第32話 一皮剥けばただの男
新宿。アジアンニュースJPが入る雑居ビルの一室。エンタメ部の曽我元親のデスクの電話が鳴る。
曽我は国際政治部のティア・ライスレンと駄弁っている。腕だけ伸ばし受話器を持ち上げる。
「おお、莉夢」
電話の相手はK放送局元アナウンサー朝比奈莉夢。曽我の遠縁にあたる。
「お手柄だ。ありがとよ」
「最後は向こうから逃げたわ」
曽我は戯けて言う。
「そりゃあ手間が省けて好都合だったじゃないか」
莉夢は落胆したように囁く。
「アイドルたって、一皮剥けばただの男ね」
曽我は大笑いした。
「だからおまえに頼んだんだ。本性引っ張り出すのが誰よりうまい」
「誤解しないでね、私、淫売なんて興味ないんだから。ただの一ファンなのよ」
「わかってるよ。けど最高だったろ、憧れのアイドルと枕を並べるなんて」
「それがショックなのよ。違いすぎて」
「あのままなわけねえだろアイドルが。虚栄心が強いほど欲も強い。特に性欲はな」
「一時マンションから出してもらえなかったのよ」
「おかげでスクープ取れた」
曽我は品の悪い微笑を湛えた。莉夢の溜息が漏れる。
「でも、やっぱり執着あるみたいね」
「おまえにか? アイドルにか? 政治家にか?」
「最後のに決まってるでしょ」
「浅はかな。これだから政治はいつまでたってもよくならん、なあライスレン」
水無月はたち
1964年大阪下町生まれ。同志社大学経済学部卒。現在、大阪の某大学勤務。
優しい奥様と独立独歩した我が子たちだけが自慢。
-筆歴-
2023年4月 『戦力外からのリアル三刀流』(つむぎ書房)発刊
2024年3月 『空飛ぶクルマのその先へ 〜沈む自動車業界盟主と捨てられた町工場の対決〜』(つむぎ書房)発刊
2024年7月 『ガチの親子ゲンカやさかい』(つむぎ書房)発刊
2025年7月 『いまじゃ 殺れ 信長を』(つむぎ書房)発刊
2026年3月16日 『神より選ばれし偶像たち』(つむぎ書房)発刊
※当作品は100%作者の手で作り上げた不完全なヒューマンドラマです。AIの力は全く借りておりません。つづきはこちら↓




