第31話 罠
参議院議員の任期は6年で3年ごとに半数が改選される。自由民新党とカウボーイ事務所の間で取り交わされた暗黙の約束では、今年の国政選挙で夢藤雅樹と飛柳拓海の二人を自由民新党から推薦することになっていた。人気アイドルの夢藤雅樹と飛柳拓海が出馬すれば、選挙区でも単独で十分に勝てる。さらには知名度抜群の二人を推すことで比例代表への票集めも期待できる。自由民新党の目論見はこうであった。これにカウボーイ事務所も便乗したのは、夢藤と飛柳が国会議員に当選すれば緒沢だけでなくより政界との繋がりが太くなる。カウボーイ事務所の注目度、地位はさらに盤石になる。つまり、夢藤雅樹と飛柳拓海の国政選挙挑戦は双方にとって旨味のある企てだった。
「このタイミングで出したら共倒れになるって」
「共倒れだと?」
「あの子たちの解散以降、うちも世間の風当たりが厳しくなっていることは事実。向こうが欲しい状態ではないのはたしかね」
「だから待てと? 次の選挙まで? 冗談じゃない! くれと言ってきたのは向こうだぞ」
「解散前までならね。いま彼らを出したら自由民新党とカウボーイの癒着を白日の元にしてしまう。それを懸念しているのよ、緒沢は」
「政治資金問題はまだしも、あいつらの出馬まで嗅ぎつけられるとは・・・しかし、どうやって?」
「正義感の強い方の弔い合戦じゃないかしら」
先日訪ねてきた検察庁の役人の顔をメイコは思い出していた。彼らの行動の向こうに『J×MAP』の犠牲者がある。察してジョニー喜多村が呟く。
「司法か」
「それもあるけど、今度のはメディアよ」
「ハイエナか」
「連中をみくびってはいけないわ。むしろ検察より堂々と罠を仕掛けてくるだけ厄介よ」
「まさか・・・」
「そう、雅樹がまんまと掛かったの。しかも相手は女子アナ」
「ばっか野郎が!」
「枕の上で抱負を語ったみたいね、政治家としての」
水無月はたち
1964年大阪下町生まれ。同志社大学経済学部卒。現在、大阪の某大学勤務。
優しい奥様と独立独歩した我が子たちだけが自慢。
-筆歴-
2023年4月 『戦力外からのリアル三刀流』(つむぎ書房)発刊
2024年3月 『空飛ぶクルマのその先へ 〜沈む自動車業界盟主と捨てられた町工場の対決〜』(つむぎ書房)発刊
2024年7月 『ガチの親子ゲンカやさかい』(つむぎ書房)発刊
2025年7月 『いまじゃ 殺れ 信長を』(つむぎ書房)発刊
2026年3月16日 『神より選ばれし偶像たち』(つむぎ書房)発刊
※当作品は100%作者の手で作り上げた不完全なヒューマンドラマです。AIの力は全く借りておりません。つづきはこちら↓




