
『そうじゃないでしょ! そこまで聞いておいて逃げる気?』
『逃げるのはどちらかしら』
『ま、待ちなさい!』
録音はそこで途切れた。ボイスレコーダーを引き下げて和田が取り出したのはまた別の写真。喜多村メイコが朝比奈莉夢の前に厚みのある封筒を置いているシーン。封筒からは厚さ2cmほどの札束がはみ出していた。
「これですよね。喜多村さん、あなたが朝比奈さんに渡そうとしたのは。額にしておよそ200万円ってとこですかな。立派な証拠隠滅罪、脅迫罪及び贈賄罪未遂ですよ」
喜多村メイコ、仲道節雄、共に口をつぐんでしまった。
水無月はたち
1964年大阪下町生まれ。同志社大学経済学部卒。現在、大阪の某大学勤務。
優しい奥様と独立独歩した我が子たちだけが自慢。
-筆歴-
2023年4月 『戦力外からのリアル三刀流』(つむぎ書房)発刊
2024年3月 『空飛ぶクルマのその先へ 〜沈む自動車業界盟主と捨てられた町工場の対決〜』(つむぎ書房)発刊
2024年7月 『ガチの親子ゲンカやさかい』(つむぎ書房)発刊
2025年7月 『いまじゃ 殺れ 信長を』(つむぎ書房)発刊
2026年3月16日 『神より選ばれし偶像たち』(つむぎ書房)発刊
※当作品は100%作者の手で作り上げた不完全なヒューマンドラマです。AIの力は全く借りておりません。つづきはこちら↓




